動物と人間の世界認識: イリュ-ジョンなしに世界は見えない (ちくま学芸文庫 ヒ 11-1)

著者 :
  • 筑摩書房 (2007年9月10日発売)
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感想 : 40

 客観的環境というようなものは、存在しないことになる。それぞれの動物が、主体として、周りの事物に意味を与え、それによって自分たちの環世界であり、彼らにとって意味のあるのはその世界なのであるから、一般的な、客観的環境というものは、存在しない。つまり、いわゆる環境というのは、主体の動物が違えばみな違った世界になるのだというのである。(pp.39-40)

 同じカブトムシでも、オスとメスは時期によって、まったく違うイリュージョンの中で生きることになるのである。オスは、食物である樹液と子孫を残すためのメスの匂いと姿、メスは、食物である樹液と産卵のための腐葉土の匂いという、まったく違うものに意味を見出す。同じ種の動物においても、オス、メスによって、また、その時の状況にとって、世界はさまざまに異なるのである。
人間についても、同じようなことがあるのは当然である。早い話がオスとメス、つまり男と女によって世界は相当に異なる。しかも年齢によっても異なるし、状態によっても異なる。(p.109)

世界がどんなふうにできていて、誰のおかげで世界があるのかというようなことをイリュージョンによって構築しなければ、その時代の人びとはきっと生きていけなかったであろう。そのようなことは他の文化・文明についてもみな言えることである。(p.149)

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感想投稿日 : 2015年9月19日
読了日 : 2015年9月17日
本棚登録日 : 2015年9月17日

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