女ざかり (文春文庫)

  • 文藝春秋 (1996年4月9日発売)
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本棚登録 : 319
感想 : 33
5

教養小説としても中身の濃い1993年の作品。
熟年の働く女性を恋もする美しく魅力的な存在として描いたので話題になった印象があります。
新日報の新聞記者の南弓子は、45歳で論説委員になる。
同時期に論説委員になった浦野は、取材記者としては名物男で優秀だが、じつは文章を書くのは苦手で有名な男。
苦笑しつつ手を入れるのを手伝う弓子。
この二人の出世は順当な物ではなく、派閥争いで有力候補が取り除かれた果ての偶然という内部事情もあったという~大会社では意外にありそうな?なりゆき。
弓子は若い頃に見合い結婚をして娘を生んだが、まったく家事を手伝わない夫に家庭に入ってくれと言われて離婚。
以来独身だが、20年来の愛人がいる。週に一度講義に上京する哲学教授・豊崎と逢瀬を重ねていたのだ。
取材で知り合った各界の魅力的な男達と友達付き合いを続ける~魅力ある女性。
彼のことで悩んでいるときに論説で筆が滑り、中絶問題について穏当でない言い回しをしてしまう。
最初は問題にもならないというのも社説を真面目に読む人は少なく社長も読んでいないせいとは笑えるが、どこかから圧力がかかって、閑職にとばされそうになる。
どこからなぜ圧力がかかったのか?人脈を駆使して、弓子の闘いが始まる。
弓子の伯母である往年の女優や、裏社会の浅岡、娘の千枝とその恋人候補が会いに行く書家や、はては首相の田丸など、さまざまな人物がそれぞれに面白い。
更年期障害の豊崎の妻や、子供のようになってしまっている田丸の妻など、妻としての人生にも陰影のある描き方。
日本の歴史や社会についての考察もあちこちにちりばめられていて、読み応えがあります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内小説
感想投稿日 : 2010年8月15日
読了日 : 2010年8月15日
本棚登録日 : 2010年8月15日

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