すぐそばの彼方 (角川文庫 し 32-3)

  • KADOKAWA (2005年1月25日発売)
3.16
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本棚登録 : 829
感想 : 70
4

政治小説であり恋愛小説であり再生を描いた小説でもある。
「愛と名誉のために」的な再生小説を期待して読んだのだけど、主人公の再生への道は相当違うもん。結局小説のゴールはかなり近いとこにたどりつくんだけど、でもこの主人公は小説ラストで見つけた場所に安住しないと思う。

そこが、俺の(今のところの)価値観と違うので、この小説の結末には納得できない。随所随所にエエことは書いてあるし納得できる部分もあるんだけど、やっぱり一度、とてつもない権力ととてつもない地位を目の当たりにしてしまうと、それを知らない価値観には戻れないのだろうな。作者の意図とは違うのかも知れないが、この主人公は作者が与えたハッピーエンドに飽き足らず絶対幸せを壊すだろうな・・・と意地悪なことを考えてしまった。

そして、これもまた作者の意図とは違うのかもしれないが、登場人物の中で一番カッチョ良かったのは、主人公の妻郁子。美貌、財力、知力、家柄、家事スキル、子育てスキル、沈着冷静さ、行動力・・・あらゆるものを備えたほぼパーフェクトなスーパーレディである。主人公や主人公の友人は彼女を貶すが、俺には出来てない人間の嫉妬に思えてしまい、そして俺は主人公や主人公の友人側の人間なんだと自覚して少々ヤサぐれた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本小説
感想投稿日 : 2014年11月22日
読了日 : 2014年11月22日
本棚登録日 : 2014年11月10日

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