文庫版 塗仏の宴 宴の支度 (講談社文庫)

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レビュー : 292
著者 :
消息子さん ミステリ   読み終わった 

 『姑獲鳥の夏』からどんどん厚くなって、この『塗仏の宴』に至ってついに1巻本にできず「宴の支度」「宴の始末」の2巻となった。以後、だいたい『絡新婦の理』と同じくらいの厚さなのは反省したのだな。
 前半の「宴の支度」は短編の連続の形態を取っていて、おぼろげに事件の大きさ、不可解さがみえてくるという仕組み。
 まず「ぬぺっぽう」。私、関口巽は昭和12年頃にはあったはずの伊豆の韮山の「へびと村」の取材に行く。そこには万病に効く薬となる「くんほう様」というのっぺらぼう、つまりぬぺっぽうのような生きた肉の塊があるという。へびと村は最初からそんな村はなかったかのように、別の住民が住んでいる。現場を訪ねた関口は「世の中に不思議でないものなどない」と言う謎の郷土史家・堂島静軒に出会ったあと、そこで殺人事件の犯人にされて逮捕されてしまう。
 「うわん」。『狂骨の夢』の朱美は事件後、焼津に引っ越している。朱美は自殺を図る村上兵吉という男を助ける。村上は熊野に生まれるが、昭和12年、家出して、数奇な人生を送るが、戦後、熊野に戻ってみると、実家はなくなっている。そして近隣の住人すべてが焼津に集落ごと移っているらしい証拠を得て、焼津に来たのだ。なぜか自殺を繰り返す村上。その村上を救いにやって来たという成仙道なる謎の宗教集団が、村上の自殺はみちの教え修身会の術によるのだという。そこに絡む怪しい薬売り・尾国誠一。
 「ひょうすべ」。逮捕された関口の回想。京極堂のもとに古書店の同業者からもたらされた相談。元編集者の加藤麻美子の祖父がみちの教え修身会にはいってしまい、幼時、ふたりで「ひょうすべ」を見たという記憶が祖父から消されているという相談。京極堂が謎を解くが、暗躍するのは女性霊媒師・華仙姑乙女とその手下・尾国誠一……。
 「わいら」。カルト集団・韓流気道会に追われる敦子、一緒に襲われるのは華仙姑乙女。どうやら彼女も被害者だ。そして榎木津が助けに乱入してくる。
 「しょうけら」。木場刑事にもたらされる相談。24時間監視されているという女工。関わってくるのは健康カルト・長寿延命講と霊感少年・藍童子様。
 「おとろし」。『絡新婦の理』の織作家の生き残りの登場。韮山の土地。不老不死の秘薬。郷土史家・堂島が登場し、彼女は何者かに殺されてしまう。それが関口の犯行とされる殺人事件である。
 マインドコントロールとカルト集団、背後に仄見える不老不死。そして自我と意志いう問題圏。

レビュー投稿日
2019年9月12日
読了日
2019年9月12日
本棚登録日
2019年9月12日
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