THE HOURS―めぐりあう時間たち 三人のダロウェイ夫人

  • 集英社 (2003年4月4日発売)
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本棚登録 : 231
感想 : 17
3

カニンガムがヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」に触発されて描いた、時代を越えて交錯する3人の女性のある日の物語。
こういう複雑な構造は、近年のアメリカ文学の傾向にあるらしいです。

一人目は作品を書いていた頃の原作者のウルフ。鬱病の治療のためロンドンを離れ、新作に希望を見いだしますが、死のイメージも離れがたくつきまといます。
二人目は第2次大戦後のアメリカで一人「ダロウェイ夫人」を読みふける大人しい専業主婦のローラ。
三人目は90年代のニューヨークでダロウェイ夫人というあだ名を持つ、有能でパーティ好きなクラリッサ。
どこか孤独で迷いや寂しさを抱えながら、ささやかな集まりや日常のことに喜びを見いだそうと懸命に取り組む女性達。
バラの花束や六月、パーティの準備、昔の恋人など幾つもの共通したモチーフをちりばめ、微妙に響きあうのが不思議なムードを醸しだしています。

特にカニンガムの母親をモデルとしているせいか、ローラの危うさはリアリティがありました。
無理に良い主婦になろうとしていたのが静かに破綻しつつあるのです。
直接は関係ない3人にどういう縁があるのか、それぞれの危機がどう展開するのか、そのへんの謎も興味をひきます。

後で映画を見たら、壊れかけた母親を見守る男の子役が上手いんですが、一緒にはらはらさせられ、画面が綺麗なだけに何だかホラーみたいな感じでした。
現代版のダロウェイ夫人は、ニューヨークのゲイ達のまっただ中で本人もレズビアンのカップルとして暮しています。
それがもはや先鋭的でもなんでもない、若い世代からは古臭いと思われているというのが…
時代がここまで変わっても親子の問題は変わらないということでしょうか。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 海外小説
感想投稿日 : 2006年8月1日
本棚登録日 : 2006年8月1日

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