創元推理文庫復刊フェア2012の1冊(このブクログの検索では1994年の古い刊しかでてこないので表紙カバーが違っている)。いやあしかしさすがに古い。1937年の作品だから75年以上昔だ。しかも鮎川信夫訳というからこれも時代物。だけど新しいものが古いものより優れているとは限らない、これはその恰好の見本だ。舞台が日本だと時代がかった印象を強く受けてしまうところが外国の話なのでそういう違和感が少ない、というかそもそも外国物というと現代小説よりも古典ミステリの方がなじみがあるせいで、かえってすんなり読めてしまうといえるのかも。
ストーリーの奇抜さ、おもしろさ、そして意外な結末とミステリとしては非の打ちどころのない構成になっているのに加え、愛すべき主人公トッドハンター氏のおかしみのある言動がすばらしい色どりを添えている。おそらくというか間違いなくこれは訳者のセンスと筆力が与っているに違いない。うまいと思う。翻訳物の評価は難しい。原作を生かすも殺すも訳者次第だ。最近、古典ミステリの新訳再刊がブームで、作品の印象がガラッと変わるのだそうだ。むべなるかな。だけど古典には古典らしい雰囲気がふさわしい気もするので、いたずらに現代風に訳出するのがよいと言えないよな。この作品などを読むとつとにそう思う。これはこれでいいのだ。よくぞ復刊してくれたと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外ミステリ
- 感想投稿日 : 2013年5月11日
- 読了日 : 2013年5月8日
- 本棚登録日 : 2013年5月11日
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