Never Let Me Go: 20th anniversary edition (English Edition)
- Faber and Faber (2009年1月8日発売)


クローン人間、臓器移植をテーマにしたSF小説。
SF小説といっても、極めて現代社会のオーバーラップできる作りになっており、その違和感、不思議感が独自性を際立たせている。
クローン人間なので、生殖機能がないと思うのだが、この小説の中で展開される男女の愛は、極めて中性的に描かれ、現実との遊離感を出している。
つまり、男女の愛を超えた人間の関係性を描くことに成功した、ということだろう。
クローン人間の命の有限性、それは人間に比べて、短く、自由がない死なのだが、人間であっても、その死を意味することは違いがないといえる。
「死」、「生」を見つめ直すきっかけを与えてくれる。
最後に、この小説のテーマに「記憶」がある。
クローン人間である主人公が「記憶」をベースにこの小説が展開されている。
福岡伸一先生が、この小説を語る際に、「記憶」をテーマに以下のように語っており、大いに腹落ちするところあり。
***
「記憶は死に対する部分的な勝利である」
記憶は細胞の外にある。
細胞と細胞の間の関係に記憶が保持されている。
記憶はモノではなく、モノとモノとの関係。
自分にとって大切なものは思い返している記憶。
インパクトがあるというよりも、絶えず呼び戻しているもの。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
外国小説
- 感想投稿日 : 2023年9月13日
- 読了日 : 2023年9月13日
- 本棚登録日 : 2023年9月13日
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