「少年少女世界名作全集」で読んだっきりとか、粗筋は知ってるけどでちゃんと読んだことないとか、自分の「死ぬまでに読まないとリスト」に載っている本が沢山あるのですが…そのなかの一つにやっと着手。
ロシア文学を読む場合は、愛称と立場をある程度予測しておくと混乱しない。
自己流ロシア名を覚える三原則。
①個人名+父称+苗字
②愛称や名前の縮小がある。ロジオン→ロージャ
③名前も苗字も、男性名と女性名がある。
主人公一家。
兄「ロジオン・ロマーヌイチ(ロマーンの息子)・ラスコーリニコフ(男性姓)」愛称ロージャ、
妹「アヴドーチヤ・ロマーノヴナ(ロマーンの娘)・ラスコーリニコワ(女性姓)」、愛称ドゥーニャ
母「プリーヘヤ・アレクサンドロブナ(アレクサンダーの娘)・ラスコーリニコワ(女性姓)」
お互いの立場や年齢、関係性や親しさにより呼びかけが変わります。
ロジオン・ロマーヌイチ→きちんとした呼びかけ
ロージャ→愛称。親しい呼びかけ。
ラスコーリニコフ→客観的な呼び方?作者は本文でこの名で書くことが多い。
では登場人物も多いので、主人公一家以外の主要人物を書き出してみよう。
マラメードフ一家
セミョーン・ザハールイチ・マルメラードフ⇒飲んだくれ
カテリーナ・イワーノヴナ・マルメラードワ⇒マルメラードフの妻。
ソフィヤ・セミョーノヴナ・マルメラードワ (ソーニャ、ソーネチカ)⇒マルメラードフの娘。
被害者姉妹
アリョーナ・イワーノヴナ⇒高利貸しの老婆。
リザヴェータ・イワーノヴナ⇒アリョーナの異母妹。
警察関係
ポルフィーリー・ペトローヴィチ⇒予審判事。
友人知人など
ドミートリィ・プロコーフィチ・ウラズミーヒン(通称ラズミーヒン)⇒ラスコーリニコフの大学時代の友人。
アルカージイ・イワーノヴィチ・スヴィドリガイロフ⇒ドゥーニャが家庭教師として務めていた家の主人。私は彼の名前が憶えづらく、「ビーフストロガノフさん」と密かに呼んでいる(笑)
ピョートル・ペトローヴィチ・ルージン⇒ドゥーニャの婚約者。
よしこれでばっちり、さあ始めよう(笑)。
貧しい元大学生ラスコーリニコフは高利貸しの老婆、アリョーナ・イワーノヴナへの殺人計画を胸に秘めています。
ラスコーリニコフは「世の中には”凡人”と”非凡人”がいて、非凡人は自らの良心が法律を超えるのではないか」「殺人が発覚するのは犯人自らの行動のため。信念があれば発覚などしない」とかなんとかいう理論を持っています。
貧乏のどん底でありながら変に誇り高く、不穏な心境いあるラスコーリニコフは、たまたま耳にした「一つの微細な罪悪は百の善行に償われる」「選ばれた非凡人は、新たな世の中の成長のためなら、社会道徳を踏み外す権利を持つ」という討論を聴いたり、翌日の晩高利貸しのアリョーナは1人っきりになると知り、
やはり高利貸しアリョーナを殺し溜め込んだ金品を善い行いに使うならその方が良いだろう、との考えが頭から離れません。
そして翌日の晩。
ラスコーリニコフは、アリョーナ・イワーノヴナを訪ね、彼女に向かい斧を振るいます。
しかしたまたま早く帰ってきた義妹のリザヴェータも殺さざるを得なくなり、ラスコーリニコフの心は乱れます。
独自の理論と良心を唱えた殺人を実行しながらも、ラスコーリニコフはこの殺人をもって「善行は犯罪に勝るんだから、高利貸しを殺して遺産を善行に使うことは善」という理論を進めようとはしません。奪った金を使うことも施すこともせず石の下にひっそり埋めます。
そしてただ熱に浮かされ町をうろつき、知人と揉めて、さらには自分が犯人だと仄めかすかのような態度をとります。
…読む前のイメージでは、毅然として殺人に向い、貧しいながらも自分ながらのプライドと論理は揺らがないかと思っていたのですが、実際読んでみたらかなり揺らぎまくりでした。
さて、このころラスコーリニコフの妹のドゥーニャには縁談が持ち上がっています。
ドゥーニャは、家政婦として勤めていた家の主人、アルカージイ・イワーノヴィチ・スヴィドリガイロフに言い寄られていたことで悪い噂を流されましたが、その誤解も解けて貞淑で賢い娘、として評価を挙げていたのです。
そこに目を付けたのが、ピョートル・ペトローヴィチ・ルージン。
自分が貧しい身分から勤勉により地位向上してきたため、上流社会に参加しようとして、そのために貧しく評判がよく賢く、そして自分より立場が低い、一生自分に頭が当たらず自分を立てる娘と結婚しようとしたのです。
…えーっといまでいう「モラハラ亭主」というか、封建社会の小説だとこういう人物はかなり多いな。。貧しい家の娘には断ったら一家ともに生きられないので、断るすべも無し。(しかしいまでも「うちの旦那がそのタイプ!」と答える奥さん衆は結構いるような気がするが(苦笑))
ドゥーニャは、自分たちの母、プリーヘヤ・アレクサンドロブナと、共にラスコーリニコフを訪ねます。
ラスコーリニコフには、学生仲間で同じく貧しいが面倒見のいいラズミーヒンをはじめとする友人知人がいて、彼らが集っているところに妹の求婚者、ルージンが現れます。
ラスコーリニコフ達と、ルージンは、会ったとたんに激しく反発しあい、縁談は破断に向かいます。
さて、街を彷徨うラスコーリニコフは、酔っぱらいのセミョーン・ザハールイチ・マルメラードフが馬車に轢かれて絶命する場所に居合わせます。
このマルメラードフとは、ラスコーリニコフは殺人の前に出会っていたのです。
貧困のどん底でも酒に負けて家族を顧みず、まだ若い娘のソーニャが娼婦になってまで家族を養おうとするその金さえも呑んでしまいます。
マルメラードフの死に立ち合い、ソーニャとの邂逅により、彷徨っていたラスコーリニコフの精神は新たな光を見出したような状態に。
…子供のころ「小学館世界名作全集」ではソーニャは「貧しい娘さん」だったが、元は「娼婦」…ってそりゃそうだよね。。
この子供向けの名作全集で読んで覚えているのはソーニャの「あなたが汚した大地にキスを」で、道に跪くラスコーリニコフの挿絵。まあこの場面は後半だろう。
さて、上巻終盤では、ラズミーヒンの遠縁である予審判事ポルフィーリー・ペトローヴィチと、ラスコーリニコフの心理戦第1弾。
犯罪論、精神論を繰り広げて互いの手の内を探る二人。
この殺人の顛末は、ラスコーリニコフの彷徨う精神の行き着く先は…
***
とりあえずのまとめ。
ロージャくん、そういうの鬱っていうんじゃないかい、とりあえず朝起きて飯食って働いて寝ろ!!とちょっと思った…。
ペテルブルグの下級貧困者の生活は匂いたつ様相。
自力ではどうにもならない生活を送るしかない人たちは、神への信心や自分の良心の在り方、お互いの支え合い(借金踏み倒し合い)などで、「御心のまま」に生きようとしています。
ポルフィーリー・ペトローヴィチとの心理戦や、終盤に登場した思わせぶりな町人の存在は、面白いことが始まった!と続きへの期待が増しました。
下巻。
https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/410201022X
- 感想投稿日 : 2018年10月23日
- 読了日 : 2018年10月23日
- 本棚登録日 : 2018年10月23日
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