夏の丘、石のことば

  • 徳間書店 (1996年5月1日発売)
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感想 : 4
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児童文学の支柱にある『率直さ』に胸打たれるお話。

ストーリー:母が亡くなってから、どうしても自分の殻に閉じこもってしまう少年ブレイズ。けれど、丘の向こうの家に、同じく孤独を抱えながらも、喜怒哀楽をハッキリと表す風変わりな少女ジョゼルがやってきてから、ブレイズの日常は大きく変わり始める。
夏。丘の上で出会った二人は、徐々に友情を深め、やがてはお互いをかけがえの無い存在と思い始めるのだが、ジョゼルはブレイズに重大な嘘をついていて、ある日それがばれてしまう。

見所:ジョゼルの『率直さ』『正直さ』が見所。彼女は良くも悪くも自分の感情と言うものを相手にためらい無くぶつけて行く。それが周りにとっては辟易とするものだったり、愛おしかったりするわけです。でもその嘘偽りの無い“正面から体当たり”のジョゼルを、本当に嫌える人は中々居ないんじゃないかなぁ、と私は思う。嘘がばれた時のジョゼルの言動が特に見所!“大人”必見の感動もの対応です!

私見:恋でも愛でもない、友情とは何なんだろう?と考えた時に、この本がいつでも答えをくれる。例えば、自分がとても大切にしているものを傷つけられた時、相手を許せるか許せないかと言う問題は、難しいようで実はとても簡単で、結局罪を含めたその人を、損得無しで好きか嫌いかだと思う。これまでのその人と過ごした時間や思い出が、その罪よりも重いか重くないかだと思う。
この本でブレイズが、本当にとても簡単にジョゼルの良い所も悪い所も受け入れて行く過程を読んでいると、人と人との結びつきはなんて『豊か』で素敵なものなんだろう、と普段思わないことを思ったりして。でもそれは喧嘩したりぶつかり合ったり、果ては許しあったりして生まれる豊かさなので、その手前で“大人”は逃げたりしちゃうんですよね(笑)。

子どもの頃に持っていた、ただ単純にその人やそのことに近づきたい。その人やそのことを知りたい。この『率直さ』から逃げない大人で居たいなぁ、と思います。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 児童文学
感想投稿日 : 2005年11月7日
本棚登録日 : 2005年11月7日

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