歌人の行きつけ

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  • いりの舎 (2018年12月28日発売)
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電車にて酒店【しゅてん】加六【かろく】に行きしかどそれより後は泥のごとしも
佐藤佐太郎

 新聞に休刊日があれば、酒呑みには「休肝日」あり。肝臓を休ませる日には、酒にまつわる歌人たちの交流話を味わいたい。

 近現代の歌人ゆかりの酒場を実際に訪れ、追体験した「歌人の行きつけ」。著者は、学生時代を北海道で過ごした歌人・田村元である。紹介された酒場は、北海道から沖縄までと幅広く、エピソードを読むだけでほろ酔い気分になってしまう。

 掲出歌は、左党の人々にはどきっとさせられる内容だろう。私も折々つぶやく歌で、昭和初期の東京での作。

 「加六」は銀座にあった店と聞いていたが、どの辺りだったのか、以前から気になっていた。すると、本書の、佐太郎に師事した秋葉四郎と田村元との対談で、加六が地図つきで紹介されており、思わず膝を打ってしまった。

 1935年の東京の地図によると、加六は銀座二丁目にあったらしい。酒は菊正宗の上等なものを提供しており、国木田独歩の短編小説「号外」でも、加六を舞台に「感心にうまい酒を飲ませ」る「正宗ホール」と紹介されていたそうだ。現在はビルが立ち並んでいるが、いつか、「泥」になるまで飲んでみたいような―

 ほか、札幌市で紹介されたのは北区の「ゆかり」。現在は残念ながら営業していないが、店内の壁には、札幌在住の山田航の次の歌がサインされていた。

 麦揺れて風はからだをもたざれど鳥類であることをみとめる 山田 航
(2019年2月3日掲載)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年2月3日
読了日 : 2019年2月3日
本棚登録日 : 2019年2月3日

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