置かれた場所で咲きなさい (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎 (2017年4月11日発売)
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感想 : 79
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いわずと知れた大ベスト・セラー。著者はカトリックのシスターにして、9歳のときに教科書に登場するあの2・26事件に遭遇し、眼の前で父親を殺害された経験をもつ。さて、肝腎の内容であるが、わたしは本書は人生訓でも自己啓発書でもなくて、まぎれもなく宗教書であると思う。たとえば、随所に聖書からの引用があり、「神」にかんする言及がみられる。しかし、悲しいかな、神なんて実在しないのである。無辜の市民がテロ組織によって無惨に殺されるいっぽうで、誰の目からみても極悪人、という人が、うまく法の網をかいくぐり、のうのうと暮らしていたりする。こういう現実を鑑みれば、神について言及することがいかに虚しいかがわかるであろう。当然、本書についてもおなじことがいえるのであり、ハッキリいってなぜココまで受け容れられたのか、まったくもって不明である。むろん、内容が宗教的であるからといって、教訓のすべてが無宗教者に活かせないとは思わないし、むしろわれわれ広く一般に通ずるような箴言も多くみられた。しかし、だからといってわざわざ本書を読む必要があろうか。「教育勅語」には部分的に正しい面も多く、学校教育で用いることについても否定しないと政府が見解を出して昨今話題になったが、これは聖書の教えについてもいえること。しかし、その政府見解が大きな批判を浴びたように、宗教系の学校ならともかく、ヘンに「味つけ」された文章から普遍的な教訓を受け取る必要はどこにもない。こんな宗教書すらもありがたってしまう日本人の余裕のなさには、心が休まるどころか、むしろひたすら心配を募らせてしまう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月14日
読了日 : 2017年8月13日
本棚登録日 : 2017年4月11日

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