新装版 赤い人 (講談社文庫)

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  • 講談社 (2012年4月13日発売)
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明治14年、無報酬の労働力として北海道の原野を開墾する赤い獄衣の囚人たち。極寒の中での過酷な肉体労働だが足袋も支給されず、凍傷で体は欠損していくものの酷使され続ける。維新で政治犯になった士族たちと混乱した世相で発生した凶悪犯たちは豊富な資源であり、死んでも補充されるだけ。脱走したら看守たちに殺され、死体は見せしめにされる。北海道にまず囚人たちの手で獄舎が出来、炭鉱が掘られ、道路、鉄道が敷かれていく。

 『... 掘りさげられた堅坑に可燃ガスの存在が懸念されると、看守の指令で囚人の体に綱が巻きつけられ、宙吊りにされておろされる。囚人が頭をたれ動かなくなると、ガスの存在がみとめられ、新たに換気孔がうがたれる。むろん、堅坑におろされて悪性ガスを吸った囚人の大半は、
意識が恢復せず、一命をとりとめた者も痴呆状態になった。… (P211) 』

『...看守たちはもどかしがって、樹木の一方に囚人たちを綱でぶらさげさせ、その重みで樹木を早目に倒すよう指示する。倒れる樹木を避けきれず、下敷きになる者もいた。… (P234)』

『降雪期がやってきて、かれらは雪中で岩を砕き、巨木を倒して進んだ。その頃から逃走者が続出するようになり、それを看守が追って斬り殺し、銃弾を打ちこむ。路線の周辺には、病死者と逃走者の遺体が点在し、降りしきる雪に埋れていった。… (P235)』

『...囚人は怠惰を好み他人の生活をあてにする「寄生虫」で、かれらを更生させるには働かなければ食物を口にできぬことを教える必要があり、そのためにも坑道内に追い込み採炭させることが最も効果があると論じていた。... (P241) 』

『樺戸監獄の関係書類は旭川監獄に移されたが、それらの書類に記録されている共同墓地に埋葬された囚人の遺体は千四十六体で、そのうち遺族に引き取られたのは二十四体に過ぎない。死因は、心臓麻痺が八十三パーセント強にあたる八百六十九体、逃走にともなう銃・斬殺、溺死、餓死及び事故死、自殺が百十三体、その他四十体と記録されている。… (P306) 』

2016/07/17

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: フィクション
感想投稿日 : 2017年11月29日
読了日 : 2017年11月29日
本棚登録日 : 2017年11月29日

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