ベストセラーはもういらない

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本棚登録 : 49
レビュー : 6
著者 :
kansasさん  未設定  読み終わった 

「ベストセラーはもういらない ニューヨーク生まれ 返本ゼロの出版社」
新たな挑戦。


1978年、シド・ビシャスの恋人ナンシー・スパンゲンの死体がチェルシー・ホテルのバスルームで発見された。というミステリの様な出だしから始まる。シド・ビシャスは、イングランド出身のパンクロッカー。 同国のパンク・ロックバンド「セックス・ピストルズ」のメンバーとして知られる。何故この出だしとしたのか?(もちろん、本筋には関係ない)と思いながらも、なんか外国作品ぽくはある(あるある)癖がある文章から始まるのは、ORブックス創始者のジョン・オークスの物語だ。


アメリカの出版業界が陥った負の遺産や古い慣行を捨て、返本ゼロを目指したデジタル技術を活かす伝統的出版社スタイルを如何にして創造したのか、どこからアイデアが生まれたのかを掘り下げた本となっている。


まず、驚きなのがジョンの家系だ。出版業界に縁の強い方々が身近にいたことがジョンの将来に影響を与えたのは間違いない。また、ジョン自身の人柄も魅力的だ。私のことを凄い人物の様には書かない様に何度も作者の秦隆司にお願いしたエピソードは、自分を嘘偽りなく伝えたいと言う誠実さが伝わってきた。


また、ORブックス、もちろんこれは外せないトピックだ。扱われるのは終盤であり、もう少しサービスラインやジョンの信念を掘り下げて貰いたかった所ではある。しかし、“ORブックスの創設には、「とにかくたくさん出版する。そうすれば売れるはずだ」と言うアメリカの出版業界の慣行に対する新たな解を提示すると言う意味もあった訳だが、何よりたくさんの本が出版されたはずなのに、たくさんの本が返品されてきている、と言う哀しい現実を変えたいと言う思いの強さが詰まっている”と自分なりに解釈出来たので、本書のポイントとして挙げたい。


そして、最後にアメリカの出版業界の慣行については、もう少し掘り下げがあれば、より読み応えが増したと感じた。ジョン個人の歴史からORブックス、アメリカの出版業界に触れていく形も、ジョン個人に対する思い入れが出来る分、それはそれで良い。


しかし、根本の問題は、アメリカの出版に関する慣行であり、売り方の志向だと思う。この点は、日本とは違いが多い。また、とにかく売上げを出すには、いくらでもコストを掛ける、又は製品を作ると言う志向は、アメリカであれば、出版以外の業界でも割とスタンダードに思える。そんな一般的な志向は、何故そのように育ったのかを紐解きながら、ジョンの新しい出版の在り方を語ることが出来れば、ジョンの実行力ややり遂げた事の凄さがより強くなる。でも、それは、ジョンの求める読者への伝え方では無さそうであるから、無しになるだろうけど。


ORブックスと言う会社が、アメリカでどこまで根付くのか、興味が湧く。

レビュー投稿日
2019年1月31日
読了日
2019年1月31日
本棚登録日
2019年1月31日
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