スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社 (2018年11月6日発売)
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「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」
シリーズ第2弾。


スマホ落としたシリーズ第1弾は、スマホ落とした以前にセキュリティ含めて甘々な彼氏が出て来た。でも、今回はそんなことは無い。主役は凄腕の元エンジニアであり、現在はFBIも一目置くサイバー捜査官・桐野良一である。


話の軸となるイベントは2つ。一つは、<b>桐野vs浦井光治の攻防と取引</b>。浦井とは、第1弾で彼氏のスマホを乗っ取り、稲葉麻美を追い詰めたシリアルキラーである。前回、この丹沢山中連続殺人事件の犯人は無事に逮捕され、現在は起訴を待つのみ。のはずだったが、ある殺人だけは黙秘を続けている。そして、突然浦井は黙秘を解く条件として桐野と対話することを要求する。


もう一つは、<b>巨額仮想通貨流通事件</b>である。仮想通貨を取り扱う会社から何百億の巨額マネーが何者かによって流出したのだ。警察は後手後手に回り何も手が出せない。さらに、この事件には、カリスマクラッカーMに加え、ホワイトハッカーJK16の関与が浮上してくる。


物語は二つのイベントを軸に進んでいく。次々と身元不明の遺体が見つかり、桐野の彼女にクラッカーの魔の手が忍びより、浦井との対立関係は思わぬ形で休戦。そして、事件の首謀者Mを追跡する。全体的に警察小説の様に仕上がっている。


とは言え、ハッカーとクラッカーは似て非なるものであり、きっかけ一つ違えば桐野と浦井は入れ替わっていた。そんな裏表として二人が存在する所にはサイバー要素も取り込んでいる。


もちろん、犯行の土台にはサイバーがある。前回はスマホを落としたことから乗っ取りだが、今回は無料WiFiからのスマホ侵入である。前回よりも犯人の手口のレベルは上がっており、仮に現在暗躍するクラッカーの犯行を参考にして犯人を組み立てたのならば、日本警察もアメリカの様に凄腕ホワイトハッカーやクラッカーを雇用し、サイバー対策のレベルを上げることが急務に見える。


桐野と浦井の最終決戦を見るに、浦井は犯人の背後で糸を引く黒幕として再登場を予感させる。サイバー警察ものとして一つ出来た感じがする作品だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年11月9日
読了日 : 2018年11月9日
本棚登録日 : 2018年11月4日

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