こころ (新潮文庫)

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レビュー : 1921
著者 :
jun55さん 小説   読み終わった 

「明治」を知る一環として読む。特に乃木希典の殉死に影響された小説として興味を抱いたことがきっかけ。過去にも読んだことがあるのだろうか、授業なので。新鮮な気持ちで読むことができた。

テーマとしては、金銭と恋愛を巡るエゴイズムの追及と批判、高度な自己否定に到達した人間像等、普遍的なものであり、それ自体共感を得る。
加えて、明治時代の価値観、大正における厭世的な気分を描いたものであり、その時代風景も垣間見ることができる。

「明治天皇」ドナルド・キーン著の中で日露戦争後の「不機嫌の時代」(山崎正和)について記されている。
岡義武「青年の間には人生の意義を求めて懐疑、煩悶に陥るものが少なからず生じた。このような傾向は日露戦争前に既に兆していたが、戦後それは一段と顕著になり、煩悶を口にすることは今や青年間の一つの流行である、とまで評せしめるにいたった」
若い青年男女で流行していた「煩悶的先生思想」、この厭世思想は皮肉なことに、日露戦争終結後十年間の文学が異常な開花を見せたことの一因となったかもしれない。夏目漱石は、この時期に彼の最高の作品を書いた。森鴎外、石川啄木、島崎藤村の名を今日に留めている傑作群は、主として同じ時期に登場した。この時期はまた、永井荷風、志賀直哉、芥川龍之介、谷崎純一郎が彼らに最初の名声をもたらした作品を発表した時でもあった。

バブル崩壊後の約20年間、やはり厭世的ななものが充満しているわけだが、3.11が明治の時代にあった新しい世を築く力強さへの回帰を促しているような気がしている。

レビュー投稿日
2011年12月11日
読了日
2011年12月11日
本棚登録日
2011年12月11日
8
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