シーソーモンスター (単行本)

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本棚登録 : 1490
レビュー : 187
著者 :
kansasさん  未設定  読み終わった 

「シーソーモンスター」
面白企画。


まず、螺旋プロジェクトについて話さねばならない。螺旋プロジェクトとは「小説BOC」1~10号に渡って連載された作家8組による文芸競作企画である。古代から未来まで日本で起こる「海族」と「山族」の闘いを描くと言うテーマを持ち、それぞれが小説を書くと言う一風変わった試みで、「シーソーモンスター」は近未来を舞台にした、朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」に続く螺旋プロジェクト第2作となる。



螺旋プロジェクトに参加する作家は3つのルールを遵守する。


ルール1:「海族」と「山族」、2つの種族の対立構造を描く
ルール2:全ての作品に同じ「隠れキャラクター」を登場させる
ルール3:任意で登場させられる共通アイテムが複数ある


というもの。ルール1を見破ることは可能だが、ルール2&3に気づくのはなかなか難易度が高そうであるが、読者を惹くフックとしてはなかなか興味深い。


さて「シーソーモンスター」なのだが、近未来をテーマにしているものの、始まりは昭和後期の平凡だが平和に暮らしていた夫婦を襲った危機である。この危機を乗り切った夫婦に導かれた1人の手紙配達人を巻き込む事件が、2050年に勃発する(こちらはスピンモンスター)。


ちょっと気弱だが正義感はある。が、おっちょこちょいで鈍感な男は、たびたび伊坂幸太郎作品に登場すると記憶しているが、実はその男はなんでも知っているといった秘密兵器に近いストロングポイントがあるわけでもなく、ただただ平凡な男であり、実は秘密兵器ならぬ最強兵器はその妻であった、と言う組み合わせも馴染み深い。更に、2050年後に登場するキーマンであるが、この男ももはや顔なじみキャラに近い雰囲気を醸す。ああ、あいつみたいな奴ね、と合点しちゃうくらいの馴染み感。伊坂幸太郎の味が染みてる。


海族と山族の対立が齎す結末はちょっと予想外。スピンモンスターの中盤までが醸し出すいつもの味から一転、こんな形になるとは。


水戸直正を想うと辛いものがあり、彼に課せられた試練の結末には謎がたっぷり残ったなと率直に感じた。いつもは作品により形は違えど余韻が残るが、こんな謎残しは、伊坂幸太郎では久々な気がする。やはり、螺旋シリーズが関係してるのだろう。

レビュー投稿日
2019年6月4日
読了日
2019年6月4日
本棚登録日
2019年3月25日
3
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