この世の全部を敵に回して (小学館文庫 し 12-1)

著者 :
  • 小学館 (2012年4月6日発売)
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本棚登録 : 569
感想 : 79
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ストーリーだとか背景だとかをすべて排除して
われわれが生きていく中で当然のように意識し、
解決に導かれることのない永遠の課題として
残されているものについて書き連ねられている作品。

一番心に響いたストーリーは、
同級生の妹が誘拐されるということについて考えられている部分。
「俺、もう二度とあいつのことからかわないことにする」
犯人の行為を間接的に肯定してしまうからくりに
簡単に世の善悪だなんて判断することなどできなくて
価値観の違いだとか、環境の違いなど
日常になんら影響を及ぼさない小さな衝突が、
取り返しのつかない問題が起きない限り明るみに出ないところに問題があって
それを解決することだなんて誰にもできなくて
物事は表面的な問題以上に根幹をとらえて解決しなくては
どんなものでもその場しのぎの正義感に過ぎないだなんてなんて残酷な仕組みなのだろうと思う。

はっきりといえることは、誰にも嫌われない人生だなんてありえないことで、
正しいだけの人生なんて絶対歩めないんだということだ。
そのためには自分の正しくない部分を正しくないんだと自覚すること。見栄を捨てることそのくらいしか個人としてできることはないのだろうなと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2016年読書の記録
感想投稿日 : 2016年1月24日
読了日 : 2016年1月24日
本棚登録日 : 2016年1月19日

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