国と世紀を変えた愛 張学良と宋美齢、六六年目の告白 (単行本)

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  • KADOKAWA/角川書店 (2014年7月1日発売)
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張学長と言えば西安事件で蒋介石を捉え、国を挙げて抗日へ向かうことを約束させた人物として知られている。本書は俗に言えばその張学良の女性遍歴、高尚に言えば蒋介石の怒りを買い、50年あまりの間幽閉生活をよぎなくされた張学良をささえた多くの女性たちの愛の物語である。そこにはかれの生涯の大きな部分を第一夫人としてささえ、最後は離婚を宣告される于鳳至、生涯の大部分を秘書として彼をささえ最後は妻となった趙一荻、張を愛しながらも最後には物理学者になった谷瑞玉、お互いに愛しながらも結婚できず人妻になった後も張学良を愛し、張を守った蒋子雲、そして本当は結婚していたかも知れない宋美齢、張のことが好きだったイタリア公使夫人エッダ等何人もの女性が現れる。張学良という人はとても持てた人のようで、かれに言わせれば、11人のガールフレンドがいて、その中の3人は夫がいたそうだ。そして、その女性たちもお互いに微妙な嫉妬の感情を抱きつつも互いに張を支えた。張学良とは女性たちをして守らせたくなるような磁力をもった人のようだ。ところで今から20年以上も前、張学良が突如NHKのインタビューに答えその生涯を語ったことがある。(1990年)それは自由を得た張が日本の若者に日本の軍国主義がいかに中国人を苦しめたかを語りたかったからだという。かれは日本によってその根拠地である東北の地を追われ、死ぬまでその地を踏むことはなかった。そうした日本に対する恨みを越えて日本の若者に語ろうとしたのである。(これは後、本になった)その後だれからの取材も受けなかった張が本書の著者富永さんの取材を受け入れ、女性遍歴に限ってと語り出したのは、富永さんの友人カメラマンが張に送ったふるさとの写真集のおかげである。しかし、張は1時間と限ったインタビューに答える中で、かなり政治的な話もしたようで、結局はその倍の時間もしゃべり続けた。本書は全体として張の女性遍歴を語りながらも、多くの資料の裏付けをとりながら、張の生涯、中国の近代史を生き生きと語る読み物になっている。それは本書が張への取材のあと22年という歳月を経て書きあげられたことからもわかる。だから、どこからどこがそのときの取材の内容でどこがその後の調査の結果かは渾然一体となってわからなくなっている。これは仕方のないことだろう。富永さんが張にあったとき張はすでに92歳になっていたが、富永さんに握手をもとめた張には恥じらいを感じさせるものがあったという。92にしてこうなのである。

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感想投稿日 : 2014年10月10日
本棚登録日 : 2014年10月10日

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