真田太平記(十二)雲の峰 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1988年3月1日発売)
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最終巻十二巻「雲の峰」
豊臣は滅び徳川の天下となり、家康も死去。
二代将軍秀忠の時代となります。

さて、時代劇などにおいて、大阪の陣での豊臣家家臣たちは「数年籠城して、家康が死んだら、有利な状況で和睦、千姫の父である秀忠は家康より交渉しやすいだろう」と考えていた…ように描かれますが、
あくまでも「後世からみると」ですが、
大名家も公家も押さえつけ取り潰し、風紀が乱れたと朝廷の女官たちも処罰させるような秀忠のほうがよっぽど怖い。
やっぱり”大阪の陣”というものを起こした時点で豊臣家に行く末はなかっただろう…。

…とまあ、こんなコワい秀忠政権下で、真田信之は真田家の行く末に暗いものを感じ、ますます身体を引き締めます。
そして草の者のなかでただ一人生き残った女忍びのお江さん。
上田に戻り信之の元で真田家を守るための忍び働きを行います。
信之54歳、お江さん65歳くらい?
まだまだ草の者としての腕前は超一流。
真田家を取り潰そうとする幕府との駆け引き。
このへんの描写は著者も実に楽しそうです。歴史に大きな流れは描いたのでこの長期小説をどう絞めるか、描きたい人の描きたいことを描くぞーという状態か(笑)

そして最終巻らしく、生き残った者たちの”その後”が静かに語られます。
穏やかな晩年を過ごす者、失脚する者、飼殺される者、失意のうちに消える者…。
そんな姿が静かに描かれます。

この長期連載のラストは、真田家が上田から松代に転封となるところで終わります。
これからは実直な昔ながらの武士のままでは生きられない政治の世界となります。そんな中古い時代を生き抜いた誠の武士である信之、古い時代の卓越された忍びの術を持つお江さんは老境に入ってもまだまだ隠居などしていられないようです。

お江さんについては…後書きで作者は「お江のその後を私は知らない」と書いています。「しかし彼女のことだからきっと長寿を保っただろう」。あとは読者の想像にお任せということなので、信之の裏で忍び働きしながら穏やかに老後を過ごしたと思っておきましょう。信之さんは94歳で亡くなるのだからこの先まだ人生は長い、身分を超えて良い茶飲み友達は必要だろう(笑)

そして後書では、真田家のその後が描かれて…終幕。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 真田家
感想投稿日 : 2017年6月22日
読了日 : 2017年6月22日
本棚登録日 : 2017年6月22日

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