数年前に高評価を見て積読しており、最近朝井リョウが『イン・ザ・メガチャーチ』で本屋大賞を受賞したので思い出して積読崩しがてら読み始めた本。思いの外長くて読み切るのに時間がかかってしまった。
内容は異常性癖と現実で罪に問われ非難される性癖とのクロスしたような話で、核心は「水に欲情する」人物たちの、「多様性」にすら括られない寂しさ、一般社会からの軋轢の話。「本当にヤバい」と言われる性欲の線引きとは、所詮多数派である人が決めているに過ぎないというのがテーマのようである。
タイトルの「正欲」にあるように、その正しさとは他人がいかに「気持ち悪がるか」という点に尽きている。が、その「気持ち悪い」自体が個々人によって異なるものであるということを、この物語を通じて改めて考え直すきっかけになるように思う。また、最後に八重子が大也に伝える「多数派の人だって何をしてもいいというわけではなく、各々自分の欲と向き合っている」という言葉は大也を感じさせるに至る何よりも強いメッセージだったように思う。その点で言えば藤原悟は佐々木佳道や諸橋大也よりも極端な水への欲情を抱えた人間、あるいはこのテーマで出てくる人物の良くないパターンだったのではなかろうか。
佳道や大也は、その性的嗜好を隠したことでそのまま逮捕されてしまいそうだが、佳道は夏月と手を組めたことで多少なりとも救いがあるように思う。大也も完全な理解者とまではいかないものの、「多数派を憎む」という思考回路を八重子によって解いてもらえたようにも思われる。
一方で、常に正しい「多数派」側にいたはずの宏樹は、正しさを求めるあまりに最終的に家族を崩壊させてしまう。
多数派にいることが絶対に幸せになれる条件ではないということがこの作品に脈打つ底流であり、実に文学としての役割を成しているなと感じたのだが、肝心の事件についてはざっくりとしてしか触れられておらず、またその後の佳道や大也がどうなったのかも分からない辺り、エンタメとしての解決感は薄かったように思う。

2026年6月8日

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読書状況 読み終わった [2026年6月8日]

先月本屋に行った際にたまたま村上龍の「ユーチューバー」という作品を見かけて、久々に村上龍が読みたくなり、積読してあったこれを読んだ。
内容はフランクという謎の外国人が歌舞伎町風俗案内店のアテンドであるケンジと歌舞伎町のピンクな街を観光するほのぼのセックス異人交流小説…かと思いきやこのフランクという外国人は経歴を詐称し息を吐くように嘘をつき、果ては殺人を天命とするとんでもない奴だったというのがわかる極めて不気味で村上龍らしい一作である。この男の性欲と殺人や精神疾患をごった煮にした感じ、久々に村上龍を読んだという感じがして満足感が高い。(笑)
とにかくフランクが不気味で怖い、そして気持ち悪い。中盤くらいまでは殺人事件を見てからケンジがフランクに抱いている不気味さをずっと味わうことになり、お見合いパブでの殺人描写以降は逆によくこの事件を目の当たりにしながらフランクをそのまま客として案内できたな…と感心する。
読んでいる間はケンジがいつフランクに殺されるのか、もしくはそれをどう逃れていくのかが気になって吸引力になっていたのだが、実際最後まで読んでみるとあっけなくフランクから逃れられるので拍子抜けした。まあこういう終わり方も文学作品ぽいといえばそう。
結局この作品で描かれるフランクとは、日本人が鈍感になっている「相手に殺されるかもしれない」という感覚に対する脅威としての象徴なのだろうと思う。フランクというキャラクターは一個人だが、おそらく大きな括りで見れば「外国人」であり、自称アメリカ人以外に国籍が完全に特定されないのもあえて含みを持たせる効果があるのではないだろうか。この作品で本当に言いたかったのは「突然、我々の想定外から外部存在が脅かしてきたらどうする?」という問いかけなのであろう。ケンジ自身はその餌食にはならず命こそ取られなかったものの、彼は彼でフランクから相当な心理的圧力を与えられ続けており、それがまさに「いつでも殺せるがただ気まぐれに殺されてないだけであり、圧力を与えようと思えばいつでも圧殺できる相手」だということを知らしめられているかのようだ。
表面的に見ればセクシャルでバイオレンスな俗っぽい話だが、その実語られているのが日本人としての外国との渡り合い方なあたり、さすが読売文学賞受賞作といったところだろうか。ただ、めちゃくちゃ気持ち悪い作品ではあるので相変わらずめちゃくちゃ読者を選んでいる。まあ村上龍なので…
しかしやはりこの時代の筆者の作品には勢いが感じられてよい。ちゃんと定食屋で定食が食えて良かったみたいな感想を抱ける一冊だった。

2026年4月10日

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読書状況 読み終わった [2026年4月10日]

湊かなえ作品にはとんでもなく嫌な奴がたくさん現れるが、境遇や環境そのものが起因している不幸な人物たちというのはそこまで多くない印象があり(「嫌なことを言うやつ」は多いがガチな犯罪に手を染めるタイプの人物もそう多くない)、そういった意味では本作は登場人物たちの恵まれなさが凄くてページを捲る度に最悪な気分を毎回上塗りさせられた。さらに言うならば、犯罪上等の完全な悪人も出てくることが稀なので、早坂、須山、猪川のおじさんあたりが露骨に悪の側なので「珍しい人物像だ…」と思いながら読んだ。また、章子も亜里沙もこのあたりの悪い大人のせいで絵に描いたように家庭環境が難しく、読んでて苦しさが増していく。
特に章子に関しては1ページ前までハッピーな生活を送っていたかと思えば次のページで途端に鬱々とし始めるなどがあり、この落差でエピソード1を読み終える頃にはヘトヘトになっていた。頼むから幸せになっててくれという祈るような気持ちで読み続けていたが、あの終わり方が幸せだったのかどうかはわからない。
しかし自分がこれまで触れ合う機会がないだけでこういうご家庭は本当にあるんだろうな…と思わせられる人物像だった。ディズニーランドを思わせるドリームランドという場所の象徴的な扱いを見ると、田舎育ちにとってどれだけあの場所が憧れなのかというのが伝わってくる。関東圏内住みの自分には「そんな場所だったんだなあ」という印象なのだが、たぶん作者も田舎育ちでディズニーランドに思い入れがあるんだろうな。(何作か読んでみるとたまにこういう系統の話も出てくるので)

「未来」という明るいタイトルとは裏腹に、メインで出てくる登場人物全員暗い過去を持っているので、タイトル詐欺感が若干ある。でも序盤の章子が持っている「未来から来た手紙」というSFチックなワクワク感はこれまでの作品とは違った新しさがあったし、この謎解きもミステリーらしさがあって面白かった。
新しさといえばこれまでの湊かなえ作品ではあまりお色気要素らしいお色気要素は存在しなかったのでここで性的な話が全体に散りばめられていたのも珍しいなと思った。思わず編集者にそう言われたのだろうかと想像してしまう。妊娠出産絡みの話はあったがまさか湊かなえの小説でAVや売春の話が出てくるとは思わなんだ。

章子と亜里沙の計画の結末を描かなかったのは「未来」というタイトルに倣った意図的なものなのだろうか。悪役側の大人たちが服毒したところまでは描かれたが、その先の2人を想像すると、どうあっても明るくは見えないのだが、物語的にはそうあるべき、と判断したのかも知れない。(実際、読者としてもこのあたりをあいまいに終わらせておいたほうが明るい余韻で終われるかも、と読後に思った)
ただ、壮大な話ではあるものの、結末はそれほどスッキリしたものではないあたりが何とも言えない作品であった。智恵理さんの話も逮捕されて終わりという感じだったし、文乃のお兄さんと、お父さんの話は面白かったが、早川に服毒させたあとのその後の文乃がどうなったのかも分からない。最後の場面で章子を守って送り出すところがメインなのだと言われたらそうだが、どうにも文乃はあの後自ら亡き兄の後を追ったのだろうかと思うような終わり方だった。凄惨なエピソードが多かった割には、全体的に「その後」が足りない印象ではあった。だが前述の通り、タイトルは「未来」なのでこの先は想像してくれ、ということなのだろう。
そしてこれだけのボリュームの作品はどう映像化されるのだろうか。5月の映画化が楽しみである。

2026年3月6日

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読書状況 読み終わった [2026年3月6日]
読書状況 読み終わった [2026年1月22日]

タイトルの通りそのまま「人間標本」を作る連続殺人の話であるが、その構成は湊かなえの手腕が大いに発揮された一作。蝶に魅入られた男・榊史郎と、かつて交流を深めた画家・留美ちゃんとその家族を巻き込んだ壮大な「蝶の眼(見え方)と芸術の話」。
連続猟奇殺人による「人間標本」というテーマ自体は初見だとその手法の残酷さばかりが目に付くタイプのミステリーとしては平凡な作品…なのかと思ったのだが、至の自由研究の章あたりから全体像が怪しくなり始め、最後はすさまじい速度でどんでん返しが始まる。
そして読み終えて振り返ると、正直これは初期作品で未だ湊かなえの代表作と名高い「告白」に匹敵するほどの名作なのではないかと思った。留美ちゃんの芸術への特異な目、後継者になりたかった杏奈など、当初美術館の章を読んだだけでは想定してなかった事実がゴロゴロ出てきて、中盤以降はほぼ一気読み状態だった。
思えば湊かなえの話で連続殺人が出てきたのは長く読んできたがこれが初かもしれない。そしてその印象に違わぬほど、この作者の成長は全く止まることがない、今回も文句無しに面白い。今回は特に主人公が蝶の専門家という設定なので、巻末にならぶ参考文献の多さがその成長ぶりを物語っている。やはり凄まじい作家だと感じる。途中の山の小屋の遺体がバレたあとのSNSクソリプコメントの手法は『白雪姫殺人事件』を連想したし、あの時よりもさらに高度な情報化社会を再現したクソリプの再現に舌を巻いた。
純粋な感想でいえば、人間標本の描写がグロくてかなり読んでる途中滅入ってたのだが、中盤〜最後は榊史郎の至に対する深い親子愛を感じた。このあたりが唯一安心できるポイントではあるのだが、これは…親になった人が読むとよりダメージを食らうタイプの作品かもしれない。
ある意味「告白」同様に人にお勧めできない作品であるが、重いのとグロいのに耐性があるなら面白いので読んでみてもいいかも…と言える作品。
12月にアマプラで映像化されるらしいので、そちらも楽しみなのだが、これを映像化とか正気か!?の方が先だつ。怖い。途中で「「人間標本」を映像化したいという酔狂な提案」が作中で出てくるあたりで笑ってしまった。

2025年11月22日

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読書状況 読み終わった [2025年11月22日]

以前美術品を見に行った時に立ち寄った本屋で見つけて面白そうだったので読んでみた本。
シュルレアリスムといえばダリ!というくらい印象深い画家はどのようにして誕生し、何をモチーフとして描いてきたのかが分かります。
絵画に現れるアリが死のイメージだったり、奥さんのガラは度々女性を描く時の顔にされていたり、ダリの絵画鑑賞に役立ちそうな解説も多く、楽しめました。
劇的な恋で奥さんのガラと結婚したものの、晩年は金にならない仕事は断られて、幽閉されるように絵を描き、稼いだ金は奥さんが不倫をするのに使ってたという話がなかなか酷くて癖がある。第一次世界大戦、スペイン内乱、第二次世界大戦の戦時下と戦後を生きてきた人であり、かつ生まれる前に死んだ兄の亡霊として生きるなど、様々な人生の要素が絵に盛り込まれてるのも面白かった。

2025年11月15日

読書状況 読み終わった [2025年11月15日]
読書状況 読み終わった [2025年11月11日]

壮絶な救急外科医の話。医療崩壊した現場で働いている人の過酷さがこれでもかというほど連ねられた渾身の一作。2日寝ない(最後は4日不眠労働になる)、残業300時間(≠労働時間)、過労死する同期、麻薬シールで眠気と辛さを飛ばす同僚…主人公・公河もそんな職場でまち全体から流れてくる患者たちを次々に受け入れ、何日も眠らずに手術し、血尿や高血圧を患いながら働いていく。
人間が一番狂うのは眠れないことだと聞いたことがあるが、この主人公公河はまさしく仕事のために眠れないことを強いられており、そのために発生する「普通に暮らしている人」への怒りや嫉妬、幻覚などはリアルさを通り越していっそ恐ろしい。だがここに書かれた過酷な話は決してフィクションに留まらず、現実と地続きなのだろうとも思う。配属される科によって全然状況が違うというのもまたリアルというか…私も看護婦の親戚である叔母から各科については似たような話を聞いていたので、やはり一口に「医療」といっても状況は様々だなと。
そしてこんなギリギリの精神状態、現場でありながら、そこに外科医として「人を切ること」への抵抗感や許しを求める様などを入れてくるのは文学的であり、同時にタイトルの「受け手のない祈り」を象徴しているにも思えた。公河が最後にたどり着く境地である「死人でも麻酔を打っていても、人を切ることは許されない」という外科医の背負う業と、そこから自らの死や眠りをもって解放を望む様、何より同僚たちの不義(健康な虫垂の切除、堕胎手術など)を糾弾しながら自分はそれをしていない、許されるべきだと考える思考などは、まさしく「祈り」に他ならない。途中で奥内が麻薬シールで暴れてるところを見ながら「もう死なせてやろうと思った」などと思ったのは、一見非情に見えながらも同僚ゆえの慈悲のような気さえしてくる。(このシーンの迫力が本当に凄まじいので、映像になったら軽くトラウマになりそうである)

私たち何でもない人間が、医者に掛かり、悪いところがあったら手術してもらえるということにありがたみを感じるのに十分すぎるほどの重さを持つ小説。今後、医者にかかる機会があったら存分に感謝せねばならないと思った。

2025年11月9日

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読書状況 読み終わった [2025年11月9日]
カテゴリ その他
読書状況 読み終わった [2025年9月17日]
カテゴリ その他

二次性徴期をやり直したい女性・里帆と、女性としての性を飲み込みながらも舐められたくはない女・椿、そして幼い頃から人間の世界を星の一部としか認識できない女・知佳子。3人の女性の持つ独特な性的観念を考える一冊。3人は3人とも己の性的観念に戸惑いながら、どうにか自分の落とし所を見つけようとする。
この話は数年前に友人と本屋を巡った際に偶然手にとって読んだあらすじに惹かれて読み始めたものだったが、あらすじに書いてあった里帆の奇抜な性的観念(男になりたい訳では無いが、女ではありたくない。無性でありたいと思うものの、性欲自体はある)は作中でも面白く書かれてはいるが結局結論は出ないまま終わる。知佳子のふわふわとした、それでいながらおよそ常人に理解しがたい独特な感性は、里帆の「女性ではありたくないが根本的に動物的感覚から抜けきれない」の対比として描かれており、結末のこの書かれ方を見るにおそらく作者が書きたかったのは里帆のほうではなく知佳子の方なのだろうと思った。極めつけは知佳子は知佳子で、自身の性が星と繋がってることを強く意識して、人間(作中では具体的には伊勢崎)とセックスしても得られなかった快感を得ている点で、物体感覚同士で星に惹かれる運命のようなものを書きたかったのか、と思った。
村田沙耶香はこれで2冊目だ。昨今話題になるセクシャルマイノリティ的感覚を、あらゆる方面で発揮していて面白いのだが、この作風をどこまで続けていられるかは、気になる所ではある。

2025年7月24日

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読書状況 読み終わった [2025年7月24日]

中学の時に読んだ本を気になってもう一度読んでみた。あの時には分からなかった「妊婦の様子と、経過の恐ろしさ」が、妊婦の妹を通して不気味に描かれていて、三十代になった今読むとただただ妊婦の理不尽な要求の印象と、最後に妹が夢想する「破壊された赤ん坊」の印象が強烈に残る。
解説にある「人間はそんなヤワじゃないからおそらく姉の赤ん坊は普通に生まれてくるだろう」の一言と、「小川さんは一児の母」の情報に読後の不気味さが和らぐので、解説は読んでおいたほうがいい部類の本だと思いました。

2025年7月7日

読書状況 読み終わった [2025年7月7日]
読書状況 読み終わった [2025年6月21日]

金原ひとみによるクズ女見本市小説短編集。主人公はほぼ全員女で、それぞれ、アルコール、美容整形、不倫、希死念慮、セックスに耽溺して抜け出せなくなっている。とんでもない女ばかり出てくるが、そこに書かれる心情がやけにリアルで掴まれて離してもらえなくなってしまう。特に1作めは4行おきくらいにストロングゼロをキメてるような雰囲気だし、2作めは付き合ってる男に全く非がないのに自身の老いを許せなくなってしまうために別れを決断するという、常人からすれば「そうはならんやろ」というツッコミが飛んでくること間違いなしなキマりきった作品で面白かった。面白いので何でも良いのである。この本の朝井リョウの推薦文にも「読むとキマる」とあったが、まさしく「読むと引き込まれる異形の金原ワールド」がそこにあった。おもしろすぎる。何だかんだ金原ひとみももう4.5冊読んでる気がする。
コロナ禍を意識して書かれたとあった最後の2作(アンソーシャルディスタンス、テクノブレイク)はひどく閉鎖的な社会の雰囲気に包まれているが、主人公がコロナのロックダウンも恐れずに旅行に出かける人物と、逆に極度にコロナを恐れて感染恐怖症のごとく彼氏を抑圧しにかかる人物とがいてユニークである。「あの時期はそういえばこんな感じだった」を思い出した。この2人は彼氏との結末もほぼ正反対なので、最後2作の主人公同士を戦わせてみたさがある。
どこか影がありながら完全に「ハマる」人物像たち、ここでしか読めない耽溺を存分に味わえた一作だった。

2025年6月10日

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読書状況 読み終わった [2025年6月10日]

国内で認められていない代理母出産の話。貧困に喘ぐ主人公の大石リキは友人の誘いからエッグドナーのバイトに申し込んでみるうちに話が進んで代理母にまでなってしまう。1000万と引きかけに自身の体を、40代後半の草桶基、38の草桶悠子夫妻に提供し、実際に出産するまでの話だが、夫婦側の子供を授かることの出来ない心境、初産がこれでよかったのかと悩み揺れるリキの心理描写が生々しく、読み始めると文体の軽さも相まって読む手が止まらない一作。420Pほどあったが珍しく物凄く読み終わるのが早かった。
この作品に書かれていることは概ね事実なのかなと思うと同時に、不妊治療をしても駄目だった草桶悠子の無念さや、リキを労る様子などが、男とは異なる女性という生き物のあり方を示しているようだった。
如何に金を積まれたビジネスと言えども好意のない相手の子供を出産することは何度も心が動くものらしく、誓約を破って元不倫相手の日高や、セラピストのダイキとセックスしてしまうなどの、リキの行動などもかなりリアル。結果的に「誰の子が生まれるのか」「もし自分の子供でなかったら、代理母を依頼した父親側は育てる決意が出来るのか」など、依頼側の夫、妻、依頼された側の人間としての思いやりや思惑が複雑でありながら巧みに表現されてると感心した。
個人的にはこの話を出産をする前に読むことができたのはかなりタイムリーだった。母性とは何か、出産がいかに心境の揺れやすいものであるか、というのを知って、ある種人生の先取りをしたような気持ちになった。最後のリキの選択(双子の娘を連れ去る)は、彼女に生まれた子供への愛ゆえなのだろうか。
こんな激重問題に向き合いながらも、春画画家でアセクシャルのりりこの生き方は、女性の理想体でありながらもネットで他人の人生に無責任に助言する人のようで、それこそ「おかしみ」があった。
元はNHKでドラマ化した作品ではあるのだが、そちらは一瞬しかみたことがないので、どうアレンジされているか気になる所。

2025年5月24日

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読書状況 読み終わった [2025年5月24日]

佐藤究4冊目。そろそろ何読んでも面白い人認定できそう。今回は三島由紀夫の『暁の寺』から引用をしつつ、「三島由紀夫をモチーフに」という依頼にこたえて制作した本であるそうな。相変わらずミリオタチックな話ではあるが、巻末にある膨大な参考文献の量からいかに作者がこの作品を制作するにあたって苦悩し、また真摯に向き合ったのかが良く分かる。
護国、戦闘機への憧れ、仏教の要素に、現代の軍事技術の要素が絡み合って、難解ながらも味わい深く、楽しんで読める一作。
護国よりも戦闘機を選びながらも、最後は「人を殺さない」選択が出来たのは一見無関係のように見える祖父の死や、エアメールによる鎮護国家の説経、最後の謎の日本人老僧との問答によるものなんだろうなと思うなどした。

2025年5月13日

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読書状況 読み終わった [2025年5月13日]
カテゴリ その他
読書状況 読み終わった [2025年4月25日]

かつて中学生の頃に読んだ本だったが30代になり改めて家族感を考え直そうとしたとき、ふと思い出して手に取って見直した本。テレパス能力を持つお手伝いさん、主人公・七瀬が様々な家を渡り歩き、生活を営みながら内心何を考えてるのかを包み隠さず表現したような短編小説集である。
登場人物たちは漏れなく不倫をしていて、初手一作目の「無風地帯」からうわべだけの家族を保ちながら、裏ではこそこそしている様が良く表現されている。
また、七瀬がテレパス能力を持っていることから登場人物たちのそれぞれの結末(穢れた妄想・死亡・発狂・死にながら焼かれる)という思考をこれでもかというほど見せつけられるので、テレパス能力をフルに使い、読んでいて飽きない所が魅力だ。
この作品は1970年代に書かれたというのがまた古い作品ながら今に通じる部分が多分に盛り込まれていて、人間や家族を考えるうえでの普遍性を感じられて文学の面白さを味わうことができた。
続編はSF能力バトルっぽいものになっているらしいが、解説にあった「七瀬ふたたび」「七瀬森を走る」も読んでみたいものである。

2025年4月10日

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読書状況 読み終わった [2025年4月10日]
カテゴリ その他

有り余る才能のせいで様々な習い事でガチ勢を負かしてしまう天才少年の綾瀬川。そんな彼が唯一、周りに自分の才能を感謝されるスポーツ野球に出会い、初めて楽しくスポーツをする…という流れのはずなのだが、ここでもやはり有り余る才能を大人に目をつけられ、同じチームの友達が野球を辞める事態に陥ってしまう。
周りと楽しくやるのが一番のはずの小学生でこれは切ない。ここからパワーインフレして綾瀬川が救われるのかと思いきや、U12の円たちはガチ勢ゆえにもっと苛烈で綾瀬川のスランプを咎めるようになってしまう。本気であるからこそやる気のない奴の態度は癇に障るわけで。。なかなか綾瀬川視点でみると四面楚歌状態ですね。続きが気になる。

2025年2月8日

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読書状況 読み終わった [2025年2月8日]

遂に長年の悲願であったグラシュロスを達成すべく白い山(バカトノ)に登るアクゥとイーピン。イーピンを置いて1人でグラシュを仕留めようとするも、自ら起こした雪崩でイーピンたちと再会。悲願のグラシュを無事倒し、宴の合間にヒロインと交わる。(ここでヒロインが突然声を取り戻して「アクゥ!」って呻いてるんだけどそこで「イクゥ!」とか言い始めたせいでグラシュを射止めて高ぶってた余韻が台無しになったwこの漫画マジでずっとギャグだったのか?????(笑))
最後2018年に飛んだあと、登場人物の生まれ変わりみたいな人たちが次々とあらわれ、またアクゥの時代に戻って、今度は第一話のダダァと妻と同じく赤い月の晩にアクゥの子供が産声を上げる。その子供を遠方からグラシュの子供と思しきマンモスが見て、咆哮するのだった、という終わり方なんだけどこれがなかなか趣深い。
マンモスは現実の世界だと遠に滅びた存在ではあるけど、アクゥたちクロマニョン人とマンモスの戦いに終わりがないかのような締め方である。絵的にはカッコいいので話のまとまりとしてはいいのかな?
全体的にシリアスの中にギャグをぶち込んで、良作画の漫画に仕上げました、という感じでした。感情の迷子率が高いと思う。

2025年2月2日

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読書状況 読み終わった [2025年2月2日]

ミ・セラレテの大怪鳥、ジュディ・オングを倒した一行が向かったのはカンパクス・エンゲン!首長・サダム・アッサシ!にボコられていたシュラヴァを助けたアクゥは遂に因縁のグラシュの手がかりを掴み…?
ってことなんだけど何かもう止まらないルビ芸のせいでシリアスシーンなのにずっと笑っておったw
何だよサダム・アッサシとカンパクス・エンゲンて、さだまさしと関白宣言じゃねぇか。こんな調子でこの巻はジュディ・オングは怪鳥になるわ、全巻で死んだ歌舞伎役者っぽいのはエビーゾ(明らかに市川海老蔵やな)と分かるわ、マセマセは結果にコミットのライザップだわ、アルフィーは出てくるわでやりたい放題である。
加えて言うならこの巻もマジのNTRがあった()3巻で女にこりたかと思ってたのに相変わらずだった。ヤりたい放題でもある。
さて次で最終巻、アクゥの復讐劇の結末やいかに。

2025年2月2日

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読書状況 読み終わった [2025年2月2日]

アクゥの暴力性が爆発する巻。てか「カメハメ」って言いませんでした?あと「エンダァァァイヤァ」は思わぬ叫びすぎてドシリアスシーンなのに笑う。シリアスやりたいのかギャグやりたいのか迷走してるんか?w

2025年1月8日

読書状況 読み終わった [2025年1月8日]

謎の集団集落(アーツ)の名前が「ギクシャク」だったり相変わらずルビセンスが凄まじい。てか女集落にイーピンが種男(シルダン)としていたりと段々えっちな方向に走り始めた。どことなく神いうの残滓があります。

2025年1月8日

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読書状況 読み終わった [2025年1月8日]

正月に買った金城作品2作目。クロマニョン人のダダァの息子、アクゥは村の言い伝えである赤い月の晩に生まれた子供。村を滅ぼす忌み子であるという言い伝え、運命に抗いながら生きていく子の物語。
また異色のストーリーながら、人がいっぱい死にがちな環境という意味では神いうに近い話。ただし題材が狩りなので、割と話自体は現実に足を下ろしてる印象。なので作画も今回はかなりリアルタッチ。鬼気迫る肉感は大変見応えがあります。
創作なので謎のルビが振られてるのがギャグで面白いw「集落(アーツ)」とかは何の基準?て感じだけど「今(デショ)」とか「真(ノノムラ)」とか「原っぱ(タツノリ)」とかは何かもう完全にギャグwドシリアスな展開なのにこのルビだけギャグでうっかり笑ってしまう。
全巻揃えてるのでまたサクサクと読んでいきます。

2025年1月5日

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読書状況 読み終わった [2025年1月5日]

あっと言う間に最終巻。サクっと読める、熱くて謎解きもある良い漫画でしたわ。実写化したらいい図になりそうな印象。オチも綺麗だと思います。流石です。

2025年1月4日

読書状況 読み終わった [2025年1月4日]
カテゴリ コミック
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