ペネロピアド (新・世界の神話)

  • KADOKAWA (2005年12月1日発売)
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本棚登録 : 64
感想 : 12
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オデュッセウスの妻ペネロペイアを新解釈で描いた凝った構成の作品。ホメロスの叙事詩の中では、トロイア戦争に行ったきり帰らない夫を待ち続けた貞節な妻として描かれているペネロペイア。
戦争の原因となった美女ヘレネとは従姉妹にあたるのですが、まったく対照的。
20年も主のいない王国と幼い息子を守り続けた女性の側から見た真実とは…?
オデュッセウスが帰国した途端、宮廷で王位を狙っていた求婚者だけでなくペネロペイアの女中達も処刑されてしまったことに注目、彼女たちはペネロペイアのスパイだったという解釈で、身分の違う女性同士の葛藤も含めて描いています。
母系社会から嫁とり婚へと変わっていく時代が神話の背景にあるというのは、そうかも知れませんねえ。
黄泉の国に行ってからも美貌を誇り、男性の魂を引き連れて歩くヘレネには笑ってしまいます。
アトウッドはカナダの作家で、一筋縄ではいかない語り部ですね。やや実験的とも言える作品。
この本は2005年11月世界同時刊行「新・世界の神話」〜超一流作家による神話の書き直しを毎年数点ずつ出していこうという壮大な企画だそうです!

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 海外小説
感想投稿日 : 2006年7月31日
本棚登録日 : 2006年7月31日

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