<砂の本>
ボルヘスの短編集。ちゃんと筋のある小説っぽいものが多いです。ボルヘス自身の解説もあります。

【他者】
ロンドンに隠遁したボルヘスと、スイスで学ぶ若きボルヘスが出会い、その出会いについていろいろ考えるお話

【ウルリーケ】
「わたしが好きか、と聞くような過ちは犯さなかった。彼女にとってはこれが初めてでも、これで最後でもないことが分かっていた。(…)『これはみな夢のようだ。しかも、ぼくは決して夢を見ない』私は言った。『魔法使いが豚小屋で眠らせてくれるまで夢を見なかった、あの王様みたいね』とウルリーケは答えた」(引用)
ボルヘス短編の中ではロマンチックなものに分類されるのかな

【会議】
地球上のあらゆる者がメンバーである会議の結成と終末とその後の話。

【人智の思い及ばぬこと】
伯父の家に住み込んだ何者か。ホラーだと思うんですが正体がよくわからなかったです。

【三十派】
図書館の隅で見つけたある宗教流派の草案からの考察。空想の草案を作り「こんな原稿が見つかったから紹介します」というのはボルヘスのよくやる手段。

【恵みの夜】
「あのわずかの数時間のうちに、わしは愛を知り、死を見たんだからな。あらゆる人間に対して、あらゆることが啓示される、あるいは、少なくとも一人の人間が知ることを許されている限りのあらゆることがな。しかしわしはたった一晩のうちにこの二つの肝心なことが啓示されたのだ。長い年月がたって、あまり何度もこの話をしたので、今はもう、真実を覚えているのか、それとも、自分の語る言葉を覚えているだけなのか、とんとわからなくなったいまとなっては、もレイラの殺されるところをみたのが、わしだろうと他人だろうと、どちらでも同じことだ」(引用)

【鏡と仮面】
王の戦勝のために死を捧げる詩人。1年ごとに削ぎ落とされて作られた詩は、人が知ってはならない美の極致へと行きついてしまった。

【疲れた男のユートピア】
遙か未来の世界を訪れた男の話。

【贈賄】
二人の男の虚栄心から起きたある出来事。

【アベリーノ・アレドンド】
完全に世間との関わりを経った男の目的は?
最初に主人公の行動を書き、最後に目的が明かされる手法は「エンマ・ツンツ」などもそうなんですが、ボルヘス流ミステリーなのか。
読者としては、謎とも思ってなかったことが最後の種明かしと同時に謎と分かるの感覚が好きです。

【砂の本】
開くたびにページの変わる永遠の本を手に入れた男の希望と絶望。

<汚辱の世界史>
悪役として名を残す男たちの研究と紹介。ボルヘス流悪党列伝。
「ある男に成りすますために、まったく本人に似せなかった詐欺師」とか、ボルヘスの好きそうな逆説が現れています。
吉良上野介も書かれているんですが、参考にした書物が悪かったのか(A.B.ミトフォード翻訳「実録忠臣蔵」らしい)誠に僭越ながら一言申し上げたい。
作品内では「吉良上野介が浅野内匠頭に作法指南役として赤穂に赴き、赤穂城内で刃傷事件、本丸の中庭で切腹、介錯は大石内蔵助」と紹介されている。
…が、日本人としては「それはちょっと違います^_^;」といいたい。江戸時代の大名には参勤交代というものがあったわけで、赤穂城で饗応するつもりだったわけではないし、介錯は城代家老ができるもんでもやるもんでもないし…、まあ赤穂浪士って欧米の映画とかでも取り上げられているので日本へのイメージなのかな。

<エトセトラ>
古今の言い伝えを基にしたちょこっとした書き物など。
地域や年代が違っても伝承は似た話が多いものですね。

2010年6月11日

読書状況 読み終わった [2010年6月11日]
カテゴリ ●南米短編

2012年公開映画。
オペラ座の怪人ミュージカルが映画化された時も同じだったのですが「なんで舞台で完成されてるのにわざわざ映像化?」と思いつつ、観てみたら落ち着いてストーリーや歌詞を追えたり、元はミュージカルだけど舞台ではわかりづらい部分は原作から補足しているため、話も分かり易くなっています。

冒頭のバルジャンたちの牢獄での労働や、中盤のラマルク将軍の葬列から学生たちがバリケードを築く流れなどは、映画で見ると迫力が増しますね。

キャストで嬉しかったのは、司教様役のコルム・ウィルキンソン!ロンドンで初めて上映された「レ・ミゼラブル」におけるジャン・バルジャンのオリジナルキャストですよ!!
テレビで10周年コンサートを見てコルム・ウィルキンソンに感動、CDまで探して買ってしまったくらい。
若い頃のコルム・ウィルキンソンは若さからの粗さ猛々しさもあり、レミゼ以外では「ラマンチャの男」が良かったです。
そしてラストではちゃんとバルジャンを迎えに来てくださいましたね。
舞台で物足りなかったのは、「バルジャンの死の床から天国に誘うのは司教様だろ~~」と思っていたので、この演出は素直に嬉しい。
https://www.youtube.com/watch?v=1rL485i_jlY
https://www.youtube.com/watch?v=-dXYOR3QAUE&t=102s

他に映画演出で目に留まったのは、バリケード陥落で学生たちの死体に交り少年ガブローシュの死体を見つけたジャベールが、敬意を示すところでしょうか。
ジャベールは、バルジャンが自分を逃がしたことに、自分の正義が崩れてこの後自死に至るわけですが、
映画のジャベールは幼い少年まで死を賭して戦ったことに、悪党の集団と思っていた学生蜂起にも意味を見出し、さらに自分の正義が揺らいだのでしょうか。

学生たちのバリケード陥落は舞台の方が”死”が目立っていたかもしれませんが、
アンジョルラスとグランデールの死の場面が原作っぽく二人で並んで銃殺になっていたのは、それはそれでなかなか良かった。そしてお約束のアンジョルラスの逆さま死体。映画でどう表現するかと思いましたが、やっぱりこれはミュージカルレミゼの象徴の一つなので外せませんね。

あとはファンティーヌの「夢破れて」の歌の順番でしょうか。
舞台版では、失業してからこの歌を歌い、娼婦へ身を落とすわけですが、
映画では娼婦になり初めて客を取った後に「私の夢見た人生はこんな地獄じゃなかった」と歌うのでまさに心撃たれる。

舞台とイメージ違う?と思ったのはテナルディエ夫妻。
舞台だともっと年上でコミカルな印象ですが、ヘレナ・ボヘム・カーターってまだまだ魅力的ですよ。「うちの亭主はインポさ」なんていわれると、きゃああ(〃ノωノ)な感じです(子供三人作っといてインポも無かろう、とは思うが)。

ユゴーの原作を読んだときは、どうやってこれをミュージカル?と思ったけれど、本当に素晴らしい話に音楽の素晴らしい作品ですよね。

読書状況 観終わった
カテゴリ ミュージカル

小説の神様と言われる志賀直哉…を教科書に載っていた一部以外読んでいないので読んでおこう。

★★★
作家の時任謙作は、家族からの疎外感、出生の秘密鬱々とした心が晴れずに暮らす。

やっと縁談が成り立ち、新たな生活を始めようとするが、妻の不貞を知り、心は更なる陰鬱へと落ち込む。

大山に籠った謙作の心を晴らすように、大自然が包み込む。
★★★

2015年10月26日

読書状況 読み終わった [2015年10月26日]
カテゴリ ●日本文学

一番好きな作家、アルゼンチンの巨匠、ルイス・ボルヘス。言葉で迷宮を作る人です。アルゼンチン出身で、幼い頃から諸国を周り、国会図書館長も勤め、その博識は神学、哲学に及ぶ。その文章は決して堅苦しいものではなく、読書オタクが自分の好きなものを自分の周りに集めて喜んでいるような、書物や言葉への純粋な喜びを感じる作家です。
私にとっては史上最高の作家なのですが、内容は難解で何冊読んでも何度読んでも理解できない。しかし分からないなりの愉しみが味わえる。こんなに好きな作家に出会えたということが本当に幸せ。

「伝奇集」はボルヘスの代表的短編集で、辞典・迷宮・夢・各地の伝承や神話の収集・入れ替わり・エッセイ・論文的研究文・南米気質の男達の話、などが収められています。

<翻訳文学試食会>で取り上げていただきました(*^^*)
https://podcasters.spotify.com/pod/show/honyaku-shishoku/episodes/081-2-e2k81p9


【八岐の園(やまたのその)】
一応ミステリー仕立て。八岐の園とは一つの本で一つの庭で一つの迷宮。時間とは均一で絶対的なものではなく、増殖し分岐し交錯する無限の編目であるというボルヘスの世界観が出ています。

【円環の廃墟】
夢から生まれた男が別の男を夢により生み出し、自分は無に還っていく話

【ハーバート・クエインの作品の検討】
実在しない作家とその著者の研究、という形式の短編。ボルヘスはこの形式をよく使っている。実在しない小説を「この人物は~」「この手法は~」などと書かれるので、読者としてはそれがどんな小説で、どんなテーマか、そしてそれを通してボルヘスは何を言いたいんだ?(何の考察遊びをしているんだ?)を探っていく。「私はこの作品(架空)の影響で”円環の廃墟”を書いたんだよ」なんてお茶目なことも言っている。

【バビロニアのくじ】
はじめは金銭の籤だった。しかしそれは誰もがいつのまにか参加している運命の賭け事となっていた。

【死とコンパス】
「神の御名の文字は明かされた」その迷宮は、ユダヤ教の律法学者、キリスト教の一教派、赤色、コンパスと菱型で出来ていた。
迷宮的殺人事件に取り込まれた警部と犯人の話

【記憶の人、フネス】
落馬事故により、すべての記憶を持ち続けることになったフネス。24時間の出来事を24時間かけて反復し、一瞬の雲の形を昔見た文様と同じだと分析する。
そんな男の見る世界とは。
 特殊能力の人間そのものやそれによりおきる出来事と言うより、その価値観世界観など人間の内部を書こうとした作品。

【刀の形】
顔に刀傷を持つ男の罪の告白。
 Aという人物が実はBで、Bが実はAというボルヘスお気に入りの手法となってますが、話としてもスリリング。

【裏切り者と英雄のテーマ】
これもAが実は…という手法で、なぜそうしたかの人間のプライドと時代背景を書いてます。

【隠れた奇跡】
死刑直前に彼の願いは神に届いた。最後の詩作が彼の頭に完成されるまで密かに与えられた猶予。

===

ボルヘスの言葉をいくつか。

❒「私は作家になるよう運命付けられた人間だが、作家であるより読書家でありたかった」
後半生は盲目となり、アルゼンチンの国会図書館長となった時の言葉「天は私に書物と闇を与えた」
ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」に出てくる迷宮のような図書館の盲目の図書館長はボルヘスがモデルなのだそうです。

❒「むだで横道にそれた知識には一種のけだるい喜びがある」
「幻獣辞典」の序文。
そうそう、本を読む理由、仕事の文章は頭に入らなくてもしょーのない雑学とかが頭に入るのはけだるい喜びに浸れるからだ!
私がボルヘスを読むのは(たとえ理解できなくとも/^^;)、文章からボルヘスの喜びや愉...

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2011年5月23日

読書状況 読み終わった [2011年5月23日]
カテゴリ ●南米短編

台所を危ないからと遠ざけるのではなく、見て触って体験させて食べ物と触れさせることの勧めと、子供と作る料理レシピの本。
私は兼業主婦なので子供といる時間は少なくやることは多いです。長男が小さいとき食事の支度をどうしよう?と思っている時にこの本を読み、一人で遊ばせておくのではなく、一緒に台所に入れることにしました。だんだん長男も果物ナイフで野菜を切るようになり、長女もボールや水で遊んだり散らかしたり、次男は引き出しを開けて中のものを出したりしまったりと台所を楽しんでいるようです。できたての料理の鍋をあけた時の湯気に笑顔を浮かべたり、切ったばかりの野菜をつまみ食いしたりなど、子供にも楽しそうです。
なお後半の子供にも作れる料理レシピは、料理センスがほとんどない私には丁度良いです(笑)。

2010年5月23日

読書状況 読み終わった [2010年5月23日]
カテゴリ 育児
タグ

作者はフランス革命期に軍人・政治家として活動していた。


舞台はフランス社交界。過去愛人関係にあった公爵未亡人と子爵は「立派な人物」として信頼厚かった。しかし彼等はプライドと暇つぶしの為に周りの人達を操り、騙し、誘惑し、傷つけ、そして最後には自分達も破滅して行く。この一連の出来事を関係者達の手紙により綴られている構成なのだが、人の配置や手紙の構成が非常に巧み。作者自信も社交界に出入りしていた人なので臨場感があってオソロシイ。

2010年5月23日

読書状況 読み終わった [2010年5月23日]
カテゴリ ●仏蘭西文学

ほねはないか ほねはないか きょうりゅうのほねをさがす。 笑っちゃうくらい明瞭で豪快で前向きな絵本。 恐竜の骨を発掘し、博物館で組み立てる絵本で、働くことのすがすがしさも感じられます。

2010年5月23日

人と魔の戦い、人の情や愛、魔物と人間の中間にある生物たちのそれぞれの存在と戦い、心の影に現れる魔性を書いたSFファンタジー。最初は普通のファンタジーかと思っていたら、展開が本当に読めなくて、終盤は壮大になっちゃって、作者どう決着つけるんだ??ええ!?こうなるの?!とびっくりしまくりでした。
また中盤から終盤にかけての作者の絵柄の素晴らしいこと、衣装や情景の美しさにも見入ってしまいます。

★★★
人の心に神が生まれず、人と魔が分かれていない頃の物語。人々は魔を逃れるために両性体として生まれ、成長するとどちらかの性に決まる。
主人公はイズァローン王国の二人の王子。両性体のまま成長したティオキア王子は魔から人を救う運命にあったが魔王に取り憑かれ、人にとっては救いを与える救世主とも、また人を滅ぼす魔王ともなり、その間で苦悩する。両性具有というのが謎だったり鍵だったりするんだが、そのせいかメイン主人公なのに相当不安定。優しく気弱な王子で世界を滅ぼす魔王で人を惹き付ける救世主で、寂しがりやで頑固で精神分裂症で死にたがり、男は色仕掛けでたぶらかし、女からは精神の清さで聖者様と慕われ…、本人も苦悩しているが周り読者も大変だ。
従兄弟のルキシュは王となり人間としての治世に励むが孤独の中にいる。周りからは若輩王扱い、政略結婚相手の王妃には惚れ込んでいるのに心を許されず、しかも自分が選んだ腹心の部下はその王妃の引き裂かれた元恋人、そんな余計な事実をルキシュ自身も知ってしまい、彼らを傷つけたと罪悪感を持ったり。
半身のように求め合い惹かれ合いながらも、裁かれる者と裁く者として再会せざるを得なかった二人と、取り巻く人々。
ティオキアの従者カウス・レーゼンは、文官出身のくせに短気で腕っ節強くて口調ぞんざいで皮肉屋で、主君には厳しく心身強靭で開き直りが早くて前半おバカ担当で…と興味の尽きない人なんだが、「敬愛すれども盲従しない」の忠誠心で魔に惹かれそうになるティオキアを人として留め守る信念は一貫して貫き通し、究極の忠義と愛とを捧げる。前半のまだ未熟で目の前の出来事にピーピー騒いでた頃は物事に動じない人物を見て「こーゆー越えた人間に私もなりたい!」とか苦っていたけど、ある意味誰よりも越えた人になっちゃいました。まあ入れ込んだ相手が悪かった。両性体で魔王で救世主で(以下省略)を普通の人間としてすべてを受け入れようというんだからもう腹をくくるしかない。
ルキシュの政略結婚相手フレイア王妃は、王国を守る魔女であり花の女神であり軍神であり理知的な政治家。夫のルキシュからの求愛を初恋の相手を忘れず拒み(完全拒絶は最初だけで充分惹かれ合ってるんですけどね)、自分の勤めを果たそうとしながらも人間の情には不慣れな面を持つ。
またティオキアを魔王として求める魔物たち、その両雄が遠い過去にも魔王の左右で人を滅ぼしたグリフィン(人面ライオン)と、ゼーダ(乱れない人間は苦手らしくて強いんだか弱いんだか)。
救われることを求めながら現実的欲求に救世主を見捨てる群集たち。

<<以下ラストネタバレ>>。
世界は魔王の人としての愛により救われるが、ティオキアはその魂に魔を融合させて人外へと去る。世界は滅亡の危機にあったことも、それから救われたことも全てを忘れて新たな現実が始まる。
遠い時代で魔王=ティオキアが復活した時のためそれぞれ遺された魔王と人間の側近。グリフィンは「人と魔は永遠に追いかけっこ、完成しないからゲームは面白い」と嘯き、カウスは人でありながら不死の身となり、魔と人との新たな歴史を見つめそしていつかティオキアの全てを受け留めるため、果てしない未来に向けて力強い歩みを踏み出す…。
★★★

作者は基本設定だけ決めて話を流れるままに進めたらしいです。そこで...

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2010年5月23日

読書状況 読み終わった [2010年5月23日]
カテゴリ ●漫画
タグ

村上豊の挿絵が秀逸な一冊。

2010年5月23日

読書状況 読み終わった [2010年5月23日]
カテゴリ 昔話

ミュージカル「レ・ミゼラブル」関連でのご紹介。ロンドン、ブロードウェイ、東宝と総計30回は観ている演目です(笑)。
日本だとバルジャン、ジャベールが軸ですが、ロンドンやブロードウェイではその二人にテナルディエを加えて三角頂点という印象でした。また子役も子供ではなく一人の俳優として扱われてたように思います。

ミュージカルとしては音楽の使い方が秀逸で、同じ曲を曲調を変えて違う場面で使ってきます。
前半バルジャンが自分を信用した司教により過去を捨て生まれ変わる決意をした場面の曲は、後半信念を曲げたため自殺するジャベールの場面で使われます。
また、学生たちのバリケードに参加したバルジャンが娘コゼットの恋人マリウスを想い「若い彼を家に帰してください」と祈る曲は、その後学生たちが死滅したときに鎮魂歌のように流れます。

さて。
30回も見るとお茶目なハプニングも多々目撃しましたよ(笑)。
 女優の叫び声が機械音になってたり、
 小道具落っことしたり、
 歌詞間違えて即興で作り変えちゃったり、
 出演者が隅っこで即席小芝居してたり、
 出演者が張り切りすぎてデュエット相手がちょっと困ってたり、
 普段は「ラララ~♪」と綺麗にデュエットする場面で、一人が音を外したため、デュエット相手も「ら、ららら、ら?」と困ってるのが客席にも伝わってきたり…
^^;)

2010年5月23日

読書状況 読み終わった [2010年5月23日]
カテゴリ ●舞台

ボルヘスを館長として編纂された文学シリーズ、「バベルの図書館」の一冊。自分が好きな作家の好きな作品だけを集めた文学シリーズを出すとはなんと贅沢な読書家なのでしょう。
イタリアから刊行されたシリーズですが、青を基調とした装丁が美しく、並べると美術館のようです。この「パラケルススの薔薇」には、ボルヘスの短編とインタビューが入っている。

2010年5月23日

読書状況 読み終わった [2010年5月23日]
カテゴリ ●南米短編

ブラジルがポルトガル植民地から独立し、王制から奴隷解放を経て共和制となった19世紀終盤、
ヨーロッパの支援を受けた新しい共和国を作ろうという海岸側の都会と、旱魃になれば1年間雨が降らず飢餓と疫病と猛獣と盗賊と鎮圧軍の横暴に蹂躙される奥地との隔たりから起きた実際の事件、
「カヌードスの叛乱」を基にした小説。


追記:
三読目のレビューも書きました。
https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4105145045#comment

===
旱魃の続くブラジル奥地に神の言葉を説き禁欲的な生活をする男が現れる。
彼はコンセリェイロ(カウンセラー、助言者の意味)と呼ばれ、彼の元にはあらゆる人民が集まる。
貧しい者は救世主と敬い、
富を有するものはそれを捨て、
世間からはじかれた不具者たちは拠り所として、
そして犯罪者や盗賊たちは天使に触れられたように人生を改め彼に帰依する。
彼らはカヌードスの土地を占拠し人民は3万にも膨れ上がった。虐殺と強姦の指示者と生き残りが慈しみ合い、憎み合い殺し合った者、差別した者とされた者とが共存しあい、初めての安定の場所を得る。
神の言葉を信じる彼らは、共和国そのものを「アンチ・キリスト」呼び敵視する。神との約束である結婚を法律で定めることに激怒し、土地を休ませると言って農園を焼き、税金制度に真っ向から逆らう。

危険を覚えたブラジル政府は軍を出すが反撃される。ただの狂信者と貧者の集まりと思っていた彼らに撃退された政府の間では、背後に外国勢力や、王政復古や、地方貴族などの反乱分子が付いているなどという憶測と政治的計算が飛び交う。
さらに反政府的思想で勝手に共感する外国人の無政府主義者、巻き込まれた新聞記者、男性社会に流されてきた女、教会からの破門の惧れも超えて協力する神父などの思惑が交差する。

ブラジル政府は正規軍を出す。
“これまで誰も助けを差し伸べてくれなかったから、お互いに助け合いながら神を愛して暮らそうとここに集まった人たちを皆殺しにしようとしているのだ”
“コンセリェイロと出会った時、これで自分は生涯血の匂いをかがずに済むだろうと思ったものだったが、それが今や、それまでに経験したどれよりも酷い戦いに巻き込まれてしまっているのだ。父なる神様はこのために彼の罪を悔い改めさせたんだろうか?人を殺し続け、人が死んでゆくのを見続けるために?そう。そのためだったに違いない”
コンセリェイロ側は、男たちは実戦部隊として、女たちは政府軍兵士を引き千切り噛みつき殺し、子供たちは蟻や毒を政府軍に投げ入れ、敵が地獄に落ちるように裸にして性器を切り取り死体は木に吊るし、全員が戦いに挑む。
政府軍は、外国勢力が後盾についた最新の武器を持つ祖国の敵と戦いに来たつもりが、普通の貧しい民衆との原始的な戦いに甚大な被害を出し、集落に大砲を撃ち込み女子供を狙撃し捕虜の首を斬り晒す。
“人殺しを平気でする女や子供をそれゆえ殺さなければならず、しかもそいつらがイエス様万歳などと言って死んでいく、そんな相手と戦うのがどんな兵士にとっても決して楽しい物ではありえない”

泥沼化する戦闘が続く中コンセリェイロ側は1年間正規軍を跳ね返し、それでも最後は壊滅された。大地には三万の死体が溢れ、禿鷹や山犬たちが饗宴する。

しかし民衆たちの間にコンセリェイロへの崇拝は変わらない。コンセリェイロの死体を沈めた海の沖合へは、その後も巡礼者たちが訪れる。
===

登場人物たちはそれぞれが本当に魅力的。
コンセリェイロ側に集まったのは、
ただ神の言葉だけを信じる側近ベアチーニョ、
初めて自分を人間として扱ったコンセリェ...

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顔も知らない父親、ペドロ・パラモを探しに来たファン・プレシアドがたどり着いたのは生者と死者の交わる町だった。町をさ迷ううちにファン・プレシアドも息絶え、墓の中で死者たちは囁き続ける。
ペドロは冷酷な地主だった。町は発展するが、ペドロが唯一欲したのは、幼馴染のスサナだけだった。30年ぶりに再会したスサナは精神に異常をきたし、父親とは近親相姦にあった。スサナを手に入れたペドロだが、二人はまともに言葉を交わすことも出来ない。スサナの死後ペドロは町を荒むに任せる。数年後、ペドロの私生児の一人がペドロを殺す。ペドロは乾いた石の様に大地に倒れ、その数年後、ファン・プレシアドがペドロを探しに町へやってくる…
===

文学の凄さが伝わってくる傑作です。過去と現在が交わり死者と生者が語らう幻想的な筆運びの中にメキシコ社会が見えてくる作品。作者のルルフォはメキシコ革命の混乱で土地と家族を焼かれ、生涯2冊の本しか残していませんが、その2冊をして史上最高の作家。

2010年5月26日

読書状況 読み終わった [2010年5月26日]
カテゴリ ●南米短編

作者ファン・ルルフォはメキシコ革命の混乱で土地と家族を焼かれ、生涯2冊しか本を残していません。「燃える平原」は、メキシコの下級層の厳しい現実をそのまま切り取ったようなを短編集です。

===
「口から流れる泣き声は、岸を削る濁流の音に似ている」
唯一の財産だった乳牛を洪水で失い為す術もない家族
 / 俺たちは貧しいんだ

「体に腐った液がたっぷりと詰まり、それが手足の裂け目からじわじわと染み出した」
死に面した男を連れ巡業に行く男の妻と男の弟。
 / タルパ

「あそこは悲しみの根城だ。笑う人間なんていやしない。板でも貼り付けた見たいにまるで表情ってもんがないんだ」
死のイメージしかない町
 / ルビーナ

「おまえってやつはこんなちっぽけな希望もわしに与えちゃくれなかったな」
山賊に身を落とし死に掛けている息子と、彼を背負って町の医者へ向かう父親の道行き
 / 犬の声は聞こえんか

2010年5月26日

読書状況 読み終わった [2010年5月26日]
カテゴリ ●南米短編

★★★
同性愛者とテロリスト。まったく違った二人の男が牢獄で同部屋になる。同性愛者はテロリストに夜な夜な映画のストーリーを言って聞かせる。主な筋はそれだけなのになんと惹きつけられる小説。
二人の会話と、刑務所の報告書だけで語られていきます。限られた時間と空間だからこその濃厚さ、分かり合えた事と合えなかった事、夢と現実。
★★★

映画とミュージカルも観ました。映画では同性愛者役のウィリアム・ハートが賞を取っています。
ミュージカル版はちょっと賑やか過ぎたかな。二人の男が出会って、反発して、仲良くなって、一人の男が殺され、ラストは死んだ男がむっくり起き上がって歌って踊ってお終い、って感じ。こう書くとホラーかコメディのようだけど本当にそんな感じなんですよ。小説では閉じられた空間の濃密さが舞台では開かれて、小説では決して語られなかった「愛している」の言葉が軽く感じてしまいました。

2010年5月26日

読書状況 読み終わった [2010年5月26日]
カテゴリ ●南米長編

ノーベル賞作家であるガルシア=マルケスの独裁者小説。

===
架空の小国に200年の寿命を持ち君臨し続ける大統領の織り成す奇行と悪行とそして孤独。氾濫を企てた将軍は丸焼きにし、インチキ籤に関わった二千人の少年を殺す。美女は月食の中に消え、妻子は犬の群れに噛み殺され、娼婦だった母親の屍骸は聖女とされる。
そしてただ君臨する大統領を操るように権力をほしいままにする部下たちの恐怖、猜疑。
大統領が自分の周りの嘘を感じ真実を知ろうとするが、それを探りに来た神父は側近たちに消されかける。
君臨しつつも利用され、それでも絶大な権力をもつ大統領が孤独かつ滑稽。
===

6つの章からなりたち、そのほとんどは大統領の死体描写で始まります。
大統領の死の噂を聞いて大統領府になだれ込んだ6人の民進がそれぞれ大統領時代を思い起している構造のため、同じ事柄何度も語られて行きます。
目くるめくような魔術的レアリズム小説。

読書会のために再読しました。
https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/408760621X

2010年5月26日

読書状況 読み終わった [2010年5月26日]
カテゴリ ●南米長編

チリの作家の幻想文学。雑多で卑猥で、時系列も語られる内容もめちゃくちゃ。訴えかけるような言葉使い、同じ言葉の繰り返しで呪術的形式で、現実が意味をなさなくなる物語世界が構築される。スペインでは発禁処分となった。


===

ムディート(聾唖者)は修道院に隠れ住む。かつて彼はウンベルトという名を持ち、貴族議員ドン・ヘロニモの秘書だった。ヘロニモの妻イネスには魔女のような乳母ベータ・ポンセがいる。ある晩ウンベルトはヘロニモとなってイネスと交わり、彼女は混沌の象徴のような畸形児”ボーイ”を産む。ヘロニモは嫡子のために不具の館を作り、捩れた館には世界中から不具者が集まる。その中の医者に体の大半を奪われ別人となったウンベルトは、ムディートとなり修道院に隠れ住む。ヘロニモは不具の館に取り込まれ、修道院にやってきたイネスとータ・ポンセは同化する。そしてムディートは完全に消滅する。

===


 ↑ おそらくこういう話だと思うけれど、最初にも書いたとおり内容めちゃくちゃで現実が意味を成さない小説なので違ってるかもしれません。

2010年5月26日

読書状況 読み終わった [2010年5月26日]
カテゴリ ●南米長編

日本を代表する少女漫画と言っても過言ではないでしょう、素人の岡ひろみが高校でテニス部に入り、世界で通用するまで。
かなり熱く強く台詞もキャラクターも印象的。

 平凡でテニスが下手なところがかえって何にでもなれると、コーチの激しいしごきに応え成長していくひろみ。
 女子テニス部長で学園中の憧れ竜崎麗香。あだ名はお蝶夫人。(コーチからは「お蝶!」男性部員からは「お蝶さま」とかバリーエーションがあるのね/笑)容姿端麗頭脳明晰スポーツ万能高貴で家柄もよい…という、「エースをねらえ」を超えて少女漫画の有名人物。
 ひろみが恋心を抱く藤堂さんは、男子テニス部エースで生徒会長(生徒会副会長はお蝶さま)。ひろみを見守りつつ包みつつ、高校生ながらかなり器が大きい。
 男子テニス部長は尾崎さん。自分より強い部員の藤堂さんと親友でいたり、女性として完璧過ぎ高嶺の花過ぎのお蝶夫人を普通の女性として恋したり、なかなか大したもんだと思う。
 新聞部千葉さんは藤堂さん尾崎さんの親友で漫画ではひろみの成長記録係的役割。なので部員でないのに合宿にいたり、公立高校なのに校内新聞売り上げを気にするのは不思議(笑)。
 他校の緑川蘭子(コーチからは「お蘭!」)は始めはお蝶さまの、そしてひろみのライバルとして切磋琢磨し合う。
 そしてテニス部の鬼コーチ宗方仁。ひろみを見出し激しく特訓する。テニス部員には厳しくも揺るぎなさで尊敬されている。哲学的で熱いセリフはこの漫画の方向性を示している。自分の持つ技術と理想のすべてをひろみに叩き込むコーチと、それに応えるひろみの熱い師弟愛は全編通してのテーマの一つ。

第1部はド素人のひろみが日本のエースに成長するまで、そしてある人物の死による哀しい別れ。(この人物の死はあまりにも有名で当然みんな知っていると思って知人と話をしていたら、その人はこの人物が死ぬということを知らず、痛恨のネタバレをしてしまったという苦い思い出 (ノ▽`)があるので一応伏せておきます)
第2部は、その哀しい別れにより激しい喪失感に陥るひろみが、周りの手助けもあり再起、世界のエースへ向かう…という流れ。ひろみは本当に周りの人間に恵まれています。それだけのものに応える力がひろみにあるのでしょう。

さて、私が漫画をちゃんと読んだのは大人になってから。作者の山本鈴美香さんがその後連載途中の漫画を中断し宗教をされている、ということを知ってからでした。
それを知って読んだせいか、第2部は作者の思想の変化が表面に出てきつつある気がする。
第1部でも、テニス合宿でお寺で座禅したり、禅問答や哲学的セリフがあったのですが、それが漫画にうまく昇華され、漫画の質と熱を高めていたと思います。
それが第2部になると、死んだ人物が神格化されていき、1部でも見え隠れしていた作者の父権主義や宗教思想が表面化していく感じ。その人物の死に一番ショックを受けたのは作者自身で、第2部はひろみというより作者自身が立ち直るために必要な作業だったのかなとも思う。

それでもやっぱり名作であることには変わらないんですけどね。
宗方コーチが、ひろみと藤堂さんの恋愛を「このままでは人間としてもテニスとしても成長できない。女の成長を妨げるような愛し方はするな」と一時預かり(禁止ではない)、その後成長を認め解禁するというのは、他の作品でもよくテーマになる「芸術(この場合はスポーツ)か、異性との愛か」という問題の応えの一つでしょう。
テニスの勝敗を決めるのは長い試合の中のどれかの1球であり「この一球は絶対無二の一球なり」(実際のテニス選手の言葉より)の言葉は、今のチャンスを生かせ!全てに手を抜かず向かえ!とはまさにスポーツを超えて通じる。
自分が選手であることを辞め指導者やテニス役員...

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2010年5月27日

読書状況 読み終わった [2010年5月27日]
カテゴリ ●漫画

あまりにも有名なので説明不要ですね。
私は子供の頃は表面的な華やかさに目が行ってしまったのですが、社会人になると、権威的な上司と反抗的な部下に挟まれる中間管理職の女性としての苦悩と掴みとったものが凄いです。いや、私は絶対ムリ、半日で逃げ出すわ ´△`)


歴史的下調べもばっちりで、これを読んだ後は史実が知りたくなり調べまくったものでした。

2010年5月27日

読書状況 読み終わった [2010年5月27日]
カテゴリ ●漫画

時代はフランス革命期、貴族の孤児マリーベルが明るく前向きに生きていく少女漫画。
フランス革命とはいっても、がっつり下調べしているベルバラとは違い、時代的展開的に矛盾やらツッコミ甲斐やらがありすぎるんですが、そんなものは吹き飛ばすようなパワーがあって引き込まれます。名作とはやっぱりパワーのある作品ですね。

2010年5月27日

読書状況 読み終わった [2010年5月27日]
カテゴリ ●漫画

三国志は小中学生から嵌りまくったものでした。
人形劇、京劇、映画と沢山観たり読んだりしましたが、やはり横山光輝版は見事。一見淡々として押し付けがましくないので読み手の想像が入りやすい。
三国志に関しては他の本でも少しずつ書く予定です。

2010年5月27日

読書状況 読み終わった [2010年5月27日]
カテゴリ ●漫画

私の永遠の憧れルパン三世。テレビアニメではお間抜けで人がいい部分もありますが、原作だとかなり厳しいです。銭形とも命掛けのやり取りです。ルパンと次元は相棒で、五右衛門は弟分の感じでしょうか。ルパンも次元も五右衛門が泥棒(クズ人間)になるには狡さが足りないって言っています。五右衛門も泥棒稼業に自分の欲を出しませんね。でもそんな五右衛門だからたまにどうしてもあれが欲しいんだ~~となると(叔父さんの敵とか、魔剣とか)、ルパンが思いっきりフォローしてあげます。
漫画としても、連載当初は、「不二子」とは出てくる女に使われる記号的名前だったり、台詞がまったくなかったりとかなり実験的です。
漫画の終盤はかなりシビアな展開で
《以下ネタバレ!!!》

ルパンが片目を失ったり、そしてラストではルパンたちは銭形に爆弾島に呼び出され爆死します。
ラストを読んだ後は本気で泣きました。
しかし私としては、作中に出てきたルパン一味の本拠地「奇岩城」に彼らは潜ったと思いたい!「ルパン小僧」というルパンの息子の短編集もあるしね。
《ここまでネタバレ》

印象に残ったキャラクターたちの行動や台詞。

次元が不二子のことを「ルパンはあんたに惚れているが信頼はしていないのさ」「そうね…」アニメとは間逆のルパンの厳しさが出ていますが、こういうところが好きです。

五右衛門
(自分の師匠たちから離れルパンの仲間になるところ)「あなた方には経験したという過去があります。私にはこれから経験するという未来があります。分かりますかな、この差が」
(タイムマシンに乗ったらどうするか?の問いに)
「俺を身ごもった瞬間のお袋に合って言うだろう、俺を産まないでくれと」この台詞は悲しい。ラスト近くで、この後の展開と重なって泣けてきた台詞です。

銭形
「俺はお前(ルパン)を殺したいほど憎んでいるんだ!」ルパンが自分を認めてるんだろう、と言ったことへの返事。命掛けの真剣勝負を繰り広げる二人です。
「英語は得意なほうなんだけどなあ…」英語は得意なほう、ってことは他にも数カ国語しゃべれるってことですよね。アニメではお人よしですが、漫画ではハードな人です。世界を飛び回ってるんだから、頭脳もかなり良いはず。
そういえばルパン三世とは大学の先輩・後輩の関係ということも判明。

2010年5月27日

読書状況 読み終わった [2010年5月27日]
カテゴリ ●漫画

文庫本でご紹介。
アメリカに暮す主要人物たちの非日常的日常生活。
相次ぐ身の回りの不幸にすっかりグレてしまった元医者のカーター、純潔マフィアに生まれながらも牧歌的生活を維持しようとする天才青年ジェームス、アフリカで自然と育ったアンディ、小粒でピリリと辛いアンジェラ、死そのもののような殺し屋サロニー、怖いもの知らずの警官フロイド。
20年も続くと絵柄がかなり変わり、最近ではすっきりウツクシくなっているけれど、私は中盤のべったりした頃が好きです。作者のコマには納まりきれない情熱が感じられます。
台詞もとても印象的なものばかり、そして死を含む別れの場面や、人の心の深遠を描く幻想シーンはどれも秀逸。

印象的な台詞をいくつか。
「その体に熱量がある限りは闘え」
「宇宙では惑星の死滅は平凡だ、生命は儚い、けれども情熱に満ちている」
「認識しなければいけないのは彼らが”彼ら”ではなく我々ということだ」

2010年5月27日

読書状況 読み終わった [2010年5月27日]
カテゴリ ●漫画

少女マンガの超王道。ここまで有名作品だと説明しづらい…。
永遠を生きるヴァンパネラ一族の若いエドガー、妹のメリーベルへの慕情、死ぬものへの眼差し、共に長い時を生きる友人アラン。
すべてのコマが美しく叙情的。

ラストでの疑問。
エドガーとアランが火に包まれて終わるけれど、私は何の疑問もなく二人とも死んだのだと思っていた。しかし友人は「アランは死んだだろうけど、エドガーは生きている!」と断言。そうだとするとエドガーは一人でまだ旅を続けてるのだろうか。それはそれで寂しいような、でも希望があるような。

2010年5月27日

読書状況 読み終わった [2010年5月27日]
カテゴリ ●漫画
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