ガーディアン (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2019年3月15日発売)
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本棚登録 : 563
感想 : 49
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「ガーディアン」
薬丸岳の初の学校もの。


少年犯罪をテーマにした作品が多い薬丸岳の初の学校小説。平和に見えた学校に起きた事件には、教師の在り方、生徒の生き方を問うメッセージが込められている。


英語教師の秋葉が赴任する少し前、市原中学校は少し荒れていた。それがある時期からぱたりと収まり、平和が訪れた。在学生はいじめや恐喝に悩まされることもなくなり、教師も問題児が居なくなったことで楽になった。しかし、その平和には大きな秘密があった。それは、学校の在り方、教師がいる意味を揺るがすものだった。


自衛団「ガーディアン」が存在する理由を聞けば、理解できる部分はある。肝心な時は教師や親は自分達を守ってくれない。そういうことは現実社会でも起きているし、大人が守ってくれるどころか襲ってくることだって珍しくなくなってきている。それを考えると「ガーディアン」は必要だ。フィクションの世界よりこちらの世界に必要性が高い。


しかし、「ガーディアン」は私刑に近い権力の塊になってしまった。当初は友達を守りたい一心からだったが、「ガーディアン」の存在を確立する為に性急な行動を起こし過ぎた。いくらなんでもそれはNGで、「ガーディアン」設立の意味が無くなるんじないかと言う感じだった。どんなことをしても生徒を守るならば、もう少し時間をかけ、制裁の意味を熟考した上でやらないと、説得力が無い。


もちろん、中学生が首謀者であり、必ずしも完璧にはいかない点を残すことで、「ガーディアン」の存在を揺らがせなければ、小説として終われないし、恐らく作者のメッセージも変わってくるかも知れないので、そこは了承ポイントかもと思う。と色々考えたものの、この点がもう少し練られたならば、もっと面白くなったのではないか。


最後も綺麗に終わり過ぎた。暴走した上で、不問みたいなのは理解しかねる。教師達も、苦労したのは分かるが、屈してはならない理屈に屈したようにしか見えなかった。だからこそ秋葉がたくましく見えるのだけど。


ちなみに、これは秋葉の教師としての再生でもある。昔見たく教師の仕事を楽しんでいないと感じ、旧友の誘いを受け転職しようとした秋葉。しかし、「ガーディアン」の事件に巻き込まれたことで、改めて教師としての生き様を考える。秋葉のような教師がひとりでもいて欲しいと切に願う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年3月22日
読了日 : 2019年3月22日
本棚登録日 : 2019年3月9日

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