明治維新、戊辰戦争期の薩摩軍の軍師、伊地知正治を主人公にした歴史小説。あまたある維新小説の中でも伊地知にここまで注目した小説は珍しんじゃないかと思う。
軍師としての伊地知は戊辰戦争ですでに中古化、維新を進める側なのに戦術が旧態依然だったということ、そして西郷・大久保や大村益次郎に大鳳圭介にまでそれが気付かれるという皮肉。
でも傑物たちは伊地知の価値を近代軍隊にではなく、産業振興や教育の方にあると観る展開も良き。
戦争が科学や文化を急速に進化させる一面は否めないが、平和な中での経済振興による世の中の発展(当時の言い方でいう殖産興業的なことなか)の方こそ、民の生活を安定させ、真の意味で社会の地力を固め底上げするんだと思う。
豆腐を食い、若者に農業をさせ、弟子を役人に仕立てようとする伊地知の価値は、最後まで読んでグイっとあがるのである。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本小説
- 感想投稿日 : 2024年8月12日
- 読了日 : 2024年8月11日
- 本棚登録日 : 2024年7月28日
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