検証防空法 空襲下で禁じられた避難

  • 法律文化社 (2014年2月7日発売)
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NHK朝ドラで、主人公の悠太郎が、防空訓練をする際、ふつうに燃えている家では本当の防空練習にならないと言って、ガソリンをかけ処罰される場面がある。実はこれは当時の防空訓練に対する批判でもあった。戦前日本には防空法なる法律があって、一般市民に空襲時での防火訓練を課していたが、これが2度の改訂を経て大きく改悪された。その最大のものは、空襲時に避難せず、その場にいて消火訓練にあたれというもので、避難すれば罰せられた。その結果、多くの死傷者を出したのである。国は一方で、焼夷弾の威力はたいしたものではなく、はたきで消せるとか、手袋でつかんで放り出せるとかといった非科学的な広報をし、人々をひたすら消化に向かわせた。その結果、避難していれば助かった人々を多く死においやった。また、アメリカが世界の非難を避けるため事前に空襲を予告したにもかかわらず、その事実をふせ犠牲を増やした。そのねらいは、国民に厭戦気分を生じさせることを恐れ、敵の空襲にひるむことなく、一団となって当たり、国を守る気概をもたせようとしたものである。日本の精神主義の一つのお手本である。本書は、空襲にあって死傷するのと戦場で死傷するのはどう違うのかという叫びから、21世紀になって全国で起こされた空襲訴訟から明らかになった防空法の実体を、具体的な資料をもとにわかりやすく解説したものである。

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感想投稿日 : 2014年3月14日
本棚登録日 : 2014年3月14日

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