戦争と平和(一) (新潮文庫)

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レビュー : 58
著者 :
制作 : 工藤 精一郎 
淳水堂さん 露西亜文学   読み終わった 

子供の頃「小学館世界名作全集」で読んで知ったつもりでいる”名作”がたくさんあるんですが、やっぱりこれはいつかちゃんと読まなきゃいけないよなあと私の読書課題だったので取り掛かってみた。

まずはロシア人名について。
私はフィギュアスケートファンなのですが、スラブ系選手を本名でなく愛称で応援したり、本名が長ったらしかったり、兄妹なのに名字が微妙に違ってたりしてるので、ロシア人名についてとりあえずこのくらいの認識を持っている。

❖名前(洗礼名)には、愛称、省略形がある。
⇒リザヴェータは「リーザ」、ニコライは「ニコレンカ、ニコールシカ、コーリャ」、エフゲニーは「ジーニャ」など。

❖名前に男性形と女性形がある。
⇒名字の場合、(ボルコンスキィ家の場合)父と兄「ボルコンスキィ」、妹と妻「ボルコンスカヤ」
名前の場合、男性「アレキサンダー」、女性「アレキサンドラ」。男性「イリア」、女性「イリナ」など。

❖名前の中に父称(父親の名前)を入れる。
⇒(ボルコンスキィ家の場合)
父「ニコライ・アンドレーヴィチ・ボルコンスキィ」
息子「アンドレイ・ニコラーエヴィチ(ニコライの息子)・ボルコンスキィ」、
娘「マリヤ・ニオコラーエヴナ(ニコライの娘)・ボルコンスカヤ」

❖呼びかける場合。
「ニコライ・アンドレーヴィチ」と名前と父称で呼ぶのは、非常に丁寧な呼びかけ。
「ニコーレンカ、ニコールシカ、コーリャ」と愛称、名前の略で呼ぶのは、親しい間柄。
「ボルコンスキィ公爵」と呼ぶのは、一般的な呼びかけ。
トルストイが地の文章で「アンドレイ公爵」「アンドレイ・ニコラーヴィチ」「ボルコンスキイ公爵」(父に対しては「ボルコンスキイ老侯爵」)と色々呼び名を使ってるのですが、使い分け法則がよく分かりません。

では1巻。
ナポレオンがロシアに迫る19世紀帝政時代、ロシアの社交界で繰り広げられる人間模様から始まる。
当時の貴族たちは教養としてフランス語を会話に混ぜ、人脈とコネつくりの為のサロンやパーティが行わる。
放蕩息子たちは膨大な金を賭け合い、瀕死の資産家には権利のある人間たちが遺産をもらおうと群がり、若い男、娘たちは良い条件での昇格や縁談探しに余念がない。
そんな社交界を出て戦場へ向かう貴族たちもいる。貴族界に飽き飽きして、ロシア皇帝への崇拝のため、若い見聞のため、立身出世のため。

当時のロシアはフランスに絶大な影響を受け、また憧れをもっているようですね。
ロシア貴族社会ではフランス語は教養とされ、主要人物のピエールはロシア貴族(の庶子)だけど、ロシア名の”ピョートル”ではなくフランス名の”ピエール”。彼の妻もロシア名の「ヘレン」ではなくフランス風の「エレン」。エレンの実家のクラーギン公爵家はエレンの兄弟たちも「アナトーリ公爵、イッポリト公爵」とフランス風。
また、ボルコンスキイ公爵家にはフランス人のコンパニオン(令嬢の相手をする女性)がいるので、フランス風を家庭に持ち込むのは流行だったのか。
さらにナポレオンが攻めてくるというのにナポレオンに敬意を払うような男がいたり(女性からは反キリスト者!などと容赦ないけど)、フランスと戦争のため同盟を組んでいるロシア皇帝とオーストリア皇帝とが教養としてフランス語で挨拶したり、読みながらもどうもこの戦争に対する温度感が分からなかったのだけれど、油断していたら終盤で大敗走、大敗北で現実を突き付けられた。



【ベズウーホフ伯爵家】
❖ピエール・キリーロヴィチ・ベズウーホフ伯爵:
 キーリル・ウラジーミロヴィチ・ベズウーホフ伯爵の庶子。
ベズウーホフ伯爵死去の際は遺産目当ての貴族たちが群がるが、ピエールがすべての財産を継ぐ。
フランス帰りで社交界に馴染めず、相手構わず自分の論議をまくし立て周りからはちょっと浮いた人扱い…なんだが膨大な財産を継いだことにより「高潔な人物」と称賛されるようになる。
ぼーっとしているうちにクラーギン公爵の娘エレンを愛していると思い込み外堀埋められ結婚。おそらく全読者が「その結婚うまくいかないよ」と想像したであろう新婚生活を始めた。

【ボルコンスキィ公爵家】
❖アンドレイ・ニコラーエヴィチ・ボルコンスキィ公爵:
 社交界生活に嫌気がさし、出産間近の妻を残して戦場へ向かう。皮肉的厭世的な思想があるんだが、アンドレイ自身も社交界からは神経質でとっつきにくいと思われている。戦場では生き生きとした様子を取り戻しつつある…けどたまにイヤな奴の面も出てる。

❖リーザ(リザヴェータ・カルローブナ公爵夫人。若公爵夫人、小柄な公爵夫人、など):
 アンドレイの妊娠中の妻。自分たちを置いて戦場に行く夫、夫の父の元に預けられる自身を嘆く。

❖マリヤ・ニコラーエヴナ・ボルコンスカヤ:
 アンドレイの妹。頑固な父と田舎に住んでいる。醜い容貌だとかなんだとか書かれちゃっているんだが、純粋な心の持ち主。

❖ニコライ・アンドレーエヴィチ・ボルコンスキイ公爵:
 アンドレイとマリヤの父。政治社交界に合わず田舎で貴族としての秩序を守った生活を送る。頑固で厳格で支配的な性格は家族を含めて周りから恐怖と畏敬の念を持たれている。
主要登場人物でボルコンスキィ家は公爵だが皇帝の親族にあたるのか。「皇帝陛下の遠縁にあたる、ちょっと怖くて煙たいけど正しいので遠巻きにされてるご隠居様」といったところか。

【ロストフ伯爵家】
❖ニコライ・イリーイチ・ロストフ伯爵:
 貴族の若者だが前線に加わる。

❖ナターシャ・ロストワ(ナターリア・イリイニーシナ・ロストワ公爵令嬢):
 ニコライの妹。1巻ではまだ12歳。天心爛漫な次女。

【クラーギン公爵家】
❖ワシーリイ・クラーギン公爵:
 クラーギン公爵家は、登場人物の中では貴族の悪い面を具現化しているような家のよう。
ワシーリイ公爵はベズウーホフ伯爵の遺産争いに負けて、遺産を継いだピエールに近づき、娘のエレンと結婚させる。他に息子のイッポリトとアナトーリも資産の多い貴族の娘と結婚させようと画策中。

❖エレン・ワシーリエヴナ・クラーギナ:
 ピエールの妻となる、クラーギン公爵の美貌の娘。貴族社会では財産や地位があると「心が美しい」と称賛されるようなんだが、彼女は美貌と資産にしては兄弟のアナトールと噂があったりあまり知的でなさそうだったり、褒められた性質ではないと思うんだけど、周りからは家柄と美貌の為にひたすら称賛され持ち上げられる。
…というか「自分の兄弟と噂のある女」とずるずる結婚するピエール、さすがにしっかりしようよ(--;)。

【実在の人】
❖ミハイル・イラリオーノヴィチ・クトゥーゾフ:
 実在の帝政ロシア時代の軍人。
小説ではアンドレイの父の友人で、戦場でアンドレイが配下に着く。



むか~し映画も見ました。
 ピエール:ヘンリー・フォンダ
 アンドレイ:メル・ファーラー
 ナターシャ:オードリー・ヘプバーン

さて、1巻終了時点でロシアはフランスに大敗、アンドレイは瀕死でフランス軍に保護され、ピエールは読者から見ればその結婚うまくいかないよと思われる生活を始めた。
まだまだ先は長いのでゆ~っくり読んでいきます。

レビュー投稿日
2016年7月8日
読了日
2019年10月23日
本棚登録日
2016年7月8日
7
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『戦争と平和(一) (新潮文庫)』のレビューへのコメント

まっきーさん (2016年10月18日)

淳水堂さん、こんばんは。
いつもいいねをありがとうございます。

『戦争と平和』1~4巻まで読破お疲れ様です。壮大なストーリーとページ数の多さにひるんでしまいます。

いまNHKのドラマが放送されていますね。ドラマで見る派になっています。毎週楽しみで待ちきれません。

テレビドラマを見ているとロシア文学が人気あるのがよくわかります。人それぞれ差があるとはいえ人生の本質って、そんなに変わりないように思えてきました。

本名と愛称の呼び分けや親子の名前とかドラマを見ていても混乱する時があります。

淳水堂さん (2016年10月19日)

まっき~♪さん
コメントありがとうございます!(^^)!

おお、ドラマやってるの知りませんでした(笑)
検索したらアンドレイとナターシャ婚約したあたりですね!

原作の方は、人間ドラマの方は読みやすかったですが、ナポレオン戦争関連や、政治宗教、思想のあたりはほとんど理解できずf(^^;)
以前「アンナ・カレーニナ」読んだときも、ラストのロシア地主の思考は理解できずでありました…

>本名と愛称の呼び分けや親子の名前とかドラマを見ていても混乱する時があります。

本名と愛称、親子が同じ名前、同じ名前の違う人物、は、
フィギュアスケートと応援とラテンアメリカ文学で鍛えられた私には区別は割と得意v(*^^*)
でも、アンドレイの事を「アンドレイ公爵」「アンドレイ・ニコラーヴィチ」「ボルコンスキイ公爵」といろんな書き方をされてる場合の呼び分け法則などはよく分からず。
名前ってその国の文化や宗教背景が現れて面白いですよね。

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