初公開「横田めぐみさん奪還交渉記録」。内閣官房参与の飯島勲さんによる、北朝鮮による拉致被害者問題解決のための行動記録です。北朝鮮に単独乗り込み、先方の重要人物と交渉を行われた過程を詳しく書かれています。飯島さんが何をしに行かれたのか、何を目的とし、何を成し遂げられたのか。交渉事というものの難しさと、それでも少しずつでも前に進める大切さを感じました。
「関東大震災100年のリアルなシナリオ」。これからの地震の発生可能性等については巷間多くの場所で書かれているものです。実際に発生した場合に何が起こるのか、安全と思われていたタワーマンションの危険性など、新たに注意するべきものを知ることが出来ます。いざという時の心の準備は出来るだけしておいたほうが良いと思います。

2023年9月18日

読書状況 読み終わった [2023年9月18日]
カテゴリ 文藝春秋

特集「病と生きる」。小林先生の書かれているとおり、普通生き物に病は無く、その前に死亡するのが通常ということに気付かされました。死ぬ時期が遅くなった人間という生き物にとって、病はそれと付き合って生きていかなければならないものであること。その実体験を識者が語られ、その世の中について論じられています。これからも多くの人々が直面する事実に対しての考え方についての自問を投げかけるものとなっています。
特集「コンサルの光と闇」。確かにコンサルというのはどういったもので、その使い方、付き合い方に悩むものがあります。アドバイスであるならコンサルよりも先達のほうが有益ですし。そんなコンサルの昔と今について知ることができます。

2023年9月17日

読書状況 読み終わった [2023年9月17日]
カテゴリ 中央公論

日々の暮らしの中で出会う小さな気付き等について、「聞いてよ」「そうだよね」と友人と語り合うように語られる文体に癒されます。本書では著者の気になる小さなことですが、確認しないと落ち着かないようなものについて、著者自身の体験を書かれています。なんとなく気になることを、いつでも大丈夫と、小さいことだからと、確認することを後回しにしてしまっていること。誰しもあるのではと思います。そして誰しもが実は無意識に確認を行っているのでは。そんな日常の確認行為について意識を向けることが、こんなに楽しいものなのだということに、改めて気付かされる楽しい読書でした。

2023年9月17日

読書状況 読み終わった [2023年9月17日]
カテゴリ エッセイ

第169回芥川賞「ハンチバック」。障害を持たれた方の描写の生々しさに圧倒されるものでした。評価の難しさを感じながらも、自分の住んでいる環境と違う世界に対しての狭量さを恥ずかしく思いながら、その中でどのように多様性を夢見ていけば良いのか、結局一回喧嘩しかないのだろうかとか、色々と考えながら読ませていただきました。
黒柳徹子さんの「「新しい戦前」なんて嫌ねッ」。戦争によって人々が被ること、それを通じての戦争を忌避する感情。今までそれが肌感覚で分からず、酷く言ってしまえば何故戦争をしてはいけないのかが理解できない悩みがありました。黒柳さんの言葉を読ませていただいて初めて理解できたように思います。

2023年8月24日

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カテゴリ 文藝春秋

特集「戦争が変える世界秩序」。ロシアとウクライナの戦いが終局の見えない状況になり、また中国などの野心にも怯えることが日常に、生活の一部になりつつあります。現在の世界について、また今後の予想、過去との比較など、多くの著名人による戦争による変化について書かれています。ウクライナの今後もありますが、もっと大きくその後の世界まで影響が及ぶ事態になっていること、その中で力を持ってくる国について、それゆえの民主主義の正義だけではまとめられない世界、その中で日本はどうするべきなのか。多くの視点から今後の世界について知見を得ることができる内容でした。
特集「信仰なき時代の仏教」。お寺の存在が過去より薄くなっていることを懸念する風潮に、そうではないことを各関係者の方々が述べられています。日本におけるお寺の、仏教の存在の昔からの姿を知るにつけ、その必要性が人というものに結び付いているが故に、決してなくなるようなものではないというご本人たちの泰然とした姿にうたれるものがありました。

2023年8月19日

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カテゴリ 中央公論

特集「維新の正体」。昨今の選挙で存在感を増している日本維新の会。もともとの大阪維新の会があっての力ですが、それゆえの困難さ等について語られています。維新を分析された論、第三極の政党について、維新と闘った候補者、与党自民党から見た維新など、複数の視点からの維新の会について知ることができます。波に乗っている状態ですが、その波に呑まれず冷静な視点で現象を見ることの助けになりました。
特集「社交の復権」。コロナにより人と人の交わりが減少しました。飲み会について、飲み屋さんなど、マスクの社交的な効用、人のつながりについて。社交のあれこれについて考えられ述べられています。

2023年7月16日

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カテゴリ 中央公論

現代の知性24人が選ぶ「代表的日本人100人」。現代の知者の方々それぞれに5人の代表的日本人を選んでいただき、その紹介をされるという内容です。様々な背景を持つ方々による、その方ならではの選出であり、それぞれの考え方から選ばれたバラエティ豊かな紹介だと思いました。歴史的に著名な人もあり、その道の人なら知っているという方もあり。元ネタである内村鑑三さんの「代表的日本人」の選び方とも違った、それぞれの方々の代表的に対する考え方、見方もあって面白く読ませていただきました。
対談が3本。車椅子テニスの国枝さんと大阿闍梨の塩沼さん。養老孟司さんと成田悠輔さん。藤原ヒロシさんと斎藤幸平さん。一見領域の違う人同士の対談であり、そこから生まれる内容が面白かったです。こういうことができるところに文藝春秋の強さがあるのだと感じました。

2023年7月28日

読書状況 読み終わった [2023年7月28日]
カテゴリ 文藝春秋

前2巻で一旦完了した物語。少女から大人への成長の物語として。王獣と呼ばれる強大な生き物を操る能力を開発しながらも、政治的に利用される恐れとの狭間で悩みゆく物語として。ひとつの国の中で重要なキーパーソンとなっていく中で、正解の無さに悩む物語として。心ならずの面もありながら、前巻では流れを大きく変える重要な行動を起こし、多くの人を助けた主人公。その10年後から物語は動き出します。
この巻では、平穏に留まっていた主人公の世界が、その国をめぐる周囲の状況によって、否応なしに渦に巻き込まれようとしていくように物語が動いていきます。禁忌を犯さずに現在を止めておくことが正解なのか、止めようのない大きな流れに巻き込まれてしまうのか、自分からその流れに乗り込んで不幸を防ぐことができるのか。今後、主人公が幾多の決断に迫られると思いますが、その時どのような答えを出すのか。その難しい問いの予感の第二部開始です。

2023年8月28日

読書状況 読み終わった [2023年8月28日]
カテゴリ 小説

大阪で日雇労働者の街として有名な西成について。釜ヶ崎、あいりんと呼び名はありますが、本書では西成の名で統一されています。そこに現在生きている人を訪ねてはインタビューを行い、その街の姿を浮き上がらせていく、そんな作業から見えてくるものを書かれています。日雇労働者を手配する人や、高齢化に伴い必要になるサービスに携わる人々、街の過去に関わってきた人、過去から現在も関わっている人。様々な人々がこの独特の世界の中で生きているということが実感できます。インタビューなので、聞き出せない部分もあり、また真実かどうか分からない話もあったりすると思いますが、重たい口をどうにか開いて聞き出す著者の努力を感じる内容でした。

2023年9月4日

読書状況 読み終わった [2023年9月4日]
カテゴリ 社会・文化

直木賞受賞作「暗殺の年輪」はじめ、それまでに直木賞候補となった作品などその周辺の作品をまとめられた短編集です。この時期ならではの著者の作風を感じることができます。女と男の関係、それに感情的に振り回される情景、他人の心の分かりにくさとそれ故の不幸、全体を通して暗い印象の中に、そんな人間らしさを感じる作品達です。「黒い縄」「暗殺の年輪」「ただ一撃」と、闘い(というか喧嘩)に向かう男と、それを見ている女性との関係を。その世界の虚しさを感じられました。「溟い海」「囮」はそれぞれ人間の持つ暗黒の一面とその魅力を感じられるものでした。
形の見えないものである心の動きへの描写がとても魅力的で、引き込まれるところがありました。

2023年8月1日

読書状況 読み終わった [2023年8月1日]
カテゴリ 小説
読書状況 積読

総力特集「100年の恋の物語」。この100年を恋をテーマに振り返る特集という意図だと思います。様々な立場、皇族、芸能人の方々、歴史上の人物など。その恋について語られています。思ったよりは楽しんで読んでしまいました。社会的に表に出てくることだけでなく、こういった裏というと語弊もあるかもしれませんが、裏の事情も影響力を持っているし、むしろそれで人間が動いている面もあるのだなと考えさせられました。
「猿之助ショック 歌舞伎を守れ」。ニュースで大きく報道された市川猿之助さんの事件。その人物について2方が語られています。その人物について語られることを読むことから、テレビ等で良く知ったように感じられていた人について、改めて見直すことになったと思います。
三浦しをんさんの小説「ゆびさきに魔法」。最終回。ほのぼのと毎回楽しみに読ませていただいていました。予想外の刺激等は無いところが、安心感持って読むことができ、最後までその雰囲気を維持したままで、安心感から入り込んで読むことが出来ました。

2023年6月24日

読書状況 読み終わった [2023年6月24日]
カテゴリ 文藝春秋

特集「安倍晋三のいない保守」。安倍元首相が亡くなられて早1年が経とうとしている時間の速さに驚きつつ。安倍さんを知る政治家の方々の思い出、そこから見える人物像、政治家の姿なども見え興味深く読ませていただきました。保守とはいったい、という基本的なことがはっきりしなくなりつつある時代の流れに考えを巡らせながら。
「AI時代のことば力」。文章までも人間でなくAIが書いてしまう時代。その文章と、人間の書くものの違いについて論者が語られています。一見無駄に見えるところにヒントがあるのだということを感じながら読みました。

2023年6月17日

読書状況 読み終わった [2023年6月17日]
カテゴリ 中央公論

特集「東京再膨張」。コロナ禍によってその流れに変化が生じたように見えたのですが、収まるにつれて元に戻ろうとしている東京への人口集中。その現象について、様々なバックグラウンドの方々が思うところを述べられています。統一されたテーマというよりは、東京再膨張の現象に対してどのように考えたら良いのか、その多彩で多様な見方があることを感じることができます。
特集「ノンフィクションの未来」。ノンフィクション華やかな時代から現代の状況。作家の考えから、仕掛け人まで。作り手の方々の意見を知ることができます。
特集ではないのですが、中国や韓国という無視できない隣国について語られたものが目立ちました。直近、解決しなければならない大きな問題であり、それに目が向けられているのを感じます。

2023年5月20日

読書状況 読み終わった [2023年5月20日]
カテゴリ 中央公論

朝日襲撃「赤報隊」の正体。日本のテロ事件について、分かっていない部分、独自取材によって見えてきた部分、かつてそこで何があって、誰が絡んでいたのかの正体に迫られています。テロに限らず、事件というものがどのように発生するのか。その背景の一つの例として知ることができます。
中国、ロシアに関するものがいくつか。ロシアの歴史認識、CIA長官の中露の現状に対する見解など。覇権を狙う大国について、各論者の見方を知ることが出来ます。

2023年5月25日

読書状況 読み終わった [2023年5月25日]
カテゴリ 文藝春秋

いつからか世間に現れ、いつのまにか大きな影響力を及ぼす存在となった「ファスト」現象。時間をかけて消費するもののうち主として文化的なものを、手っ取り早く吸収するための方法論には惹かれるものがあります。本書ではそのファスト現象が蔓延る世の中について「ファスト教養」なるものについて書かれています。教養というファストとは相容れなさそうな領域にも表れたこと、その実態として影響力を発する著名人の存在、それを得ることから何を欲しているのかなど、この分野について分かりやすく理解することができます。そしてそこから導き出される功罪について。ただ単に良しとして持ち上げるのでもなく、嫌悪し否定するのでもなく、この世の中の現象に対してどのように対応したらよいのかについての著者の見解に考えさせられること多々ありました。この現象が時代の必要性として現れたことを知り、それに支配されるのではなく、理解して付き合うという知性の使い方から、教養というものについての理解が深まるところを感じました。

2023年7月8日

読書状況 読み終わった [2023年7月8日]
カテゴリ 社会・文化

戦中から戦後にかけて、人権という概念が国際社会でどのような位置づけをされてきたのか、その変遷を述べられています。そもそも人権という概念はどのように現れたのかから始まり、それがどのように取り上げられ、そして利用されたのか。その経緯が原因となって、現在の国際社会での人権の扱われ方の現実と問題点を説かれています。自由と平等のように、本来的には相反してしまうような両義性を持った人権。それゆえに、それを利用し戦った大国によって、その普遍化の浸透は簡単にはいかないものがありました。誰もが納得するような落としどころの難しいものでもあります。ただ、それでもそれが尊いものであり、普遍的なものであるということが重要であり、それが悲劇を防いできたことも真実です。まだまだいばらの道ですが、屈することなく諦めることなく歩んで行かなければならないものであることが力強く書かれています。

2023年5月8日

読書状況 読み終わった [2023年5月8日]
カテゴリ 政治
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