砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2009年2月22日発売)
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3

10年前に父を亡くし、母・兄と3人暮らしの山田なぎさ。
引きこもっている兄に代わり、早く大人になって自力で生活する力(実弾)を手に入れたい。生活に必要のないことは興味がない。
そんなドライななぎさの前に、全く正反対の人格をもつ「海野藻屑」が転校生として現れる。

彼女は自分を人魚の姫だ、といきなりクラス全員の前で宣言する。
変な奴、嘘つきで、イライラする。
なのにどうしても放って置けない。
砂糖菓子の弾丸を撃ち続ける藻屑。
周囲から浮きまくっている彼女と、なぎさはどんどん親しい関係になっていく。

そして彼女の嘘の理由を知り、その辛すぎる人生を知る。

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この本はミステリーではない。

冒頭に【海野藻屑の死】が提示され、そこに至るまでをただなぞる物語。

だからやっぱり藻屑は死んでいなかった、とか
殺したのはあの人ではなかった、みたいな
読者をあっと驚かせるような仕掛けは何もない。

それなのに、読み手の心をぎゅっと掴む力強さがある作品。

なぎさの中学生らしい素直な心
藻屑のチャーミングさとミステリアスを兼ねたような、それでいて悲劇を匂わせる様子
そんな彼女たちのお喋りに引き込まれる。
これってライトノベルってやつ?と軽いノリで楽しめる。


かと思えば
急に吐き気を催すような血みどろの場面が、目の前いっぱいに広がる!!

友情・青春と暴力はいつも隣り合わせにある。
爽やかさの影にいつも付き纏う、ドロリとした闇。

そんな印象がページをめくる手を急がせる。

【生き残った子だけが大人になる】
そんな言葉が存在すること自体、恐ろしさを覚える。


そして彼女の死をきっかけに、なにもかも上手く回り出すのが複雑。
(友彦の滝ゲロのシーン、要る?面白かったけども)

彼女はどうして死ななければならなかったのか
どうして助けを求めなかったのか
そしてうさぎを殺したのは誰だったのか…

色々な疑問を呑み込んで、物語は終わっていく。


『こんな人生、ほんとじゃないんだ。
きっと全部、誰かの嘘なんだ。だから平気』

こうやって自分に言い聞かせている子供が本当にいるんだろうか。
きっといるんだ。知らない私が幸せっていう事実。

絶対に絶対にあってはならないこと。

救いが欲しかった。
何か小説らしいトリックが欲しかった。
せめて物語の中だけでも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年6月28日
読了日 : 2021年6月19日
本棚登録日 : 2021年5月5日

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