蒲生邸事件 (文春文庫)

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本棚登録 : 5688
レビュー : 593
著者 :
kansasさん  未設定  読み終わった 

「蒲生邸事件」
著者会心の日本SF大賞受賞長篇。


宮部みゆきの作品はたくさんありすぎて追いつかない。本作は宮部みゆきのSFって読んだことなかった(はず)ので、漸く手にとった。確かにあらすじを見ればSFなのだけど、それだけじゃない。


二・二六事件真っ只中の戦前の東京にある蒲生憲之陸軍予備役大将の館に身を寄せた孝史は、蒲生予備役大将の自決に遭遇する。その自決に事件性を感じた孝史は犯人探しをするが、これはミステリー。


また、まがい物の神だと自虐的に語る時間旅行の能力を持つ平田との衝突と生まれる絆、そして、ふきとの出会い。そこからすると恋もありな成長物語。


色んな側面がある作品だ。その中で一番強いのは、歴史的な側面。テーマはSFでも恋でも成長でもなく、過去は過去と差別しないで、生きている時代に逃げずに向き合っていく。それを二・二六事件に直面する蒲生家とその関係者との短い日々を通じて、孝史は感じていく。


孝史は、負けると分かっている戦争からふきを助ける為、共に孝史の時代にいこうと誘う。しかし、ふきはそれをしてしまうと逃げてしまうと言う。ふきはふきの時代に向き合って、孝史は孝史が生きていた時代に帰り、向き合いなさいと言うことだ。


タイムスリップする前の孝史であれば、平田の人間として生きて死にたいと言う願いと同じくらいふみのこの言葉も理解できなかっただろう。しかし、僅かな日々であったが、蒲生事件や貴之、ふみ、珠子などの人々、なにより二・二六事件と当時の日本を肌で感じることで変わっていく(父曰く大人になった)。


歴史がテーマとは言え、五十年以上の時間を越えたふきとの再会は、寂しくもあるが、爽やかでもある孝史の今後の姿が楽しみになる締め。また、平田に対する回想も良かった。


個人的には、孝史の素直な(タイムスリップに対するリアクションを含め)とこや平田の実直なところ、珠子のキャラと登場人物が良かった点も含め、宮部みゆきって改めて凄いなと感じる一冊。

レビュー投稿日
2019年4月15日
読了日
2019年4月15日
本棚登録日
2019年4月15日
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