世界史の誕生─モンゴルの発展と伝統 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房 (1999年8月24日発売)
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感想 : 37
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さほど読みやすくもない前書きを読み、やっと理解したときにはわくわくした。卓抜な論旨とはこのことかと。でもそこがこの本のピークだったな。学びはたくさんあったけど、そのほぼすべては前書き〜序盤で語り尽くされてて、全体としては竜頭蛇尾といううらみがある。

ただ。それでも、たしかにこの本には一読の価値はあったと思う。歴史という概念を作り出すことが、人類にとっていかに至難だったか。その結果として、いかに多くの文明が歴史というものを持たずに終わったか。そのわずかな例外が地中海文明と中国文明の2つでしかなくて、しかし双方の歴史文化が相容れないまでに著しく異なっているので、今となっては世界史理解の障壁になっていること。

だから世界史を理解(叙述)するにはモンゴル史を見よ、という結論に著者は持っていこうとするわけだけど、実のところその必然性については僕は今ひとつよくわからなかった。それぞれにクセのある歴史認識のもとにつづられてきた地中海史があり、中国史があって、その中間地帯にはモンゴル史もあって、その統合的な把握はなかなか難しいよ、ってことだけわかっときゃ充分なんじゃない?べつにモンゴル史に統合しなくってもよくない?

そのへんの議論の粗雑さ、強引さが、この本の中で「中国人は民族的に資本主義になじまないから先進国に追いつけない」なんて暴論じみた予言を生み、そして華々しくその予言が外れるという失態にもつながったのではないかと僕は思う。(笑)物理の統一理論みたいな見事な世界史認識を持つことはたしかにちょっとした夢だけど、それはモンゴル史への統合ってことではないんじゃないのかな。知らんけど。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 活字本
感想投稿日 : 2018年5月22日
読了日 : 2018年5月21日
本棚登録日 : 2017年9月13日

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