存在しなかった男 警視庁捜査一課田楽心太の事件簿 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店 (2013年9月25日発売)
3.10
  • (1)
  • (4)
  • (11)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 70
感想 : 6
4

ミステリやサスペンスはあんまり読まないけどこれは読み易かった。本格ミステリや謎解きを期待する人にはお勧めしないけど、エンターテイメント性は十分だし、二時間ドラマくらいに簡潔にまとまってる所にも好感が持てる。
確かに犯人予想は早い段階でついてしまうが、犯人の心情、動機、奈々に対する気持ちが後々語られていくのが興味深い。
それに津嶋が働きざかりに母と祖母の介護をしなければならなくなり、身体的にも精神的にも金銭的にもすり減る気持ちはとてもよく分かる。同情もしてしまう。
泣きそうになったのは母が脳梗塞の後遺症で若年認知症を患い、通帳がなくなったと身内の津嶋を疑う場面。
津嶋が母親を殺す一歩手前までいった時、母が本来の母につと戻って、「いつでもいいよ(自分を殺すのは)」と、すまないと、方言で話すのだ。
サスペンス以上の人間ドラマを見た気がして双方が苦しんでいるんだと思った。
ただ、殺害動機が弱い気はする。いくらお金に困窮しようとも、介護疲れを経験しようとも日野原の侮辱や態度で殺害計画を綿密に準備するまで憎むだろうか?反対にカッとなって殺してしまった、ならあり得るかもしれないが。
とりあえず奈々が前を向いて進めるようになるといいと思う。
田楽とのロマンスも期待しなかった訳ではないが、奈々は当分、恋愛しそうにないようだ。残念。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年5月16日
読了日 : 2015年5月16日
本棚登録日 : 2015年5月16日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする