緑の家(上) (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2010年8月20日発売)
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本棚登録 : 714
感想 : 63
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「文学は熱い火だ」スペイン語圏の小説に送られるロムロ・ガジェゴス賞(第一回目)を取った作者の言葉。政治活動も行いペルー大統領に立候補したこともある。永遠のノーベル賞候補者。
⇒追記:2010年ついにノーベル文学賞受賞!これを機会にラテンアメリカ文学の復刊お願いします!

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砂の降る町、ピウラに流れた男が建てた「緑の家」という娼館の過去と現在。アマゾンの密林と都会。インディオの娘を一族から連れ出しキリスト教の教育を強要する修道院。インディオを手下に詐欺や略奪を繰り返す日系人とその妻と仲間たちの物語。搾取する白人に抵抗しようとするインディオの末路。故郷に帰ってきた軍曹と、昔の仲間と、緑の館の娼婦となっていた軍曹の妻。
川の支流のように語られる別々の話が、最後には壮大な一つの流れとなる。
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南米文学ではまったく違ったものが同居し物語を為す。都会の町から少し離れれば原始の密林。生者と死者が語り合い、雑多な人種が混在する。搾取する者、される者、それらの中間にいる者。都会で文明は発達しても、密林では太古からの生き方もある。南米小説の特徴としていくつもの時代や場所が交錯し、時系列が錯綜するというものがあるが、その中でも特に錯綜している作品。

同じ段落で過去と現在の会話が混在し、いくつかのテーマが細切れで語られるため別の人物と思って読んでいたら同じ人物の過去と現在だったり、また同じ人物と思っていたら同じ名前を付けれらた別人の話だったり。しかし文章構成は幻術的であるけれど内容はきわめてリアリズム。
ストーリーの違いは文体の違いで表現される。一番過去と現在が錯綜しているのが略奪者の日系人の物語。病で療養序所に向かう現在に、それまでの過去がない交ぜに語られる。
話の中心であるピウラでの語り口も年代によって変わる。過去のピウラは三人称であまり心情は深く触れないことにより伝説的印象を深める。現在のピウラは意気のいい会話調で語られ、終盤は誰かが登場人物に語りかける二人称形。この語りかけが純粋に美しい。「これでいいのかどうか、最後にもう一度考えてみるのだ。人生とはこういうものなのかどうか、もし彼女がいなかったら、あるいは彼女とお前の二人きりだったらどうなっていたか、すべては夢だったのかどうか、現実に起こるこというのはいつも夢とは少しばかり違うのかどうか、よく考えてみるがいい。そしてこれが本当に最後だが、お前はもう何もかも諦めてしまったのかどうか、そしてもしそうなら、それは、彼女が死んでしまったからなのか、それとも自分ももう年なので、次に死ぬのは自分だと悟っているからなのかどうか、そこのところをよく考えてみるのだ」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 南米長編
感想投稿日 : 2010年12月11日
読了日 : 2010年12月11日
本棚登録日 : 2010年12月11日

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コメント 4件

りまのさんのコメント
2021/01/17

淳水堂さん
フォロー、ありがとうございます!
「緑の家」 って、オードリーヘップバーン主演映画の、原作なんでしょうか?…うろ覚えで、すみません、、、
こんな私ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

淳水堂さんのコメント
2021/01/17

りまのさん
こちらこそフォロー、いいねありがとうございます!
私は海外文学が多いです。
りまのさんの載せている見仏記やパームシリーズも持っています。パームシリーズは現在まで追いかけてます。しかし今のペンネームがどうも馴染まなく、前のお名前で呼びたくなってしまいます。。(たしか前のお名前は別れた旦那さん由来だから変えたんでしたっけ、呼ぶべきではないんでしょうけど)

この「緑の家」はペルーの作家の小説で、「緑の家」とは砂漠に突如として建てられた緑に塗られた娼館を意味してます。作者自身が子供の頃本当にそういう光景があったようで。
映画とはまた別物です。映画の方は「緑の館」でしたね(笑)。映画の「緑の館」の原作は読んだことないのですがウィリアム・ハドソンだそうです。こっちは妖精のような少女のくらす密林の家でしたね。

それでは今後もよろしくおねがいします!

りまのさんのコメント
2021/01/17

淳水堂さん
そうでした!間違ってしまって、恥ずかしいです〜!!
教えて頂き、ありがとうございます。…あぁ、恥ずかしいのであります、、、いつもこんなです…。

りまのさんのコメント
2021/01/18

淳水堂さん
ふたたびお邪魔します。
淳水堂さんも、パームシリーズを、全巻、読んでいらっしゃるのですね。なんだか親近感…♡
パームは26巻から、獣木野生という、そのまんまのワイルドなペンネームになられ、書店で注文する私などは、たんび恥ずかしいおもいを、しております。ずいぶん若い頃から、追いかけてます。リアル本友には、そんな人いないので、嬉しいです♪
パーム、42巻で、ジョゼが…!!
パームシリーズも、いよいよな展開となってきました。
共に追いかけてゆきましょう!
嬉しい (>ω<) りまのより。

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