白痴 (新潮文庫)

3.58
  • (201)
  • (221)
  • (521)
  • (33)
  • (10)
本棚登録 : 2516
レビュー : 266
著者 :
淳水堂さん 日本文学   読み終わった 

『私はそのころ耳を澄ますようにして生きていた』
極度に物を所有したがらなく、1か月の給与を1日で無理にでも使い切ろうとする語り手は、複数の女たちの間で爛れるような生活を送る。
 /いずこへ

『その家には人間と豚と犬と鶏と家鴨が住んでいたが、まったく、住む建物も各々の食べ物もほとんど変わっていやしない』
井沢の住む町は安アパートが立ち並び、淫売や山師や軍人崩れが住んでいた。
井沢の隣人は気違いで、気違いの母はヒステリイで妻は白痴だ。その白痴の妻が井沢のアパートに転がり込んできた…。
 /白痴

『母親の執念は凄まじいものだと夏川は思った』
郷土の実家との関係を断ち切ろうとする夏川だが、その母はどうやったか夏川のアパートを突き止める。
アパートに帰るか帰らないか…そしてその生活を顧みる。
 /母の上京

『二人が知り合ったのは銀座の碁席で、こんなところで碁の趣味以上の友情が始まることは稀なものだが、生方庄吉はあたり構わぬ傍若無人の率直さで落合太平に近づいてきた』
一人の女を巡る男たち。
脱がなかった外套とその向こうの青空。
 /外套と青空

『私はいつも神様の国へ行こうとしながら地獄の門を潜ってしまう人間だ。ともかく私は初めから地獄の門を目指して出かける時でも神様の国へ行こうということを忘れたことのない甘ったるい人間だった』
元女郎と暮らす男。私は一人の女では満足できない。私は不幸や苦しみを探す。私は肉欲の小ささが悲しい、私は海をだきしめていたい。
 /私は海をだきしめていたい

『カマキリ親爺は私の事を奥さんと呼んだり姐さんと呼んだりした。デブ親爺は奥さんと呼んだ。だからデブが好きであった』
私は昔女郎だった。今はある男と暮らしている。戦争中だけの関係。
日本が戦争に負けて、男が全員殺されてもきっと女は生きる。
でも可愛い男のために私は可愛い女でいようと思う。
私は夜間爆撃に浮かぶB29の編成、そして被害の大きさに満足を感じている。
男たちは日本中が自分より不幸になればいいと思っている。
だから戦争が終わった時には戸惑いを感じたのだ。
『私たちが動くと、私たちの影が動く、どうして、みんな陳腐なのだろう、この影のように!私はなぜだかひどく影が憎くなって胸が張り裂けるようだった』
 /戦争と一人の女

『匂いってなんだろう?
私は近頃人の話を聞いても、言葉を鼻で嗅ぐようになった』
私の母は空襲で死んだ。
私は私を迎えに来た男のオメカケになっている。
私は避難所の人ごみで死ぬのなら、夜這いを掛けてきた青鬼に媚びて贅沢してそしていつか野垂れ死ぬだろう。
すべてがなんて退屈だろう、しかし、なんて、懐かしいのだろう。
 /青鬼の褌を洗う女

レビュー投稿日
2017年9月6日
読了日
-
本棚登録日
2017年9月6日
4
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『白痴 (新潮文庫)』のレビューをもっとみる

『白痴 (新潮文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする