安全神話崩壊のパラドックス: 治安の法社会学

  • 岩波書店 (2004年8月26日発売)
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本棚登録 : 101
感想 : 10
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冒頭は統計を用いて犯罪発生率や検挙率等を多方面から詳細に検討して、日頃マスコミ報道から受けるような治安の悪化という事実はなく、現実にはここ数年を見比べた場合せいぜいが微増程度(犯罪の種類にもよるけど)、と徹底的に証明していきます。
それなのにどうして治安が悪くなったように感じるのか、という分析のために日本の社会的な構造から解き明かしていくあたりは圧巻です。欧米との違いとして一番日本の特徴として顕著な「ハレ」と「ケ」の仕組みと絡めて進められる話には引き込まれました。分かりやすい!
いろんなタブーにも精力的に言及されていて、読み応えという点では充分です。ただ現状の衰退を言い捨てるだけじゃなくて共同体の崩壊した現状からどうするのか、と方向性を示されているのも評価できます。
でも、ちょっと統制機関に対しての信頼度が高すぎるというか…取り調べ時の可視化に反対とか、メールへの統制も許可すべき、とか。
卒論関連でブロッキングについて書かれた報告なんかをちょっぴりですが読んだんですが、スウェーデンでちょっと深刻な問題なども起こってるようですしねえ。ブロッキングなんで進まないのか、と歯がゆく思っていたりもしたのですが、こういう話聞くとそれもないな、という気になった私にとってはちょっとこの提案は受け入れがたい部分がありました。
でもいろんな面で視点が変わりそうです。問題提起としてもすばらしい本ですよ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2010年4月25日
読了日 : 2009年9月14日
本棚登録日 : 2009年9月14日

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