日日是日本語: 日本語学者の日本語日記

著者 :
  • 岩波書店 (2019年4月19日発売)
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感想 : 8

「月刊今野」と称されるほど、つぎつぎと本を出している今野さんの新刊。「日本語日記」だから立ち読みできるかと思ったが、やっぱり気になって購入。毎日の読書、目にふれる日本語の感想、古書目録、本の購入の備忘録だが、いろいろ勉強になった。今野さんの多くの著書のアイディアがどこから来ているかがよくわかった。なにしろ『日本国語大辞典』を二度?も読んだという今野さんだから、日本語に対する疑問も現代だけでなく古典にまで及ぶ。つねに、これは『日国』にあったか確認することを忘れない。現代では「まぬかれる」ではなく「まぬがれる」ではないかは、ぼく自身『中国語を歩くパート3』で“免排”をあつかったとき「まぬかれる」を使ったので、それ以来「まぬかれる」に違和感はない。「御用聞き」に注がいるとか、今は「貸し切り」というところを「借り切り」といっているのも面白い。これも「荷物あずけ」か「荷物あずかり」かで考えたことがあるが、立場の違いということではつながっている。ただ、「可視化」があるのに「見える化」は要るかとか、「立場」があるのに「立ち位置」は必要かはあまり賛成できない。ぼくには「見える化」の方がずっとわかりやすい。(「既視感」というのも今一わかりにくい。)だれかもっとわかりやすい和語を考えてほしいものだ。今野さんはよく本を買う。そして、それを自分の著書で使う。「英和・和英辞書」の本は近く出るのだろう。『「広辞苑」』についての本もすでに岩波と話がついているようだ。古書は一時的な預かりものと言っているが、最後は古書店に売るのだろうか。ぼくも昔はそう思っていたが、最近は、長く大学に世話になったし、分散させるのも惜しいので大学へあげようかという気になっている。こうなると、古書は世間に回らなくなる。今野さんは自分で買う本と大学で買ってもらう本をうまく買い分けている。これも大事なことだろう。よく出てくるのが『英和対訳袖珍辞書』(1862)で、高知大につとめ、なんどか機会があったのに存在に気がつかなかったという後悔は、よほどのことだったのだろう。複製があるのに本物を学生に見せたいというのもよくわかる。ぼくはヘボンの辞書は初版から第三版までもっているし、初版のきれいな複製本ももっているが、いつも本物を引く。書名は樹木希林や黒木華が出た『日日是好日』から取ったようだ。この「日日」も「ひび」ではなく「にちにち」と読むのが本来の読み方らしい。ぼくはこの映画をポルトガルへ行くルフトハンザの中で見た。ちょっとたるい映画だった。P43の「待賈」を「たいか」と読んでいるが、これは「たいこ」ではないだろうか。「賈」にはコとカの二つの音があることはあり、コは(店を構えた)商人とか「買う、売る」、カと読むときは「値段」の意味である。ぼくには「良賈リョウコは深く蔵して虚しきがごとし」ということばが浮かぶ。

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感想投稿日 : 2019年5月12日
本棚登録日 : 2019年5月12日

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