夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語

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本棚登録 : 626
レビュー : 96
制作 : 土屋政雄 
sanaさん 海外小説   読み終わった 

カズオ・イシグロでは珍しい短編集。
副題通り、それぞれに音楽をテーマとし、夕暮れがモチーフになっています。
ヨーロッパの片隅で、男と女の出来事が…
奇妙な出会いや、どこかもの憂げなムードも共通しています。
ほろ苦くも切ない、芳醇な味わい。

ヴェネチアのサンマルコ広場でギターを弾いている男が、母が大ファンだった往年の歌手を見つけ、興奮して話しかけます。
その歌手は奇妙な依頼をしてきて、ギター弾きはいぶかしく思いつつも、彼の妻のために演奏をするのですが。
この夫婦はやり直そうとしているのか、別れようとしているのか、それとも…?と引き込まれます。
独特な風合いが濃厚な手応え。

音楽家を目指してチャンスを待つ若者が、民宿の仕事をしつつ悩む話や、才能がありすぎる?音楽家が誇り高さから先生につけず、進む道を迷う話など。
全体として、意表をついた視点の面白さと、なかなかない苦みとユーモアで、うわ~まいったな!という。
作者が若い頃はミュージシャンを目指して何年も過ごし、挫折した経験があることを考えると、この濃厚さも納得。
いや、違う道もあるんですよ!…でもね…
登場人物の命運にもまた、感慨がありますね。

この本を読んだのはだいぶ前で…
なんか言葉が出てこなくて。
「わたしを離さないで」もあの長さにしては恐ろしく読むのに時間かかったし。私にとってはそういう(どういう?)作家さんです。

私がカズオ・イシグロを読み始めたのは、映画化された「日の名残り」を見てから。
イギリスの大邸宅を取り仕切る執事が主人公で、アンソニー・ホプキンスが堂に入った演技をしていました。仕事に忠実なあまり、信頼する女中頭との恋を逃してしまうほろ苦さも。
初期の「女たちの遠い夏」(「遠い山なみの光」と改題したそうですが)は、戦後の混乱期に母に愛されなかった娘が、大人になって自分の娘と上手くいかないという話でちょっと暗いので~誰にでもオススメというわけにはいきませんけど。
もちろん筆力は十分、感じられました。

「わたしを離さないで」がなんといっても印象的で、精緻でもの哀しく、あたたかさと清らかさがあって、大好きです。

レビュー投稿日
2010年1月15日
読了日
2010年3月4日
本棚登録日
2017年10月16日
2
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