シュークリーム・パニック (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2017年9月13日発売)
3.18
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本棚登録 : 290
感想 : 21
4

「シュークリーム・パニック」
2冊が1つになった短編集。


「豆腐の角に・・・」に惹かれ読んでみたいと思いつつ、こちらを手に取りました。タイトルとタイトル元になっていると思われる短編のあらすじがなんとも面白そうだったのですが、あとがきによると、タイトルに特に意味は無いようです。元ネタと思われた「限定販売特性濃厚プレミアムシュークリーム事件」という如何にもな短編も関係ないようです。


また、本書は以前にノベルズ版2冊に分けて刊行されたものを1つに取り纏めしたもの。厚目の本は売り上げが悪いから薄い2冊で販売しようという編集部の意向だったようです。確かに本書は500ページ超ありますから、短編集としては厚目です。因みに、倉知氏はノベルズ版の著者の言葉の中で其々の本を「2つに割ったシュークリームのもう片方」と表現しました。そして、今回の本書は2つが1つになったシュークリーム丸ごと1個ということになります。こっちにはシュークリームの意味があったと。表現が粋だ。


本書に収められているのは6つの短編。共通して言えるのは前置きが長い!ということ。読んでみると「前置きが長いなー」と突っ込みたくなると思います。この前置きの長さがキャラクターを特徴づけています。短編によっては青春モノだったり、ユーモアモノであったりするのですが、どの短編でも生きてます。ちょっと癖になる面白さ。


ユーモアでは「限定販売特性濃厚プレミアムシュークリーム事件」と「名探偵南郷九条の失策 怪盗ジャスティスからの予告状」。青春モノ(羨ましいこの上ない)では、断トツで「夏の終わりと僕らの影と」。ミステリーとしては「現金強奪作戦!(但し現地集合)」と、どれも面白かったです。


★収録作★
■現金強奪作戦!(但し現地集合)
「兄ちゃん。金、欲しいないか?」人生大逆転を狙って、場外馬券売り場で見知らぬおっさんが持ち掛けてきた、1人あたり1億円ゲットの銀行強盗計画。但し、現地集合だけでは終わらない。終わり方も綺麗。
■限定販売特性濃厚プレミアムシュークリーム事件
体質改善セミナーに参加したメタボな男性四人組。無慈悲なインストラクターによって耐え難い空腹感に苛まれる中、冷蔵庫のシュークリームが消える事件が発生する。メタボ界のシャーロックホームズは、この謎を解けるのか。終わり方も最高。
■強運の男
「ほんの運試しをしませんか?」静かなバーで一人飲んでいた私にある男が話しかけてきた。趣向を凝らしたマトリョーシカを使った運試しだ。一杯のアルコールを掛けて私は挑戦するが、次々と勝っていく。次第に明らかになる男の狙いが脅威的。感覚的には、ホラー。
■通い猫ぐるぐる
真紀の暮らすマンションに通ってくる、おなかの横に渦巻き模様のある猫。いつしか真紀は、猫を部屋に招き入れ、「うずまきちゃん」と名付けて部屋で遊ぶようになった。そんな日常の中、近隣で傷害事件が発生! 所轄署の若手刑事にして真紀の彼氏である満久は、うずまきちゃんに事件にかかわる秘密が隠されているという。その秘密の隠し場所がイケてた。
■名探偵南郷九条の失策 怪盗ジャスティスからの予告状
「本日午後9時 貴殿の所有する価値ある色紙「五少女の微笑」を奪いに参上する」怪盗ジャスティス。そんな予告状がオタク作家鈴木・ペンネーム「草まんじゅう」の下に届いた。依頼を受けた名探偵南郷九条は価値ある色紙を守れるのか。犯人が秀逸。ユーモア溢れるミステリー。
■夏の終わりと僕らの影と
高校2年生の夏休み。受験勉強を前に、羽を伸ばしてすごせる最後の夏、「僕」は仲間たちと映画制作を始めた。監督の「僕」は以前から気になっていた同級生、百合川京子を主役に抜擢し、撮影は快調。しかしその最終日、ラストシーンのロケ場所から、彼女の姿が消えた。ちょっとずるい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年8月18日
読了日 : 2018年8月18日
本棚登録日 : 2018年8月18日

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