色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

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レビュー : 2264
著者 :
sanaさん 国内小説   読み終わった 

2013年4月発行の作品。
2009年の話題作「1Q84」の次の長篇小説。
ファンタジーではなく、1冊にまとまっている長さなので、読みやすいと思います。

多崎つくるは、36歳、独身、東京で勤めている。
名古屋出身で、高校の頃には課外活動のボランティアで知り合った5人のグループにいた。
赤松、青海という名の男子と、白根、黒埜という名の女子。
つくる以外は、色の付いた名前で、そのまま色の名を呼び名にしていた。
自分だけ特色がなく平凡だと、かすかなコンプレックスを感じていたつくる。
一人だけ大学で東京に出たが、名古屋に帰って友達に会うのを楽しみにしていた。
ところが、大学2年の夏、突然4人全員からの絶交を申し渡される。
ハッキリした理由も聞かされないまま‥

しばらくはショックで死を考えたつくるだが、徐々に立ち直る。
しかし、ほとんど友人は出来ず、2歳下の友人・灰田もまた理由を告げずに去った。
何度か女性とは付き合ったが、恋人ともどこか本気にならないまま別れ、年月が過ぎた。

二つ年上の木元沙羅という女性と知り合い、本気で付き合いたいと願う。
沙羅に、4人に会って事情を確かめたほうがいい、でなければこれ以上深くは付き合えないと言われてしまう。

恵まれた育ちで、望んだ仕事についていて、良い場所に所有している部屋に住んでいる男性。
はたから見ればこれ以上ないぐらい気楽な暮らしで、いまどき共感できる人は少ないんじゃと思うぐらいだだけど。
友達からの切られ方というのは酷くて、これは‥
16年もたって知った真実は、驚くべきもの。
つくるが必ずしも悪く思われていなかったこと、再会した人に非難されるわけではないことは、救いですが。

封印した過去と向き合うことを励まし、次へ進もうという内容が中心にありますね。
死とは何かという答えの出ない問い。
繰り返し見る生々しい夢。
英語からの直訳のような文章。淡々と記録するように語られるセックス。
スタイリッシュな暮らしの断片や、雰囲気に合う音楽の力を借りつつ、かっての悲劇がよみがえってきます。
事件物というわけではないので、その辺の事実は謎のままですが。

高校の頃には、特徴のある5人が補い合い、調和していた。
そのときは、何よりもこの調和を壊したくないと切に思うほどに。
でも時はとどまっていない‥
成績がよかった赤松は銀行を辞めて、社員教育セミナーを請け負う会社を興している。
スポーツマンだった青海は、車の販売員に。
黒埜恵理は大学の工芸科に入りなおして、今はフィンランドに。
フィンランドか‥ちょっと「ノルウェイの森」を思い出す要素もありますね。ノルウェイの話だったわけじゃないけど。

一番感受性の強い内気なシロ(白根柚木)には、大人になるのは乗り越えられないほどの壁だったのか‥
予想外の出来事に対応しきれずあがいたのは、つくるだけでなく5人ともだった。
それぞれの大人への変貌は苦さも伴うけれど、中年へ向かうパワフルさがあるというか、なかなか意外性もあって面白く、力強く感じました。
フィンランドまでも出向いて直接話を聞く勇気。
その甲斐あって、黒埜との会話は良かったですね。

つくるは、正しい痛みだと感じ、過去を違うふうに捉えられるようになるのです。
挫折感を引きずり、ふだんはそこには蓋をしているというのは、誰しも共感できることかと。
そこから人とあまり関わり合わない、やや草食系になるのは、いまどき?

沙羅という女性がつくりものめいているのがちょっと、これで、つくるの生きる希望になるのかどうか。
知り合ってまもなく、まだカッコつけてる時期だからかも知れませんが。
つくるがこれまで人に話さずに来たことと向き合わせ、真実を受け入れさせたのは運命の女性だったからなのか?
心の一部が死んだようになっていた主人公に、だんだん素直なはげしい感情が戻ってきている、と読めます。
しかし、これでふられたとしても、そのぐらいでまた死にたいと思っちゃいかんよ、つくる君! 年上の女性より(笑)

レビュー投稿日
2014年8月8日
読了日
2014年8月8日
本棚登録日
2014年8月1日
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