地獄変

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レビュー : 31
著者 :
岩尾葵さん その他   読み終わった 

久々に芥川龍之介を読んだ。最後に読んだのはいつだろうと思ったら、多分第二回読書会『雛』以来なのではないだろうか?
一言で言うならば「大殿様に”地獄変”の絵を描けと依頼された絵師・良秀が、その絵に熱を入れるあまり、実際の人物に地獄変に出てくる人物の様子を弟子などに演じさせ、最後には愛していた娘さえも絵の犠牲としてしまう」という趣旨の話。良秀は地獄変を描くために確かにみみずくに弟子を襲わせたり、蛇を部屋に潜ませたりしているのだが、最後の娘の犠牲だけは、良秀本人は「檳榔毛(びらうげ)の車が燃やしたい」と言っただけで、大殿様が中に良秀の娘を入れることを思いついた。良秀は、遂に地獄変の絵を完成させるが、その翌日に自ら縊れて命を絶ってしまう。

この話は語り手である「私」から良秀や大殿様や良秀の娘の様子を描いている。また、「~と言われている」という『藪の中』にも用いられているあいまいな書き方・事実かどうかをあえてぼかしているような書き方や、まるで芸術至上主義に徹しているように良秀を描いておきながら、最後の最後に自殺させてしまう点が、何とも非常に芥川らしい。例えばだが、最後の部分で良秀が自殺しなかったとしたら、この話の私の印象は全く別物になっていた。だが、良秀が死んだことによって、この話は物語を物語として完結させようとしている感じが見られる。どことなく”いかに芸術至上主義に身をゆだねたように見える人間でも、娘を思う情はあるのだ”という風に読めてしまうのである。
明治文学ばかり読んでると、確かにこれを斬新と思うような気がするし、実際私はそう思った。と同時に全体的に商品らしい商品・整えられた文学、という感じもあって、もう少し泥臭くてもいいんじゃないかと思わなくもない。

加えて言えばこの話が出来たのは大正七年の頃。前時代となりつつあった自然主義から芥川が何か思うところがあったのかなと思う話であった。

レビュー投稿日
2019年7月27日
読了日
2019年7月27日
本棚登録日
2019年7月27日
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