屍者の帝国 (河出文庫)

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本棚登録 : 1941
レビュー : 194
kaji24さん 文庫   読み終わった 

劇場版を見終えてから購入、約一年かけて読了。

エピローグに「■」が置かれたところを『ハーモニー』の例の部分を読んだときに近しい気分で受け取った。人を乗り継いでいく菌株、X、あるいは言葉、は私たち読み手だったのではないか……俺が、俺たちが略(ガンダム並感)という気持ち。菌株と同じ視点を読者が共有していたかのような。あんまりな言いようなので言い換えると、印字された文章、そうでなくても言葉、としてしか存在しなかったものが、私たちがそれを読むことによってようやく形を持つ=読者と言葉のあいだに「わたしなるもの」(ワトソンはじめ物語内存在)が立ち現れる、という解釈をした。フライデーの手記に対しての「将来的な読み手」としての私たち。私たちにはワトソン、つまり「わたし」のことが「見えている」。そのつもりでいるし、そう祈りたい。私たちの読み手はいったいどこにいるだろう。

ぼんやり劇場版をふり返ると、あれは舞台背景を同じくしたオリジナルだったのではないか、という思いがわいてくる。劇場版は劇場版で楽しめた人間なので今あれこれ言うのもお門違いだとは思うのだけれども、一点、フライデーという存在が物語内で持つ役割は書籍版と劇場版で違うのだから、あの独白をねじ込んで無理に書籍版を踏襲する必要はなかったのでは……とは感じるところ。劇場版は「Project Itoh」としての関連性を押し出したいせいか、『ハーモニー』に対する『屍者の帝国』という意味合いを強く感じる設定とストーリーであったなあと思う。本の感想に書くことではない。

伊藤計劃:円城塔の関係性をワトソン:フライデーの関係に落とし込んでいると読むのはどうなのか……という思いが強かったが、エピローグの独白とあとがきの引用文を何度か読むにつけ、事実そうなのではないかと思い始めてしまう部分もあり、それでいいのかと感じる自分もあり。

レビュー投稿日
2016年9月24日
読了日
2016年9月24日
本棚登録日
2016年9月24日
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