女王フアナ (角川文庫 オ 8-1)

  • KADOKAWA (2004年2月1日発売)
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狂女王フアナ・ラ・ロカとして名高い女性の伝記。
スペインを統一したイサベル女王とフェルナンド王の娘。
ハプスブルグ家の王子で美男で知られた18歳のブルゴーニュ公フィリップと1496年に16歳で結婚し、数年は最高に幸せになったが…
兄姉とその子が死んだためにスペインの相続権が回ってくる。
母はカスティーリャ女王のまま、父はアラゴン王のまま、結婚しての共同統治だったので、カスティーリャの相続権は父ではなく娘にあったのだ。
夫婦でスペインを訪問した後、危険を避けるために、夫と一緒の帰国を許されなかった1年半の辛い時期。
夫の女遊びへの嫉妬の苦しみ。
政治の実権を奪おうとする実父や夫や家臣達。
その不安定さから感情を爆発させ、時にうつ状態になる。
1506年、スペインに入場して正式に女王となるが、夫が疫病で急死。棺を連れて2年も荒野をさまよったという伝説で有名だが、これは主に疫病を避けての移動で、夫の蘇りを願った狂気の有様というのは作り話らしい。夫が希望したグラナダの王家の墓にはすぐ向かえない状況だったのだ。
3歳の次男フェルディナンドと取り残され、翌年には末娘カタリーナを出産。実父はイタリアのナポリ攻略中。貴族達は私欲にかられて、カスティーリャは大混乱。権力争いの果てに、トルデシーリャス城に幽閉されたままになることに。
1516年には父が亡くなるが、その事実も知らされなかった。
民衆は親王的でフアナの狂気を嘘っぱちと思っていたので、名目上はフアナと息子カルロス1世の共同統治となる。
1520年、息子カルロスに対する反乱軍に担ぎ上げられる。
信頼する女官長が恋仲になったフランドル人を城主にしたいと願ったための混乱もあり、これは悲恋に終わる。
当時どこの宮廷を見回しても類を見ないほどの美貌だったフアナ、若い頃にはにこやかで明るく、夫と愛し合い、10年の間に6人の健康な子を産んだという、王妃には稀な幸福があったのに。
幽閉された城砦の管理人として高潔さで有名な人物エルナン・ドゥーケが派遣された時期2年間はかなり落ち着いていたとか。これってビュジョルドのファンタジーのモデルですね。そのまんまじゃないけど、モチーフが。
ドラマチックな生涯です。
フアナの家族の中で、兄姉は若くして亡くなり、妹カタリーナはヘンリー8世に離婚されている。ポルトガルに嫁いだ妹と、フアナの末娘だけは幸福な結婚をしたらしい。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史もの
感想投稿日 : 2010年6月26日
本棚登録日 : 2010年6月26日

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