量子力学の哲学――非実在性・非局所性・粒子と波の二重性 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2011年9月16日発売)
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感想 : 38
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科学哲学者(そういう人がいるんですね)の筆者が、量子力学の現象の解釈に関する、諸研究について紹介した本。

序盤で、量子力学の標準解釈という、現在実験で確かめられている現象について、世界中である程度の?妥当性が認められている解釈の話が出てきて、その後、その問題点に対し、どういう議論がなされているか、という流れで話が進む。
標準解釈については、読んだら何となく知っていたことが多かったが、そこに問題点があるということは知らなかったし、また、これだけ多くの議論がなされていることも知らなかったので、面白かった。
特に、量子力学というと、測定するまで粒子の物理量が確定しないものだと固定的に捉えてしまっていたが、多世界解釈や、未来からの因果関係を含めて考える理論など、物理量は確定しているという立場もたくさんあることが新鮮だった。
また、実は物理世界は状態が重ね合わされているのが実相で、我々の意識が錯覚しているのだ、という説や、上記の未来の事象に現在の事象の原因を求める説などを知り、所詮、人間の認識などは、ごく限られた範囲にしか及ばないのかもしれない、ということを強く意識させられた。

ただ、難しかった。
前の議論を完全に租借してから次にいかないと、どんどん分からなくなる。
それに、ベクトルとかを懇切丁寧に解説している割に、説明が足りないんじゃないかと思われるところが散見され、新書を読むような一般の読者層をターゲットとしていそうな割に、全体としてちぐはぐな印象を受けた。
ただ、巻末の推薦図書(どれも本書よりも難しそうな感じ)を見て、また唸りながらも量子力学の世界を感じたいという気持ちにさせてくれるのは不思議だった。
次は、もうちょっと腰を据えて読みたいと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年8月20日
読了日 : 2013年8月20日
本棚登録日 : 2013年8月20日

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