know (ハヤカワ文庫 JA ノ 4-1)

著者 :
  • 早川書房 (2013年7月24日発売)
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本棚登録 : 2520
感想 : 276
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ネットでなんかを検索したりすると、情報量の多さに溺れてしまいそうになる。2ちゃんねるとかヤフーニュースのコメントなんかを見ると、品性下劣な感情の垂れ流しに気分が悪くなる。ISILの動画を観た人の話を聴くと情報を入れない対策も講じておきたいと思う。

アナログ昭和なこの俺でも、情報の氾濫に「こんなんでエエんか?」と危惧を覚える昨今、この小説が描くのは、さらに分厚くさらに有象無象の情報があふれている近未来社会である。受けとれる情報量の多さと隠せる個人情報の少なさで階級を作っている社会である。あふれ情報の全てを吸収し理解し放出できる存在が現れたとしたら・・・。

結局はCPUの性能で勝負がついてしまったり、人物描写が情報戦の描写に負けているのでキャラ立ちが弱かったり、物語展開上のこととはいえ14歳の娘を抱くことを正当化するのはどうよとか・・・瑕疵はいろいろ目立つものの、情報社会のデフォルメを描ききろうとする作者の力技の筆運びは読んでいて心地よい。「ありえへん、んなアホな」とつぶやきながらページを繰る手が止まらない、その醍醐味を味わえただけでも読んだ価値あり。

ただラストが残念。確かに結論をつけづらいテーマであるとはいえ、力強い筆運びですすめてきたんだから、荒唐無稽の決め付けで終わって欲しかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本小説
感想投稿日 : 2015年2月11日
読了日 : 2015年2月11日
本棚登録日 : 2015年1月28日

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