砂糖の社会史

  • 原書房 (2017年2月24日発売)
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 イスラム教徒は砂糖を扱う新たな農業形態を考え出した。これがのちに砂糖プランテーションと呼ばれることになる。プランテーションは新技術ではない。作物の植え付けから育成、刈り取り、精製までを一貫して行う新しい方法だ。普通の農場は牛や豚、鶏を飼育したり、穀物畑から果樹園を管理したりして、食べたり売ったりする様々な食料を生産している。対照的にプランテーションにはひとつの目的しかない。ひとつの製品を生産するだけだ。(中略)人類史上、こんな農業の形態ではそれまでなかった。何千キロも離れた書いてのたったひとつの欲求を満たすために考え出された仕組みだ。(p.40)

 1750年代以降、砂糖はヨーロッパの食生活を変えていった。裕福な人に仕える料理人は料理をいくつものコースに分けるようになった。以前、砂糖は草食(婚礼の晩餐用)に使うか、あらゆる料理のスパイスとして使われるかのどちらかだったが、それが肉や魚、野菜のコースから取り除かれ、独自のコース、デザートに使われるものとなった。(p.90)

 甜菜糖はサトウキビにとっての唯一の競争相手ではなかった。それは、映画の始まりから3分の2くらいで現れる、かすかなヒントのように、「砂糖時代」の終わりは近いと告げていた。なぜなら、完璧な甘味を作り出すのに、もう奴隷は要らない、プランテーションも必要ない、サトウキビさえも必要ないことを甜菜糖は示したからだ。甜菜糖は現在わたしたちが享受する「科学時代」の到来を告げるものであった。甘味はもはや、人を鞭で打って作るものではなく、化学の産物である。(p.154)

 砂糖は人間を物に変えたが、反対に、人間を別の人間の所有物として扱うのは間違っていると人々を啓蒙する材料となったのも砂糖だった。砂糖は何百万もの人を殺したが、声なき人々に声を与えた。砂糖は人々を虐げたが、ガンジーが真理の実験を行い、個々人が自由を勝ち取れるように導いたのは、砂糖がきっかけだった。(p.164)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年6月28日
読了日 : 2017年6月13日
本棚登録日 : 2017年6月13日

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