[スカウトマンズ・ブルース]
女にモテるスカウトマンのタイチ。そのスカウトマンに振り向いてもらうために、やばい風俗に手を出してしまう女。
マコトはGボーイズに手を借りたち、サルの名前を借りたりして事件を解決する。サルも偉くなった。
タイチの言葉を見るに、石田衣良は女性にモテるんだろうなと思う。まぁ、今までの書きぶりからしてもそうだろう。
[伝説の星]
はるか昔に売れた、一発屋の歌手である神宮寺が、ロック博物館を作るというので手伝う。神宮寺は巧妙に全てを騙して外国へ行ってしまう。
コメディでも通用しそうなキャラクター。明るくて爽やかだった。
[死に至る玩具]
中国の玩具工場で、姉が過労死したので日本にきて、どうにかしようという考えは、かなり行き当たりばったりだ。
マコトは買い物で発生するバタフライ効果で、人が死ぬかもしれないと言っていたが、今回の告発文で日本人が死ぬかもしれないじゃないかと思った。物事に繋がりがあるのなら、自分の目の前の人だけではなく、敵側にも生活はある。自己満足に過ぎない。
根本的に解決するのであれば、工場側や党を変えないと何も意味がない。日本で働いているサラリーマンに詰め寄ってもしょうがない。結局、人形開発は中止になるだろうけど、中国の工場では違う仕事が入って、相変わらず劣悪な環境で人は死ぬだろう。
小桃は正義を求めたいと言っていたので、実際のところは頭で理解していたとしても心が許せないのだろうから、こんな現実的な机上の空論は意味をなさない。
ただ、読んでいて、その辺りの精神状況を語ってなかったので少し引っかかった。
[反自殺クラブ]
自殺を促すスパイダーを追う反自殺クラブ。
辛い過去があって、同じ目にあっている人を救う集団は美化して描かれやすい。だが今作では、コーサクも言っていた通り、スパイダーも反自殺クラブも、自殺を通してでしか世の中と関われない。そのような状況は正常ではない。
自殺を身近で見た者は、一生闇を抱えてしまうのかもしれない。それは医師である白木も同じだった。患者の死を消化できなかった。自殺を考えすぎて、辛くて考えるしかなくて、どれが正しいのか分からなくなったのだ。
安楽死を認める国もあるし、その制度で死んだ人はとてつもない闇を抱えて、生きているのがギリギリだった。
制度の上で死を選ぶのと、日本での自殺では、残された者の悲しみは違うと思う。天寿を全うして亡くなった人に対しては理解が及ぶとしても、自殺はそうではないだろう。簡単に納得できることではない。
結局はマコトが思った通りに、生きている人間の方が魅力的だ。死に憧れるなんてやめた方がいい。
- 感想投稿日 : 2018年11月23日
- 読了日 : 2018年11月23日
- 本棚登録日 : 2018年11月23日
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