サブカル・ニッポンの新自由主義: 既得権批判が若者を追い込む (ちくま新書 747)

  • 筑摩書房 (2008年10月1日発売)
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 いわゆる「新自由主義」を批判した本。テーマ自体は有り触れているが、ネットやメディア上の動きを扱う視点は面白い。

 「新自由主義」というと小泉内閣の郵政や道路公団の民営化に見られるような規制緩和・小さな政府路線のことと取られがちだが、この本では同内閣の採った「あいつらは不当に利益を貪っている」という「既得権批判」が新自由主義的な考え方として採り上げられている。

 その「既得権」というのは人によって変わります。高級官僚の天下りが既得権とされることはよくありますが、高齢者や障碍者、在日外国人などが「差別」を俎上に載せて「弱者利権=既得権」を貪っているとされることもある。その是非は別として、特に後者はネット上でバッシングの対象になることが多い。この流れも著者の見解に従えば新自由主義的と言えるものだろう。

 著者の考える新自由主義の大きな問題点は、「こうせざるを得ない」と宿命的に考えてしまうというもの。追い詰められた者は時に犯罪など、取り返しの付かないことをしてしまう場合も多い。

 「苦しい」と声を挙げられる環境を作ることが、追い詰められることで犯罪に走る人を減らし、私たちが「ほんとうに幸せ」になるための一歩になるというのには賛同できた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2011年6月18日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年6月18日

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