話は200年近く進んで、冬眠から覚醒した羅輯や章北海らのその後が描かれる。智子によって制限されたテクノロジーの中で、人類は大規模な宇宙艦隊を編成するまでに。その中で章北海の意外な行動には驚かされた。また水滴による艦隊の殲滅シーンも圧巻。絶望の淵に立たされた人類は最後の面壁者、羅輯の意外な一手で危機を脱する。三体文明との共存を予感するような終わり方だったが、次巻はどんな話になるのか楽しみ。ところで暗黒森林理論というのは初めて知ったが、そうだとすると人類の存在を伝えるゴールデンレコードを搭載して今も宇宙を彷徨っているボイジャーは大丈夫だろうか、という要らぬ心配が頭をよぎる。

2023年6月9日

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読書状況 読み終わった [2023年6月2日]

三体人が攻めてくるって言うんで慌てて準備に取りかかり始めた人類。面壁人計画という、三体人の特性を逆手に取った計画で400年後に備える。しかし何せ人類は智子に監視されている訳で、頭の中で計画を練って悟られないようにしよう。なんてけっこうアナログな作戦。反面、宇宙軍を創設、軌道エレベーターの建設など、科学技術を制限されながらも人類は反抗の意志を見せる。正直なところ少しトーンダウン。今のところ面壁人の有効性が分からない。あと相変わらず中国人名が覚えにくいので、カナ表記にしてほしかった。

2023年6月9日

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読書状況 読み終わった [2023年4月11日]

文字通り「辺境の惑星」である竜座の第三惑星に植民し、数十世代を経て忘れ去られた人類(ファーボーン)たち。世代を重ねるうちにテクノロジーの伝承もほとんど絶え、半ば中世のような暮らしをしている。コミュニティの人口も不妊などで減少し閉塞感が漂うなか、ファーボーンの指導者アガトと原住民族ヒルフの少女ロルリーが出会う。互いに相容れなかった二つの種族が、蛮族の襲撃を機に協力し融和へと向かう。静かだが希望へとつながる良い作品だった。

2023年4月13日

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読書状況 読み終わった [2023年4月12日]

ル・グィンの処女長篇にしてハイニッシュ・ユニバースシリーズの第一作。全世界連盟より派遣され、未開の惑星であるフォーマルハウト第二惑星へ調査官として訪れたロカノン。連盟に敵対する勢力に仲間を殺され取り残されたロカノンが、惑星の住人たちと共に旅する。SFのようなあらすじだが、ファンタジー色が濃く、様々な種族や風虎などの魅力的な生物が登場する。神話のような美しい短篇「セムリの首飾り」から始まるこの物語だが、SFとファンタジーの融合がここまで上手くできるのは彼女のなせる技。続けて辺境の惑星を読み進めていく。

2023年3月16日

読書状況 読み終わった [2023年3月14日]

【再読】中学生くらいの頃夢中で読んだ本作。思い出補正がかかっていたせいか、全体的に描写が薄い(人物の心理描写が乏しい・周囲の描写はほぼない)、展開が急すぎる等、今読むと気になる点がいろいろと・・・。しかしそこはラノベの元祖、戦記物の金字塔。若い世代にはぜひ読んでもらいたい作品。以前kindleのセールで全部買ってしまったので、思い出に浸りながらぼちぼち読んでいこう。

2023年1月10日

読書状況 読み終わった [2023年1月8日]

好きなイラストレーターしらこさん(@Rakoshirako)さんの装画で興味を持った一冊。父親の暴力により一家が離散し、幼くして一人取り残された少女。しかし彼女は湿地と共に一人きりで生きることを選ぶ。ジャンピン・メイベルの黒人夫婦、幼なじみのテイトらわずかな人々に助けられ成長する彼女。やがてある事件の被疑者として裁判を受けることになるが、、、。全体的に読みやすく、ティーン向け?と感じる。大衆受けするドラマの様な展開だが、著者の経歴に基づく美しい自然描写や生物の細かな描写は特筆すべき点。

2022年10月28日

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読書状況 読み終わった [2022年10月27日]

秋の夜の様に、長く静かな作品だった。二段組で669ページ。読んでは止まり、止まっては読み、数ヶ月かけてようやく読み終えることができた。地球より独立して数十年が経過した火星が舞台。地球への留学から帰ってきた少女ロレイン。二つの世界を知ってしまった彼女はその違いに迷い、自分の生きる道を見失ってしまう。彼女の揺れ動く心の動きを追いながら、微妙なバランスの上に成り立っている火星と地球の関係へと展開する。最後の十数ページにある、ロレインの祖父ハンスの独白が特に印象深かった。

2022年10月3日

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読書状況 読み終わった [2022年10月1日]

【再読】いよいよフェザーンが表舞台へ。様々な策謀により、帝国と同盟、フェザーンの均衡が崩れる時がきた。門閥貴族の残党が幼い皇帝ヨーゼフ二世を誘拐し、同盟にて亡命政府を樹立。ラインハルトに同盟を侵攻する大義名分を与えてしまう。またユリアンは駐在弁務官に任命され、ヤンの元を初めて離れフェザーンへ出立。物語が一気に加速しだす。ロイエンタール艦隊とイゼルローン要塞の交戦、裏をかいてのフェザーン回廊からのフェザーンへの進駐。「行こうか、キルヒアイス、おれとお前の宇宙を手にいれるために」しびれる!

2022年9月20日

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読書状況 読み終わった [2022年9月19日]

このモヤッとした終わり方はいかにも。異星生物とのコミュニケーションなんて簡単にとれるもんじゃあないんだよ、と主張するレムさんお得意のファーストコンタクトもの。エデンに不時着した地球人が、スタートレックよろしく未知の惑星を探検してまわる。レムの想像力によって構築された世界観は、描写が具体的なのになぜか脳内で映像に変換できない。だがこれこそがSFとも言える。複体生物にしろ、奇怪な植物や謎の工場にしろ、とにかくすぐには理解できないものだらけだ。それでもその理解不能を楽しむのも良いかもしれない。これで三部作は読破したが「砂漠の惑星」が好みだった。

2022年9月14日

読書状況 読み終わった [2022年9月13日]

大好きな世代宇宙船モノで、本作は私が追い求めていた理想形にかなり近い。①宇宙船が飛び立つまで②宇宙船内での1200年以上に亘っての暮らし③目的の惑星に到着してからの3部構成となっている。科学的描写は弱く、SFだからと身構える必要は全く無く、純粋に物語として楽しめる。読後、今私たちが住むこの地球は、何度目の地球なんだろうと考える。もしかしたら星々の蝶のように遥か昔の人類が、世代宇宙船で探し求めて移住した惑星かもしれない。これは未来の話なのか、それとも現地球の創世記なのか、思考がループしてしまう。

2022年9月8日

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読書状況 読み終わった [2022年9月7日]

アストロファージによる太陽光減少を食い止める方法を発見し、悲しみながらもそれぞれの母星へと帰るべく別れた二人。しかし地球への帰還途中、タウメーバによる危険に気づいたグレースが、居ても立っても居られなくなり、たまらずロッキーの元に駆けつける。もうね、途中からロッキーが愛おしくてたまらなくなる。甲羅のついたクモみないた生物と分かっているのに、どうしてだろう。過去の記憶が蘇る部分では、かっこ悪く抵抗し行きたくないのに行かされたグレースだった事が明かされる。しかし地球と異星の友のために自らの命を投げ出す選択をするグレース男前。ラストもSF者には堪らん。とにかく「みんなも読んでね!質問?」

2022年6月13日

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読書状況 読み終わった [2022年6月13日]

「火星の人」「アルテミス」に続く邦訳3作目。謎の施設で目覚めたグレース。少しずつ記憶を取り戻しながら、自分が全人類の命運を握っていることを思い出す。今度の舞台はタウ・セチ。謎の現象による太陽光減少を食い止めるべく、超国家的プロジェクト遂行のため、送り出された主人公。相変わらずの軽薄な語り口(だが、それがいい)極限状態なのに悲壮感がない。知恵と工夫で前向きに困難を乗り越えていく。読者が読んでいて気持ちいいポイントを抑えている。異星人とのファーストコンタクトも萌える。こういうのを待ってたんだよアンディさん!

2022年5月23日

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読書状況 読み終わった [2022年5月21日]

アンナ・カヴァン初読。場所も時代も分からない。それらしい説明もされていないが、何らかの気候変動で「氷」に覆われつつある世界。それによって各地で紛争が起き、世界中が徐々に荒廃し終末に向かってゆく。一人の少女と、彼女に魅せられ追い続ける男の物語。幻視者と言われる著者だけあって、虚構(ビジョン)と現実が作中でどんどん切り替わり、読む者を不安にさせる。男は執拗に少女を追い続ける。少女は時に拒絶し、時に許容する。その愛憎劇を氷の世界が覆い尽くす。何とも掴み所がない物語だが、この不安定さが本作の魅力なのだろう。

2022年5月14日

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読書状況 読み終わった [2022年5月13日]

以前から読みたかったパステル都市。アトリエサードさんのおかげで読むことができた。(サンリオSF版もどこかにあるが発掘が面倒)正直なところ最初の短編でイメージがつかめずに何度もくじけそうになった。中世的な世界観にロストテクノロジー、錆でできた砂漠。飛行艇や外骨格をまとい戦う小人トゥーム(マトリックスのAPUのイメージ)はるか未来の地球を舞台に、魅力的な小道具は散りばめられているが、全体的に話が暗く気持ちが乗り切らなかった。ただ、価値ある一冊であることは間違いないと思う。

2022年4月15日

読書状況 読み終わった [2022年4月15日]

最初の百人が火星に降り立って数十年。地球から次々に送られてくる移民により各地で軋轢が生まれ、暴動が起きた。ドミノ倒しの様に崩壊していく各都市。軌道エレベーターが破壊されてからの壮大なカタストロフィは一読の価値あり。登場人物にいまいち魅力がないのはマイナスだが、意図的に人物描写に重きを置いていないのかもしれない。とは言え火星物の小説の中では群を抜いてすばらしい作品であることに違いはない。特にエピローグはこれまでの長い道のりが報われる良い結末だった。さて、グリーン・マーズは少し時間を置いて読もうかな。

2022年2月8日

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読書状況 読み終わった [2022年2月8日]

上巻はとても面白かったのに、下巻のソウジャナイ感はなんだろう。ネットワークに取り込まれた辺りから、どんどん話が抽象的になっていき物語のテンポに大ブレーキがかかってしまった。オブザーバー類とのやりとりも何が言いたいのか伝わってこず。そしてサーヤ以外の人類との邂逅もなく、意味が分からない終わり方だった。人類も、オブザーバー類も、銀河も宇宙も、ネットワークも。より強大なものの前では全ては矮小なものに過ぎない。宇宙と生物の細胞がすごく似ている、という話を思い出した。本作がデビュー作との事なので、次回作に期待したい。

2022年2月8日

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読書状況 読み終わった [2022年2月8日]

交通事故で死亡したクリスは、現世に愛する妻アンと子どもたちを残し「常夏の国=天国」へとたどり着いた。いずれ寿命を迎えて天国へやってくるアンを待つはずだったが、夫を失った絶望でアンは自殺してしまう。自殺したアンの魂は地獄へ囚われ、彼女を救うためにクリスは地獄へと赴くが…。天国の描写が色鮮やかで、かえって地獄の陰鬱とした描写を際立たせる。生前アンがしてくれたことを一つずつ上げ、感謝の言葉を伝えるところはなかなかぐっとくる。果たして私もこんなに妻を大切にできているだろうか。ってちょっと反省してしまうほどクリスとアンの絆は強かった。映画の方も観てみたい。

2022年1月29日

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読書状況 読み終わった [2022年1月28日]

長らく絶版で古書価格が高騰していた本作。河出書房さんのお陰でようやく読むことができた。1976年のロスに白人の夫ケヴィンと住む黒人の主人公デイナが、1800年代初頭の過去へタイムスリップし、自分の祖先であるルーファス少年を救うところから始まる。ルーファスが命の危険に晒されるとデイナが過去へ呼ばれ、逆にデイナが危機を感じると現在へと戻る。これを何度か繰り返し、彼女は黒人奴隷制を身を持って体験することとなる。当時の黒人奴隷制と言えば絶対的なものであったろうが、ルーファスはデイナに単なる黒人としてではなく、特別で複雑な感情を抱いていた。最後まで相容れなかったのは残念だが。隠れた黒人差別が再び表面化しつつある現在、読む価値のある一冊。

2021年12月24日

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読書状況 読み終わった [2021年12月23日]

ムアッディブとして皆に認められフレメンの指導者となったポールは、スティルガーや再会したガーニーらととも砂漠の民を率い、ハルコンネンへの復讐、バーディシャー皇帝との対峙を果たす。自分の行動が伝説となる事を自覚しながら、未来の聖戦を避けるために行動するポールだが、自らの選択が正しいのか苦悩する。一応本作はこれで完結。本編の後にデューンの生態学・宗教、ベネ・ゲセリットの考察や用語集があり著者が本気で惑星アラキスの世界を作り上げていた事が窺える。フランク・ハーバートの創造した緻密な世界観を堪能させてもらった。

2021年11月2日

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読書状況 読み終わった [2021年11月2日]

ハルコンネンの襲撃から逃れ、大砂嵐にソプターごと巻き込まれたポールとジェシカ。奇跡的に生き延び、砂漠の民フレメンと出逢う。フレメンの独特な文化に戸惑いつつも、未来視により予知されたヴィジョンから逆算して行動するポール。またフレメンの新たな教母として迎え入れられたジェシカ。中巻ではフレメンに出逢ったことで物語が加速度的に展開していく。ハルコンネン家のフェイド・ラウサも登場し(リンチ版のスティングとはかなりイメージが違う!)この先どうなるのかどんどん惹き込まれていく。映画公開には間に合わなかったが続けて下巻へ。

2021年10月11日

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読書状況 読み終わった [2021年10月9日]

初期短篇集2巻。冒頭3作品は「創竜伝」のプロトタイプとの事。他の作品も含め、これ一冊で様々なジャンルの短篇を楽しむことができる。「ブルースカイ・ドリーム」「銀環計画」が特に好み。どちらも映像化したら面白そうだ。通して2冊の短篇集を読んだことで、田中芳樹ブームが来てしまった。まだ未読の作品がたくさんあるので、少しずつ読んでいこう。

2021年8月31日

読書状況 読み終わった [2021年8月28日]

初クリスティ。砂漠の真ん中のレストハウスで数日間足留めを余儀なくされたおばさんがあれやこれやと思い悩む物語。何かにつけて自分に都合の良い解釈をするジョーンに終始イライラした。最終的に悔い改め、ロドニーに赦しを乞おうと決めたのに、あの態度はいったい…。何もかも分かって受け止めているロドニーが不憫になってくる。またファーストチョイスを誤ったようだ。

2021年8月18日

読書状況 読み終わった [2021年8月14日]

SF好きなら避けては通れぬ砂漠の惑星。ヴィルヌーヴ監督の映画が公開される前にと読み始めた。惑星の覇権を巡るスケールの壮大さ、また宗教的・精神的で重厚な世界観に惹き込まれる。遥か未来の物語だが、PCやAIが禁止・拒絶された世界で、メンタートと呼ばれる演算能力を訓練した者が指導者を補佐する。皇帝の意によるアトレイデス家とハルコンネン家の惑星アラキスを巡る対立の中で、徐々に自分の能力と使命に目覚めていく公爵の息子ポールの成長譚でもある。先にリンチ版の映画を観ていたためか、スムーズに世界観に浸ることができた。

2021年8月12日

読書状況 読み終わった [2021年8月11日]

田中芳樹氏の初期短篇集。よく考えてみると、銀英伝とアルスラーン(当時発刊されていたところまで)、創竜伝を少し読んだだけで、後はまるで読んだことがない。短篇などは本当に初めて読む。40年以上前の作品なので多少の古さはあるが、アシモフやブラッドベリっぽいテイストも感じるとても硬派なSF作品だった。「流星航路」「懸賞金稼ぎ」あたりが好みだったが、どれもハズレなし。

2021年8月10日

読書状況 読み終わった [2021年8月8日]
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