知のトレッキング叢書 日本人と漢字

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  • 集英社インターナショナル (2015年11月26日発売)
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37頁:孔子には『易経』を繰り返し読んだというエピソードが残っています。陰陽五行説に基づく占いの書で,易占いのテキストともいえる書ですが,これを繰り返し読んだためにできたのが,「韋編三絶」という故事成語です。/竹簡を紐で束ねた『易経』を,熱心に何度も何度も読んでいたら,なめし皮の紐が切れてしまうことが三回もあった――当時の本の形態までよくわかることばです。
・この部分の記述を読んで,いくつか違和感を感じた。①『易経』は陰陽で森羅万象を説明していますが,五行論(五行学説)は余計じゃないですか?/伝(十翼)の中に,五行論による説明があるのかな?②現代の中国語学の理解では,「韋」は,「緯」のあて字で「よこいと(横糸)」と解釈するのがおおかたの見方なのではないでしょうか?③「なめしがわ」は一字で書くと「韋」「鞣」「靼」で,一説では毛があるのが「皮」で,毛をとってなめしたのが「革」なので,かな交じりで書くのなら「なめし革」がいいのではないでしょうか?木簡に付着したナメシ皮が出土しているのであれば,ごめんなさい。
38頁:固性をもった
39頁:『春秋左氏伝』……漢民族の「乳(ニュウ)」という語を,楚人は「穀(コク)」と言っていたことがわかります。
・中国語学では「乳」を意味する「穀」は「コク/gŭ」ではなく「コウ/gòu」と読むのだと思う。
39頁:不律にはその発音から筆の意味があることによって付けた名だ,と由来が伝わっています。
・説明不足だとおもう。反切を知らない読者には理解しがたいのではなかろうか?また余計なことだが,森鷗外の子どもの名前に言及し,「於菟(オットー)」「茉莉(マリー)」「杏奴(アンヌ)」と「外国語で読みやすそうな名前」[実質はドイツを主とするヨーロッパ語か]との対応関係を説明しながら,「不律」だけ,「フリッツ」との対応を言わないのは,話が「筆」にそれたためか?(※66頁「文章の組み立てや流れというものは,必要に応じて,"崩す"ことも大事なのだ」という発想によるのかも知れない。)
40頁:万里の長城の祖形
・「祖型」?
45頁:陰陽五行説という考え方がありました。宇宙の現象は陰と陽の二元論ですべて説明できるという世界観,宇宙観によるものです。
・37頁を読んで感じた違和感の由来がわかった。著者のいう「陰陽五行説」とは「陰陽論」とイコールなのだ。要するに,著者は「五行説」の意味を理解していないのだと思う。
62頁:たとえば「蘇」という漢字がありました。
・どういうことがいいたいのだろうか?素直に読めば,「蘇」という漢字は,今は使われていない,と読める。もちろん,日本では使われており,著者も「『紫蘇』の『蘇』でもあります」と説明している。文章のつづきとして考えて,「(三国時代につくられた漢字のなかには)たとえば「蘇」という漢字がありました」と読んでほしいのだろうか?しかし,『説文解字』にすでに「蘇」字は収録されている。なぜ,「ありました」なのか,わたくしには,わからない。
※上文(「陰陽五行説という考え方がありました」)を読み返して,気がついた。著者のもちいる「ありました」は,過去のことを表現していると理解してはいけないのだ。たぶん,著者の口癖のようなもので,現在のことがらも「ありました」と表現するのだ。
64頁:先の「甦」なども,彼ら[鮮卑]がつくり,よく使ったことで広まった可能性があります。
・ここの論理構成もよくわからない。「騎馬民族の鮮卑は革でできたくつを履いている。革を部首にして旁(つくり)を「化」とすれば表せるぞ。これらを組み合わせて「靴」として,「クワ」と読ませればいいじゃないかと」。これって,鮮卑は形声字として,この「靴」という文字をつくったということですね。「甦」は「更+生(生き更える)」という会意字で,発想が違うのではないですか?/単に鮮卑もあらたに漢字をつくりだした,といいたいだけなのかな?
67頁:[科挙試験の]詩作で何を見るのか。……まず過去の詩を覚え,型を押さえていることが求められたのです。
・詩作は,発音試験だったと思う。下文にでてくるが,隋代に『切韻』(601年)によって標準的な発音が示された。すばらしい文章を書けるが,オーラルコミュニケーションができないひとを任用しても,朝廷の仕事に支障をきたす。方言しか話せない人をふるいにかける試験が詩作だったと思う。
72頁:漢字の本や語書を読んだり……
・「語書」?辞書?
★130頁に「圓」から「円」への史的変遷が述べられている。

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
カテゴリ: 漢字
感想投稿日 : 2015年12月30日
本棚登録日 : 2015年12月30日

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