ついに来たな、という感じのクライマックスです。
紫苑が沙布に出会います。二人の切ない会話が胸を打ちます。あぁ、昔には戻れないのか。
沙布を置いて、沙布の力を借りて、二人は矯正施設から脱出を図ります。そこでの紫苑の葛藤。そしてその葛藤が招くネズミの…。
印象的な言葉。
P.26 NO.6とは何だ。人の創り上げた国ではないのか。
これだけは信じてほしい。我々はここに理想の都市を築こうとしたのだ。戦争とも貧困とも無縁の楽園を。どこで違えてしまったのか。
老の言葉だった。嘘ではあるまい。NO.6は揺籃期において、確かに人の理念と志を基としていたのだ。
全ての人々の幸福のために戦いのない世を。
どこで違えてしまったのか。
P.151 「強くなれ」「しっかりしろ」「がんばれ」。他者の励ましの言葉は時に、罵声よりも手酷く心を傷つけもするのだ。
2009年の作品ですが、今の私たちに突き刺される言葉ですね。
そう言われてみれば、NO.6は未来都市ですから、ある意味で我々が辿り着いてしまうかも知れない未来の一つの形なのかも知れません。人類の理想を目指して、気が付いたら別のところにたどり着いていた、なんてことには絶対なりたくありません。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
SF・ミステリー
- 感想投稿日 : 2014年4月29日
- 読了日 : 2011年6月12日
- 本棚登録日 : 2017年10月30日
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