
トランプは、外交内政、ほとんど何も知らない。本も読まないし、そもそも書類に目を通しさえしない。情報は部屋の3台のテレビから得ている「テレビ人間」。説明に行っても話しを聞かないのでフレーズ1つ覚えさせるのがやっと。言いたいことを言い、聞きたいことを聞くだけであり、会話が成立しない。
政治的な敵味方の判断というものはなく、すべて個人的な好き嫌い。メディアは大統領を尊敬しあがめるものと思っているので、批判はすべて嘘ということになる。
政権に近づく人は多いが、ほとんどがやがてトランプの怒りを買ってでていくことに。
オルトライトでポピュリストのバノン、NYリベラルで財界とつながるクシュナー(イバンカの夫)、南部的な保守で福音主義のブリーパズ首席補佐官の3人がトランプにいろいろ吹き込もうと画策。そして互いに足を引っ張り合う。そのためにリーク合戦。リークはこの3人に加えトランプ本人からも夕食後の友人への電話で。おかげでこの本のように情報が筒抜け。
ロシア疑惑(情報のためにロシアに接近したのも、当選するつもりがなかったからだとか)を捜査するコミーFBI長官の解任が悪手で、司法副長官に特別検察官(モラー)任命という反撃を食らう。このあたりの相場観は日本人にはわかりにくい。しかも家族の金銭関係は調べるななどと失言してしまったので、これからそこが捜査されトランプ本人にまで達するのは確実だとか。
パリ協定離脱などのいろんな政策判断の局面では、ジャーバンカ(クシュナー、イバンカ)とバノンが対立し政策決定がそのまま内部抗争になっている構図。
これは結局バノンが敗れて政権を去ることに。過激な国家主義者ではなく穏健なほうが勝ってくれたのは朗報なんだろうが、バノンは次の大統領選挙を画策しているとか。
漫画にもならないようなこっけいなストーリー。政権入りした誰もが、大統領の職責を果たす能力がないと最後には思うようになる。修正25条による排除も予想されている。
しかしめちゃくちゃを言ってても、周りが、大統領の重みを前提として解釈し伝えるから何とかなってしまっている。日本のマスコミも「大統領の狙いは」とか推測して報道するのであたかも何か戦略があるかのように見えてしまうなど。
王室であるサウジ皇太子MBSと意気投合する話が出てくるが、トランプの性質を理解して、トップ会談でうまく取り入れば外国にとっては好機で、カナダ中国北朝鮮などうまくやっている節がある。
この本を信じるならとても2期目はありそうもないが、中間選挙では多くの候補がトランプ派になったという。これはどうみればいいのか。
しかし、アウトサイダーがポピュリストとして支持を得て権力を得ていくプロセスはそれが偶然だったとしても参考になるだろう。乱暴な言動でリベラルメディアに攻撃(嘲笑)されることによって注目度を増してきたこと。分断をあおることによって支持者を固めていったこと。逆に左派からこういうリーダーが出てくるシナリオはないかと想像をめぐらせた。
- レビュー投稿日
- 2018年11月30日
- 読了日
- 2018年11月29日
- 本棚登録日
- 2018年4月8日